ラーメンを食らう旅へ行く(3)
奥羽本線
さくらんぼ東根駅までやってきた。
5分遅れたものの、今の僕には、その程度で崩れる旅程を作る度胸は無い。ここで30分ぐらい余裕時分を取っていたのだ。本当に余裕は大事。
山形新幹線という選択肢もあったが、鈍行に乗りたかったことと、抜かされないので新庄まで先に着くこと、そして鈍行に乗りたかったことと、鈍行に乗りたかったことから、鈍行に乗る以外の選択肢はほぼ無かった。
その前に売店に立ち寄る。こういう時間も結構大切にしていて、地元でしか味わえない食べ物があると、すぐ食いついてしまう。
今日は、笹ゆべしをチョイス。甘さ控えめ、醤油の香り、しょっぱ甘くて、もちもちっとした食感がよい。
見た目よりも密度が詰まった食べ物で、一人で食べるなら2つ3つで充分な量。でもよく見たら、パッケージの底にもう4つ隠れていたので、ヒィってなった。(これ500円じゃ安すぎでは…)
4分遅れで到着したワンマンの鈍行に乗り込み、ボーッと車窓を眺める。乗車率は、席が埋まりきらない程度か。奥羽本線のこの区間は標準軌。京急と同じ線路幅だ。どこか乗り心地も近い感じがする。揺れは少ないけど。
面白いのは、同じ平野なのに、雪の積もり方が違うということ。暖冬だから余計目立つのだろうか、土がちゃんと見えているところもあれば、まるごと雪をかぶっているところもある。
ただ、北上し、新庄に近づくにつれ、雪の降り方も積もり方が増していく。
新庄駅のホームに降り立つと、アイスクリームの自販機があった。今の季節は全く売れないだろうが、夏は恐らく違う。ここも盆地なので、夏はきっと気温が上がる。一時期、日本の最高気温の記録は山形が持っていたはずだ。
新庄駅は、線路幅が異なる関係もあり、5番線以外は頭端式(行き止まり)のホームだ。終着駅感もあるし、各方面の交通の結節点感もあって、とてもよい。
陸羽西線
酒田行きの入線まで待合室で待つ。
疲れを隠せないスーツのおじさんが1人佇んでいた。そういえば、さくらんぼ東根駅でも、送迎車を待っているのか、外で凍えている2人組のビジネスマンがいた。
世間は平日なのだなと、こんなところで優越感に浸ってみたりする。この一か月、散々、休日出勤だの残業だのに追われていたとは思えない。
入線してきたのは気動車のキハ110。割とお気に入りの車両だ。車両鉄ではないので、細かな違いは分からないが、見た目も好きだし、1人がけ席があるのが一人旅感を強調して、とてもよい。
エンジンが轟音を立てる。乗車率はまばらで、先程の電車よりさらに少ない。いくらワンマン運行でも、これでは赤字じゃないだろうか。建物に掲げられた「庄内に新幹線を」というキャッチコピーが、目の端に映った。
降り積もった雪に、一人分の足跡。無人駅の階段から、銀色の毛布付けた田んぼのあぜ道に、ずーっと伸びている。
雪の重みで倒れた針葉樹。恐ろしいことに、スリップしてはみ出したタイヤの跡まで、国道に残っている。
雪がない地域だと考えられない要素が車窓に映る。
しばらく乗っていると、視界が一気に開けた。庄内平野に入ったらしい。積もった雪もみるみる薄くなって、ついにほとんど無くなってしまった。
天候で旅程が崩れる心配は無さそうだが、ほんの少し、寂しい気持ちが生まれた。
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