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とあるカレー屋を夢見る男の話

何年か前にabema TVで土曜THENIGHTという深夜1時から3時までの生放送をやっていた。あの時に、最後の何週間、生放送中に僕が、ネットニュースを書く記者と生電話で喧嘩をするという内容だった。毎週、俺の生放送をみて、話を切り取って悪意ある編集を加えたネットニュースが、多くあって、腹が立った僕は、生放送中にその記者に「番組宛にメールしてこい、お前に説教したい!電話しよう!逃げるなよ」と言った。

そしたら本当に番組宛に記者からメールがあって、電話した。そこで俺は彼を説教した。なぜそんな仕事してるんだ、と、彼に問うと、最初は、これも意味がある仕事だとか、あーだこーだよくわからないことを言ってた彼も途中から「実は、新聞記者になるのが夢だったんですけど、落ち続けて、バイトでネットの記事を書いてます」と言ってた。

僕がその頃、新聞の取材をよく受けてたこともあり、知り合いに新聞記者がいたので、彼を紹介してやるから、と言って後で連絡先を交換し、彼にその新聞社を紹介した、するとなんと、次の週の生放送で、彼から電話があり、無事、新聞社に合格した、ありがとうございます、と、報告を受けた。

彼が夢を叶えるまでの流れを一部始終、当時みてたのが、沖縄にいるミュージシャンのたけちゃんという男だ。

彼はカレー屋になりたくて、自分はなれないんじゃないかと諦めかけてたそうだ。

しかし、その回を見て「おれも、絶対に、このネットニュースの記者のように夢を叶えよう!!!!絶対にカレー屋になってやる」と奮い立った。

しかし、実は、この記者は全てやらせだった。僕の仕込んだやらせだ。それは番組スタッフ誰にも言ってない。クレイジージャーニーは一部のスタッフがやったやらせだろう、おれのは演者の俺一人がやった、約1ヶ月かけた、壮大なヤラセだ。記者は芸人の後輩が自宅から電話して演じてくれてた。なぜそれをやったかは、こういう理由だ、視聴者にもスタッフにも、ネットニュースのゴシップ記事を信じるあまりに奴が多かった。だからおれは、君たちなんか簡単に騙せるんだぞ、ということを、実証してやろうと、後輩にお願いして、俺が「おいこの放送みてる、ネットニュースの記者!番組宛のメールアドレス教えるから電話してこい!」と、カメラに向かって煽るから、お前はそのためだけに作ったメールアドレスで、記者になりすまし、「俺村本と話したいです」と送ってくれ、と。ひとり愛知県知事リコール運動だ。

それをみた、何も知らない番組スタッフたちが「大変です!ネットニュースの記者からメールがありました!」と、俺に言ってくる。おれは「よし!電話しよう!」と、なる。そして就職させた、という次の週にもう一度電話しようと言い、「実はこいつ俺の後輩でーす!!!記者とのやりとりは嘘でしたーーー!!!!!お前らはまずすぐに物語を信じるということを覚えとけ!ぎゃっはっは」と言って番組を終えた。まさか、沖縄にそんな青年がいるとも知らずにだ。その彼を知ったのはそれから2、3年後だったか、沖縄に仕事で行った時に、急に目の前に、一人の男が現れた。「会いたかったですよ」と彼は言った。

そして彼は言った「僕、カレー屋を目指してるたけちゃんといいます」と。そして、彼はこう言った。「村本さんのおかげなんですよ」と。「あの時、番組を僕みてまして、新聞記者になった男性を見て絶対に僕もカレー屋の夢を叶えようと、思ったんです、でもそのあと、記者のは嘘だ、やらせだ、と言い出し、とても腹が立ち、めっちゃくちゃむかついて、悲しくて、だったら尚更、絶対に、夢を叶えてやる、と心に誓ったんです」と言われた。まさかそんな角度から、復讐から、夢を叶えようと思ったなんて、と驚いた。

そこから、沖縄に行くたびに彼は試作のカレーをもってきてくれる。そして、インスタで、コロナ禍で大変な人たちに、カレーを奢ります、という企画をやり、たけちゃんオリジナルカレーを沖縄の人たちに無料で配ったりしてた。あれから何年だろうか、たけちゃんから連絡があった「6月1日に、カレー屋をオープンすることになりました!!」と。

僕のついた大嘘から、彼は夢を叶えてしまった。僕は今年のこの日に那覇に完成したこのカレー屋を訪れて、独演会をして祝おうと、お客さんは彼のカレーを食べながら独演会をきき、最後はミュージシャンでもある彼の歌でも聴く夜にしたいと思う。おめでとう、たけちゃん。俺も夢を叶えるよ。

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