それから『ダウンタウンヒーローアンドヒロイン』
ダウンタウンヒーローアンドヒロイン
笑われるくらいあなたを想ってる
笑われるくらいあなたを想ってる
抱きしめたくなるくらいあなたを想ってる
なんてバカにされるから人には黙ってる
あなたに会ってちゃんと言えたらいいな
気持ち半分の、いや、もうそれ以下でもいいや
僕は笑ってまた茶化すんだろうな
あーあ
笑われるくらいあなたに似てきてる
笑われるくらいあなたに似てきてる
一人ぼっちが好きなとこはヒーロー
一人ぼっちが嫌いなとこはヒロイン
あなたに会ってちゃんと言えたらいいな
気持ち半分の、いや、もうそれ以下でもいいや
僕は笑ってまた茶化すんだろうな
あーあ
おいしいランチを食べると電話する
「今度は一緒に行こうね。」とか言ってみる
「生きてる間にあと何回行ける?」
なんて生きてる間にあと何回聞ける?
あなたに会ってちゃんと言えたらいいな
気持ち半分の、いや、もうそれ以下でもいいや
あなたも笑ってまた茶化すんだろうな
あーあ
ダウンタウンヒーロー
ダウンタウンヒロイン
【解説】
父親が定年退職することになり、
退職金とは別に会社から貰った
旅行券10万円分で、
家族旅行に行く事になり、
「ふぐが食べたい」
と言った僕の希望を叶えるべく、
結婚して愛知にいなかった
姉抜き、
弟りょうじと父母と4人で静岡に行った。
時期は
『素晴らしい日々』を出したくらいだった
と記憶してる。
その時、
観光で行った静岡の砂丘で
2人を後ろから見ていて思った事を書いた曲。
2人とも幸いなことに
令和の今もまだ元気に生きていてくれている。
僕は両親の事はかなり好きだと思う。
当たり前だが根本的な部分で
多大な影響を受けたし、
目立つような応援ではなく、
僕のやる事をただずっと信じて
見守っていてくれていたことで
今も音楽を続けられている。
僕が褒められる事よりも
僕の立ち振る舞いを見て
「ご両親がしっかりされてるんでしょうね。」
とか言われる方が嬉しかったりする。
そんな僕の父親(ヒーロー)は
週末1人で競馬に行ったり、
落語を聴きに行ったり、
サウナに行ったりして、
1人で過ごすのが好きな人でもあったが、
逆に母親(ヒロイン)は
賑やかに人と過ごすのが好きな人だった。
本当にその2人の血を継いでるのが
僕だと思う。
父親は真面目の塊、
電車が遅延して遅刻する時は
遅刻するのが嫌で、
わざわざ有給で会社を休んでいた。
母親はユーモアが好きな人なので、
真面目な話をしていても
ついどこかで茶化してしまう。
見ていたら分かるかもしれないが、
そう思うと僕は母親が濃いかもしれない。
父親からは映画や演芸に触れるきっかけをもらい、
母親からは舞台を見ること、
本を読むことを教えてもらって、
今の僕がある。
しかし
そういうカルチャーとは
人生を豊かにするために
見るだけのものだと思っていた2人が、
まさか2人もほとんど通っていなかった音楽で、
僕がやる側を目指すとは思ってもいなかっただろう。
両親には今も心から感謝してるし、
少なくともこの曲を作りたいと思った時点で、
僕は家庭に恵まれているんだと思う。
そうではない人も沢山見てきた。
この曲を初めて人前でやったのが
愛知学院大学の学園祭で、
この曲を初めて聴いた
スタッフの弟りょうじは
ステージ袖で
人目も憚らず
仁王立ちして泣いていたらしい。
ちなみに
「美味しいランチを食べると」
のくだりは実は実際にあった出来事ではなく、
僕の想像というか、
実際にツアーで県外に出ると
よくお土産を買って行ったり、
名古屋で美味しいものを食べると
母親にも教えて
一緒に食べに行ったりもしていたが、
「生きてる間にあと何回行ける?」
までさすがに
ハードなことは言われた事がない。
ただ歌詞を考えながら道を歩いていて、
このフレーズが出てきた時、
いつか自分の両親がいなくなってしまう事が
初めてリアルに感じられて、
歌詞を口ずさみながら、
僕も思わず1人で泣いてしまった。
もう慣れてきたけど、
最初の半年はくらいはこの曲をやる度に
本当に歌いながら
泣きそうになってやばかったくらい
強い思い入れがある曲ではある。
タイトルの由来は
山田洋次監督の『ダウンタウンヒーローズ』から来てて、
言葉の響きが好きだっただけで、
映画の内容とは全く関係ない。
最初は
『ダウンタウンヒーローアンドプリンセス』
だったが、
語呂が良くないなと思っていたところ、
「ヒーローの対になるのはヒロインじゃないの?」
とばんに言われてこのタイトルになった。