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創造的家づくり04 家族年表を描いてみる

家づくりのきっかけは家族と暮らしの変化

家づくりをするうえで大切な視点は、住まいは時間をつむぐ場であるということです。これまでの暮らしとこれからの暮らしを包む器だからです。

家づくりを考えるタイミングで一番多いのは、家族構成の変化、特にお子さんの成長に伴う節目でしょう。

子どもが誕生した、子どもが小学校に入学する前に、子どもが子ども部屋を欲しがるようになった、など、子どもの住環境を整えてあげたい、子育て環境を良くしてあげたい、そんな親心が詰まっている場合が多いものです。

あるいは、子どもが独立して、夫婦二人の時間を過ごすようになった、孫の誕生により子どもと二世帯で住むようになった。という節目もありますね。

子どもの成長乳幼児を抱えるご家族にとっては、半年後の子どもの成長には目を見張るものがあります。その子どもたちが、3年後にはどういう生活をしているのか、5年後は、10年後は、20年後は… 

10年で、親子の距離感は大きく変わります。


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11年前かな?姉弟。ビフォー(4歳・2歳)です。


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アフター。(15歳・13歳)
アフターの写真は、一度の水彩加工ではOKがでず、
重ねて2度の水彩加工。

10年の変化は、振り返るとあっという間ですが、そのあっという間に子どもはものすごい成長ぶり。そして、親子の距離感が大きく変わります。
上の写真のころは、引力が働くように親にまとわりついていたけれど、いまは磁反発力のように、近づくと適度な距離感で離れていき、ナチュラルにファミリーディスタンスが取れています。

子どもだけでなく、親との関係性においても数年単位で状況は変化します。

親世代の、伴侶の死別や加齢を機にした同居、介護のための同居をする可能性もあるでしょう。また、自分自身だって、子どもの手が離れたらやりたいこと、働き方が変わることもあるでしょう。ペットを家族に迎えたいということもあるかもしれません。

永く住む「家」をつくるということは、今だけでなく、このような未来の状況の変化や、未確定要素にも思いを巡らせるということです。

今どきに、家を建てようという方は、このような視点をすでにお持ちの方が多く、住宅会社など依頼先のほうも、家族の変化を意識してプラン提案をしていることが多くなっているかと思います。住宅ローンを検討される場合は、ファイナンシャルプランナーなどお金の専門家と実際にライフプランをつくられる方もいます。ライフプランシミュレーションにより、前もってお金の収支を見える化することで、俯瞰した視点でお金にまつわるリスク対策が可能になります。

おなじように、家づくりの視点で、家族全員の年表をつくってみることで気が付くことも多いです。

・子どもと一緒に住む時間が意外と短いかもしれないこと。
・子ども部屋の役割(意味)もその時々で変わってくること。
・自分が将来やりたいことを実現するために、いまやるべきこと。

また、建物としても、
・家もエイジング(年月を経る)ため、メンテナンスが必要であること。
・ある条件のもとでは(例えば在宅介護など)、リフォーム工事が必要であること。などなど。

ですから、

「子どもが小さいうちは広くスペースを使い、大きくなったら分けられるようにしたい」
「子ども部屋より、みんなのLDKを充実させたい」
「子どもが独立したら、書斎として使えるようにしたい」

といった、使い方の可変性をあらかじめ想定したご要望が出てくることが多くなりました。とてもいいことです。


ひとつ、ちょっと面白い年表をご紹介しましょう。
『人生十二相』(辰巳渚・イーストプレス・2013年)からの引用です。


十二相

イラストは、スドウピウさん。

人の人生を、3つの12の相(フェーズ)でとらえ、ひとは、それぞれのフェーズが変わる節目に、困難を抱えがちです。たとえば、結婚やパートナーとの同居は、うれしい反面、それまでの独り身での自由きままなライフスタイルから相手のペースと協調する必要があります。

さらに、子どもを持った家族は、子どものサイクルに自分を合わせざるを得ず、自分の時間をもつことはおろか、それまでと同じように、家事をこなしたり、働いたりすることもできなくなります。

そのときに、「これまではできてたのに…」と思うのではなく、「あぁ、私はこれまでの私から生まれ変わって新しいフェーズに入ったのだ」と意識することで、「できないことはできない」という受け入れと新しいフェーズで必要なことの取捨選択ができる。そんなふうに人生をとらえ、軽やかに生きることを哲学を説いた内容です。

※当然のことながら、著書が、この年表をモデルとして示されているわけではありません。

いうまでもなく、この十二のフェーズをすべて経験するのが「正解の人生」というわけではありません。「だいたいこんなかんじ」という見取り図だと思ってください。

家族年表にあわせて変わる「モノ・コト」の量

ここで注目したいことは、図の一番下の帯「関わるコト・モノの量」の視点です。家族が最大人数になったり、仕事で責任のある役職に就く30代後半~40代は、公私ともに忙しくなる時期です。

この「量」の変移は、辰巳さんが創立した家事塾で学ぶ生活者のリアルな声と日常観察からでてきた指標ですが、ご覧になる皆さんも共感する方が多いのではないでしょうか。私も40代の真ん中ですが、繁忙期真っただ中。この図をみると、「おー。わたしがんばってるじゃない!」と自分を労いたくなります。

子どもの独立とともに、いったん、その量も減るけれど、人生の先輩方の経験によると、親との関係性から介護などの「第二の繁忙期」も来るらしい。そして、この二つの繁忙期を同時に切り盛りしているのが、「ダブルケア」状態にある方で、25万人以上おられるとか。


「見通しを立てる」ということは、未来を迎えに行くような感じでしょうか。ある程度予測が立つだけでも、ホッとしたり、前向きに将来をよりよくするアイディアが出てくるのではないでしょうか。

家づくりをしなくても、家族年表を書くことでの発見が多いものです。
家づくりをする方は是非是非に!自分で、ご夫婦で、ご家族で自分たちの未来を描いてみてください。


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村上有紀(ムラカミユキ) 

楽しい住宅設計を仕事にしています。
もちろん、設計依頼をお受けしていますが(大歓迎!)、お施主さん(住む人)にとっても、間取りをつくるプロセスと学びは楽しいぞ!ということで、間取り好きで、自分で間取りをつくるエネルギーのある人へのサポートをはじめました。オンライン(時々リアル)でのスクール形式です。
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