ニューヨークの子供の鳩

家の近くのコインランドリーで服を乾燥してる間、向かいのバーのテラスでスピリットを飲んでネタでも考えいた、たくさんの人間と一緒にヒョコヒョコと歩く鳩の子供がいた。人間に対しての警戒心ゼロなのか、子供だからか、ヒョコヒョコと人間と一緒に歩いてた、彼は道路を横断しようとした、そこは一車線だけど、車通りが多いので、危ないと思って、彼のところに行き、足で、歩道の方に追いやった。本当は手で持ってあげたかったんだけど、触りたくなかった。おれは元のテラスの席に戻りまたスピリットを飲み、あいつが少し心配で、ちょっと見てた、俺がせっかく歩道に戻したのにまたヒョコヒョコと道路を渡ろうとした、大きなトラックが来てるのが見えた、今僕が走っていって彼を手に掴む時間はあった、なんとなく彼が轢かれるような気がした、でも、なんとなく怖かったら自分で逃げるだろうと思った、彼を触りたくなかったからなのかな、トラックの前輪は彼の片方の身体を潰し、巻き込まれるように後輪で彼は潰された。彼の悲鳴が聞こえた。内臓が飛び出てペシャンコで血で道路は染まった、何台もその彼の上を車が走って行き、数分後には見る影もなくなっていた。あの瞬間、たくさんの人がその場所に歩いていたけど僕にしか聞こえてなかったと思う、あの悲鳴は。それは僕が彼をずっと見てたから、気にしてたから。その道を通るたびにあの時のあの小さな子供の鳩の轢かれるときの声が頭から離れない。声は意識しないと聞こえない。あの鳩の声が聞こえてなかった人たちのように。泣き声が聞こえる、パレスチナで、たくさんの泣き声が。でもあなたには聞こえない。泣いてるのに気付かれないって悲しいね。あの時、彼を掴んで家で飼えばよかった?公園に連れてけばよかった?このニューヨークでは、どうせまた潰される。僕が彼なら死んで違う世界に生きたいと思った。

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