年齢

ニューヨークからの帰りの飛行機の中で申告書を書いていて生年月日を書くときにふと思った。「1980年生まれか、今年が2020年だから40年経ってるのか、ということはあと40年で80歳か、おれは長生きしないタイプだから40年で死ぬんだな」と。気付かなかった。

あと半分で寿命で死ぬ人がたくさんいる年齢になるなんて。親父も母親もいま64?ぐらいだからあと20年で84歳か、おれいつのまに40歳だったんだろうって。歳にコンプレックスは感じたことはないけど、あとおれがいる時間は交通事故とか急な病気をせずにいたとして半分しかないんだなって、実感した…それで悲しいってことはまあ、ない。まあ気付けばってやつで。おれ世間でいうところのおっさんてやつになってたんだなと。

まあそこで色々考えたんだけど、28ぐらいからちょいちょい上手くいきだし、若い女にワーキャー言われる時期なんかもあった、いまも漫才で出てきたらおーみたいなことを言われる時もあるけど5.60代のオヤジ世代の人たちに言われることが多い。

まあ別に嬉しいし嫌ではないんだけど、ふと思ったのがおれはなんのためにお笑いをやってるのか、何のために舞台に立つのかってことをニューヨーク にいる間よく考えた。

政治とか社会問題をズバッと漫才で言うから好きと言われるけど、ただ近い意見の人のガス抜きにしかなってなくて、面白くねんだよって罵声もおれとは違う人たちの感情の逆撫にしかなってなくて、芸人だったら笑わせよって言われても、まあ正直しっくり来ない、なぜかって、ウケることってのはそれを好きな人たちがウケるものでしかなくて、例えば、ヒトラーは選挙で選ばれた。国民が当時は不安でユダヤ人を圧倒的に悪者にすれば、票が入る。こいつらのせいで俺たちの生活が苦しいんだって、自分がむかつく理由を作れば安心できる。「答えの捏造」だ。

どういうことかというと、例えば、おれがニューヨークで実際に車椅子のおばあさんから「アジア人はこの国から出てけ!」と言われた、その時はすごいモヤモヤしたけど、おれは「このばあさんは障害者で、世界を知らないんだな、車椅子でアメリカから出れなくて同じコミュニティでやってるから、痛みを知らないんだな」と勝手な事実を作ればおれは、だからかー納得っ!と自分の心が救われる。これが「答えの捏造」だ。

自分の不安の解消のために答えを捏造し「こいつは、もしくは、こいつらは、こうだから、こんなことするんだ」と、言い聞かせれば納得できる。

おれはそれの達人だ。ネットで書き込むやつはかわいそうなやつだ、とか、ロンドンでシンガポール人の留学生がコロナでてけと言われて暴行された時も、ロンドンはいま不安でEUから離脱する、だから愛国心を高めないと、不安になるから、他人種が許されないんだろうな、と。

本人たちに聞いてもないのに、ある程度の素材で他人を括って決めつけて答えた。それは許せないことが起きることを許そうとするから、許せるってのはそういう言葉だ。

たとえば、たまに女芸人が美人な女優に上から目線でバカにして笑いをとる。その時、笑えるのはこの女芸人がブサイクだからだれがいっとんねん、という見下してることを前提として、許せるから笑える。「こいつだったら許せる」たとえば、自分の好きなタイプのイケメンが調子に乗る。彼はイケメンだから許せる、と、普段なら許せないことを許せる理由になる。

