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ラーメンを食らう旅へ行く(5終)

おそろしい病気に罹患している

そうこうしているうちに、戻りのバスの時間が近づいてきた。
先程通過した、市役所の横のバス停まで戻り、改めて時間を確認すると、まだ20分弱あった。

これも僕の病気の一つなのだが、バス停で、少し時間があると、「次のバス停まで歩けるかな?」と考えてしまう。それが発症してしまったが最後、最終目的地まで歩いてしまうこともしばしばある。

次のバス停は中町という名前らしい。行ってみると、銀行があり、百貨店がある、いわゆる中心市街地感のあるエリアだった。

中心市街地の商業、特に百貨店の元気が全国的に失われつつある。
例に漏れず、酒田の清水屋も、1階にすら空きスペースがあり、ガランとした印象。中を一周してみたが、たぶん見かけた店員の数と同じ10人ぐらいしかお客様がいなかった。

4階に書店があるようなので、行ってみる。これも僕の病気のような趣味の一つなのだが、旅行先で書店に行き、郷土史の本をさがすのだ。たとえば、塩釜ではやませの本を、新潟では萬代橋の本を見つけてご満悦だった。

さっきの山居倉庫の本があったら少し欲しかったが、みつからず。
ほとんどの在庫は、面陳どころか平台すら1冊ずつで、売り上げの厳しさが感じられる。
ただ、入り口の横に郷土史コーナーが大々的に作られていたので、地域への愛を感じた。

18きっぷシーズンによくあるやつ

ギリギリになってしまった。急いで中町バス停に戻ると、すぐバスが来た。
酒田駅の横のバスターミナルまで乗る。なかなか趣のあるバスターミナルだ。あまり地元にはこういうものが無いので、結構面白い。

バスターミナルの待合室で待つことしばし、ふと、隣で待っている2人組の女性が目に入った。

あれ…この人たち、さっき同じ列車(奥羽本線と陸羽西線)に乗っていた気がする

さくらんぼ東根ではなく、途中から乗ってきて、向かいに座っていたはずだ。同じ飛行機に乗るのだろう。列車の本数が限られるので同じような旅程になってしまう、18きっぷシーズンに鈍行の旅をしているときによくあるやつだ。

当然、話しかけたり絡んだりはしないが、向こうから見たら、カメラをもった男がずっと近くをうろちょろしているんだから、、、通報されなくてよかったかもしれない(?)

一応釈明しておくと、先回りされたのはこのバスターミナルが初で、それ以外は、後からヤツらがつけて来ていたのだから、どちらかと言えば僕は被害者だ。何のだよ。

倍速

ともあれ、バスが来た。「空港連絡バス」なんて銘打っているものだから、リムジンバスのようなタイプかと思いきや、一般の路線バスの車両だ。しかし、かなり豪快な(お察しください)走りっぷりだったので、たのしかった。

そうして庄内空港に着いた。
山形空港より建物に新しい雰囲気がある。

僕の短い一人旅も終盤に差し掛かっている。
そういえば、最初の方に書いた文章を読み返すと、まるで松尾芭蕉のようなことを宣っていた。

ここ酒田にも芭蕉の句が残されている。彼が千住を出発したのが3月下旬で、酒田の句は6月中旬に詠まれている。
つまり僕は、およそ松尾芭蕉が80日ぐらいかけて移動した距離を1日で往復してしまう計算になる。

東京ドーム何個分みたいな表現で言えば、松尾芭蕉160倍速である。自分でも何を言ってるのかわからないが、ビックリするほど早いのは間違いない。

その権利を僕は片道4,000円弱(と6,000マイル)で買っているのである。あまりにカジュアルすぎないか。

そう、帰りは成田便、ジェットスター航空だ。本当に念願の初LCCで、旅行好きなら一度ぐらいは体験しておこう、的なノリで予約したものが二回流れるという不幸が、ようやくここで昇華される。

庄内→成田(1時間)、成田→自宅(3時間)

機内持ち込みの荷物の重さを測って、タグを付けてもらい、iPhoneでチェックイン。この辺りを迷いなく出来る人が、LCCの本当のターゲットなのだろうが、実際には、カウンターやチェックイン機に人が集まっているあたりが、難しいところだ。

庄内空港の保安検査場の先に、有料ラウンジがある。ANA便の時はもっと使われているかもしれないが、今回はジェットスター便だ。
航空券を数千円で取っておきながら、500円出してラウンジを使うモノ好きは、僕と、もう一組の夫婦ぐらいしか居なかった。

大きい空港と異なり、手荷物検査が搭乗便の30分前頃から開始なので、即入っても30分しか居られない。
さらに500円追加すると、地酒が飲み放題になるらしいが、酒が弱い僕が30分で飲んだらへべれけになってしまう。無理。

ガラガラの真新しいラウンジで、快適に待ち時間を潰して、搭乗口へ。

搭乗時に、制限の7kgをギリギリオーバーしている人が居た。事前に重さの確認もしていなかったらしい。「何か適当な重さで捨てられるものはありませんか」などと出発の直前に聞かれ、公開処刑のようになっていた・・・。

搭乗し、自席の周りを一回り見まわしてみる。搭乗率は4割程度か。LCCのA320だから、180席あるはず。行きのE190は95席だから、倍近くのキャパシティだ。
一番需要の少ない日(=安い日)に取っているので、普段はもう少し乗っていると思うが、隣の2席も、前後の列の各3席も全て空席なのは笑った。

離陸。
さらば庄内。今度は泊まりがけで来たい。

あっという間に着陸して、飛行機は時間通り成田に着いた。再びエプロンに降りて、バスでターミナルへ向かう。

1時間と言えども、あの狭い座席では足を伸ばせないので、降りるときに少し足周りの強張りを感じた。
あえて自宅から3時間かかる成田から乗る理由も全然無いので、恐らく、よっぽどでなければ、もう乗らないと思う。たぶん。

成田空港は色々と怖いのでそそくさと撤収。
駆け足だったが、リフレッシュできる、いい旅だった。

(あと"おまけ"を明日投稿します)

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