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うぐいす祥子「フロイトシュテインの双子」レビュー「畏れながらサウザー様,愛は必要です」

一番最後に読んだホラー漫画が御茶漬海苔氏の「惨劇館」という20世紀で成長の止まった僕ではあるが21世紀のホラー漫画を拝見する心算で読んでみた。

先ず本書の本質は短篇漫画集なのであるが本書の題名ともなってる表題作が
「フロイトシュテインの双子」である事でおやっと思い,
双子が持っている本が「エイボンの書」である事で
うぐいす先生がルチオ・フルチ監督の映画「地獄の門」「ビヨンド」「墓地裏の家」を御存知と知りホラー映画を愛好するひとりとして以降は居住まいを正して読んだ。

後書き漫画によると「うぐいすは載せないで下さい」「うぐいすは要らないと思います」「ホラー漫画は読みたくないです」等々散々な評価だが僕は本書を支持する。

「フロイトシュテインの双子」第1話で双子に散々な目に遭わされるだけであった主人公のバイト学生の青年に第2話では「耐性」が構築され,双子が創造した身長30cm程の自分のホムンクルス(人造生命体)を見て一瞬驚くものの直ぐに平常心を取り戻りして平然とホムンクルスへの酸素供給弁を閉じてホムンクルスを窒息させて双子を動転させ,第3話でターミネーター的アンドロイドに命を狙われた主人公の危機を双子が救い,自分で無事であった事よりも「君達が無事で本当に良かった」と双子を抱き締め「助けてくれて有難う」と双子の耳元で囁き,双子が赤面する場面で魂鷲掴みとなった。

回を追う毎に主人公と双子の距離が縮まりより親密となっているのだ。
つまり本作は基本に愛のある漫画だと言いたいのだ。
基本に愛があると言う事は命が躍動してると言う事であり,
命が躍動してると言う事は,生命への称賛が綴られていると言う事であり,
生命への称賛が綴られていると言う事は,本作が生命力に満ち満ちた作品である事に他ならない。

聖帝サウザー様は「愛など要らぬ」を仰っているが
僕には横溢する生命力を否定する気には到底なれないのである。

他作品の台詞のキレッキレの素晴らしさだ。
「お前は邪魔だ!宇宙的な意味で!」
既に10数回本書を読んでるがいつもこの箇所で笑ってしまう。

斯くも自然な笑いを誘う,尊い生命への賛歌が不要扱いされる風潮を憂わずにはいられないのでる。


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