この文章を作る前にニューヨークの空港で、無許可の白タクシーにぼったくられた。マンハッタンから空港に向かって、着いたターミナルが間違えてて、急いでエアトレインに乗ろうとしたら黒人のインカムを持った男が、こっちだ、と言った。おれはエアトレイン?と聞くと、今日はエアトレインはだめだ、シャトルが出てると言われた。彼は制服らしいものを着ていた、彼は、急がせるかのように、大声で、はやくはやく!と俺に言った、おれは、そこで、知らない空港でパニックになり、飛行機の時間も迫っていたので、急いで彼のいう通りに、彼のいう場所で待機した。そこに、一台のワンボックスカーが現れた。僕は、バスではなく、しかも、僕一人だったので少し、怪しいと思ったがさっきの男とは違う別の運転手の彼は早く早く、と大声で言い、その車に乗った。彼は変な声で喋ってきた。今思えば同じ男だった。彼は顔はこっちに見せず、サングラスをしていた。一人二役を演じてた。僕は何も知らずインスタライブを始めて、少し上手くなった英語の腕前をファンの人に披露してた、到着したターミナルで、彼は198ドル払え、と言ってきた。2万円だ。僕は驚いた、と、同時に、やっぱりかーと思った。現金は1万円しかなかった。だから恐怖で1万円払った、彼は残りは会社に電話したりして見繕え、と言ってきたが、警察に行こうというと、この金額でいいよ、と言って去っていった。完全に詐欺にあった。なんとも言えない悔しさがわいてでてきた。悔しさの正体は、自分で選んでないものに金を払ったことだ。これは10円で腹が立つことだ。自分で選んだものなら100万でも惜しくない。もんもんとしたおれは飛行機の中でこう思った、インスタライブ中に、英語の腕前を見せるといいその中でぼったくられるって、めちゃくちゃ悲しいじゃないか、めっちゃ面白いじゃないか、ニューヨーク最後の最後に1ついいネタができたな、と。しかしそれはおれがこの悔しさをポジティブに変換するために作った答え、でしかないような気もする。それもおれが選んだものでもある。複雑な心をリセットするには、一度、相手を許す必要があるんだけど、それには、答えを作らないといけない。彼は育ちが悪く、こうでもしないと飯が食えないかわいそうな人なんだ、不確定のことを事実と思い込めば、捏造すれば許すことにやって自分が楽になってる。自分が早く救われたいから咄嗟に考える勝手な答えの捏造なのだろう。国という存在に取り憑かれたものもそうなる時があるように思える。国のいう存在のファンになってしまったら、戦時中に日本は韓国を植民地にした、日本は韓国の女性を当時、慰安婦にした、性の奴隷にした、という歴史も、世界から日本は恥ずかしい国だと攻められることを、不快に感じる人たちは、自分の調べた要素の中から事実を捏造し、自分たちの国を許す。慰安婦は金をもらってた、韓国は、植民地になったおかけで、高速道路や大学なんかが建てられた。得してる。これは併合という、といいだし、日本を建てるために他国の誇りを踏みにじる。もちろん韓国にもそんなやつはいるから、お互いが、我が国はーーと怒鳴り合いチーム戦になり、それ以外の国民が巻き込まれる。肯定するための犠牲に誰かの事実を誰かが捏造する。安心のために捏造される答えだ。

答えとはなんだろう。

友達に紹介されたニューヨークの寿司屋の大将が素敵で面白かった。彼は70代ぐらいなのだけど、彼に何を大事にしてるのか?と聞くと「ふしんちゅうです」と答えた。日光東照宮の柱は1つ逆にしていて、完成すると崩壊が始まる」というメッセージだと言っていた。彼は9割自分が正しい、1割は間違えてると考えるようにしてると言っていた。

これが正しい答えだと決めると、崩壊が始まる、未完成のまま、完成に向かって突き詰めていくが完成はさせないんだと。彼は言った、答えは持たない、答えなんてない、答えを持ったときに人は年寄りになり、若い頃はなーお前らはなー、といい出すんだって。おれは40歳がまもなくだ。いま何割自分を疑ってるんだろう。結構疑ってる、だからこそ不安になりツイッターや友達に、攻撃的になるんだろう。答えを完成させないってのは、ずっと不安だということだ、手元にある安心に手を出さず、だからといって安心を探すこともせず、ただ、それだけを突き詰めていく姿勢。姿勢なのだろう。はやく決めることは迷わなくて済む。だから安心だ。高校生が行きたい大学を選ぶかのように何か大切なことを決めてないだろうか。迷うことを、考え続けることを、誰かの問いに答えることを、もっと時間をかけて、その行動を大事にしたいと、自戒を込めて。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?