見出し画像

歌詞を書くことについて③入門編2

③入門編2

・キーワードを見つける
・固有名詞は歌詞の奥行き
・大衆性と個性のバランス


テーマが決まったら、
次はそのテーマに沿った
キーワードを出していく。
仮に
『僕のコートニー・ラブについて』
を例にして出してみよう。
彼女はどんな子なのか、
彼女とどんな事をしたのか、
彼女を見てどう思ったのか、
彼女は…、彼女は…、
「とにかくよく話す」
「ご飯を食べに行った時に俺よりもご飯を食べた」
「メールでハートを使ってくる」
という文章でも、
「白いワンピース」
「コートニーラブ」
「グランジ」
「VANSの靴」
「茶髪」
という単語でも、
何でもいいので、
とにかくひたすら書き出していく。
書けるのであれば、
ブログやエッセイみたいな感じで
彼女との思い出を
文章として一度書いてみるのも一つ。
そこから歌詞としてキーワードだけを残し、
言葉を歌に合わせて削っていく。
多分歌詞って言葉を増やす作業というよりも
言葉を削る作業だと思ってて、
そうじゃないと歌詞に味わいがない気がする。
僕だって
今まで歌詞にならなかった言葉、
捨てられた言葉は
実際に歌詞になってる言葉よりも遥かに多い。
音楽のいいところって
歌詞としてそこに言葉が少ない分、
メロディが合わさって
「そういうことなのかな?」
と想像力を掻き立てることができ、
聴いてる側の自由度はかなり高い。
そういう意味では歌詞は
文章ではなくて短歌や俳句に近い。
「文章を削って意味が伝わるのか?」
と思うかもしれないけど、
歌詞で使用する場合、
元々が文章として書かれていたものを
切り取るのであれば、
歌詞になった時、
前後を省いて切り取っても
意味がちゃんと分かる事も多い。
「ハッピーセットのおまけが可愛いから集めたくて、
ハッピーセットばかり食べていた女の子。
僕も協力したくなって、
ハッピーセットを食べてみたものの、
チーズバーガーとチキンナゲットのバリエーションだけだと
流石に飽きてきた。」
という文章も
歌詞にすると
「ハッピーセットもう食べるの飽きたから、
欲しくもないなら可愛いとか言うなよ」
になる。
ここでおもちゃとかなぜ飽きるのか、
とか書いてなくても
これだけでなんとなく意味は分かると思う。
もちろんハッピーセット自体の認知度の話でもあるから、
これがSUPER7のフィギュア集めてるとか、
シャネルの香水集めてるとかになると
話が変わってくるけど、
この曲で言うなら
彼女を聞き手にどう思ってもらいたいか、
どうイメージしてほしいのか、
(コートニーでいうならちょっと子供っぽい人)
で抜き出し方も
キーワードも変わってくると思う。

僕の歌詞は
よく固有名詞を多いと言われる。
確かに
広小路だとか、ケヴィン・スミスとか、
そんな固有名詞がよく出てくるが、
個人的に歌詞を立体で考えると
歌詞全体が縦横の平面であるなら、
固有名詞はその歌詞の奥行きだと思っている。
歌詞はメロディに合わせて詩を書くので、
どうしても伝えたい事に対して、
文字数が基本的には足りない。
そういう時にこそ固有名詞が
その足りない文字数をカバーしてくれる。
『ビタミン』を聴いて
広小路通りを歩いたことがある人なら、
広小路通りの絵が浮かぶだろうし、
『16歳だった』を聴いて、
ケヴィン・スミスの映画を観た人なら
あの馬鹿馬鹿しい空気感は伝わってくると思う。
また別にその言葉を知らなくても
ある意味では教養にもなるし、
僕もそうやって歌詞や小説から
知らない言葉や名称を知り、
調べて身につけてきた。
そういう調べる作業も
少しずつ書き手に近づいている気がして、
宝探しみたいな気分で本当に好きだった。
ちなみに
一番このキーワード選びで大事なのは、
大衆性と個性のバランスであって、
大衆性が強いと大衆的ではあるかもしれないが面白くないし、
個性が強すぎると自分本位すぎて
意味が全く分からない。
そこのバランス感覚は本当に大切だと思うし、
おそらく僕が歌詞を読んで「?」と思ったのは、
大衆性が強すぎるように思ったからだと思う。
大衆性が強すぎて
個性が薄くなり、
申し訳ないが、
君の個性が見えてこなかった。

難しいことはない。
キーワードなんてどこにでも落ちてる。
『あの娘を返せ』に出てくる
五臓六腑は、
テレビの『ガキの使いやあらへんで』
を観ていて知った言葉だし、
彼女が、
友達が言っていた言葉でも何でもいい、
そこにあなたが
日々でキーワードを探す
アンテナを張ってるかだけの違いであって、
間違いなく面白い言葉なんて
そこら中に転がっている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?