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歌詞を書くことについて④実践編3


④実践編3

・シーンとオチを考える
・シーンの切り取り方
・言葉の必然性

これで歌詞を作るパーツは揃いました。
次の作業は
さっき作ったキーワードを並べて、
シーンを作っていく。
当たり前だが曲って結局、
シーンのブロックでできてるというか、
ABCメロ、サビ毎の
シーンのブロックがあり、
それを積み重ねて一つの歌詞になっている。
ここからはある意味で
映画監督の編集作業です。
このストーリー(歌詞)を通して、
監督(君)は何が言いたいのか。
キーワードから作った
シーンを組み合わせて、
起承転からのオチ(結末)へ繋げていく。
別れて辛かった。
出会って嬉しかった。
男って損だよなって思った。
もしくはこんなことがありました、以上。
これも別に何でもいい。
僕の歌詞が褒められたのは、
おそらく前項のキーワード選びと
今回のシーンの部分なのかな
とは思ってて、
歌詞にどこのシーンを使うか、
シーンの選び方、
そのシーンの切り取り方で
曲の印象が全く変わってくる気がしてるから
それなりにここにはこだわってきた。
正直、
「彼女が可愛い」
は誰でも言える。
彼女のどこが可愛いのか、
彼女の何に惹かれたのか、
そこをより君らしく、
君のキーワードの中から
君のシーンを選んでほしい。
例として
参考に高校生の頃から影響を受け、
今でも曲作りの参考にしている
BOWLING FOR SOUP
『Girl All The Bad Guys Want』
の歌詞を載せておく。

https://youtu.be/VGRxmYXi4Io?si=bz25-6sL7RL7l8mG

⬜︎⬜︎⬜︎

月曜の夜8時、俺は待っている
俺よりカッコいい女の子と話すために
彼女の名前はノナ
鼻ピアスをつけたロック好き彼女は
男女兼用の服を着ているが
正直その意味はわからない

彼女がやってくると
全ての風が吹いて、天使が歌う
彼女は僕に気づいていない

だって彼女はレスリングを見て
屈強な男共を倒し
ラップメタルを聴いている
ターンテーブルが彼女の目の中に見えるから
悪い映画のようだ
彼女は僕のことなんか見てはいない
もし君が僕なら、「誰か僕を撃って」と叫ぶだろう。
ひどい失敗に終わるが、
悪者全員が欲しがる女の子を得ようとするのさ
彼女は悪者全員が欲しがる女の子だ!

彼女はGodsmackが好きで
僕はAgent Orangeが好き
彼女のCDは父親が毛嫌いするものだらけ
彼女は40個のマリファナを手にしたいと言っている
彼女は僕が彼女が決して得ることの出来ない最高の男だってことを全く知らない

彼女がやってくると
全ての風が吹いて、天使が歌う。
彼女は僕に気づいていない

だって彼女はレスリングを見て
屈強な男共を倒し
ラップメタルを聴いている
ターンテーブルが目に見えるから
彼女は口髭を生やした男が好きで
競馬場のシーズンパス
Trans-Amに乗って
変な髪型をしてる男になれるのか
悪い映画のようだ
彼女は僕のことなんか見ちゃいない
もし君が僕なら「誰か僕を撃って」と叫ぶだろう
ひどい失敗に終わるが
悪者全員が欲しがる女の子を得ようとするだろう

再び彼女はそこにやってくる
ドレッドヘアーをして、魚網を持って
彼女は僕の心をメチャクチャにして、
ああ鎮静剤が欲しい
僕は彼女の裸が見たかっただけなんだ

今僕はレスリングを見ている
屈強な男になろうとしている
ラップメタルを聴いている
ターンテーブルが見える
口髭は生やせない
シーズンパスは得られなかった
ただ原付を得ただけだった
もし君が僕なら、「誰か俺を撃って」と叫ぶだろう。
ひどい失敗に終わるが、
悪者全員が欲しがる女の子を得ようとするのさ
彼女は悪者全員が欲しがる女の子なんだ

⬜︎⬜︎⬜︎

こんな歌詞。
人によっては
明日、照らすっぽいと思うかもしれない。
彼女がどういう子なのか、
言葉の意味は全て分からなくても
歌詞全体からなんとなく滲み出てきてる。
洋楽ってやっぱり
今回であれば
彼女についてのキーワードが独特というか、
彼女についてのシーンの切り取り方が
日本語や日本人の発想にはないところが
面白いと思う。
高校生の頃から
洋楽のCDはなるべく国内盤を買い、
こういう歌詞をずっと見ていた。
個人的に感じていたのは
フォークソングも
海外のポップパンクも
自分の身の回りの出来事を歌っていて、
中学生の時に聴いていた
ゆずや19と何も変わらない。
ただ洋楽の方が
表現が一つ先にある感じというか、
直接的には事象を言わないものが多く、
「なんとなくニュアンスで分かりそうだけど、
本質的な部分は実際分からない」
ものが多かった。
ノラがどんな女の子なのか、
直接的なキーワードではなく、
断片的なキーワードで表現している。
英語だと韻を踏んだり、
母音を揃えてたりするので、
響きで選んでいる言葉の言い回しがある分、
「なんでこれがここにくるの?」
と日本語にした時に
意味が分からなくなるところもあるだろうが、
個人的にこういう表現を身に付けたかった。
そっちの方が想像力を掻き立てられるから。

シーンも選び方と切り取り方の2種類ある。
シーンの選び方とは
例えば『東京サーモグラフィー』でいうところの
最初に彼女の部屋にいる1番の部分、
シーンの切り取り方とは
その中で
「ワンルーム埋めるのはグラスの音だけだった
気まずさに思わず飲み干したレモンソーダ」
というシーンを使ったところ。
このシーンだけ見ると
「…だからなんなの?」
と言いたくもなるが、
実際に歌詞を書く前に並べていた
箇条書きの中で
シーンを切り取ろうと思えば、
「玄関に入った時に男の靴がなかったから安心した」
とか、
「誰かと電話する時に
僕といたリビングではなく、
わざわざ玄関に移動していた」
とか、
その時の彼女の部屋のシーンは色々書いていた。
でも
『恋愛についての温度差について。
どれだけ僕が相手に熱量があっても、
同じ熱量がなければ成立しない。』
というのが、
テーマ(芯)にあったので、
異性の家あるあるのシーンも
結構気に入っていたけど、
例えば映画の冒頭で
いきなりカメラに映ったものが
気まずそうにしてる男と
別にそうでもない女、
男がいきなりグラスを持って
レモンソーダを飲み干した、
そんな何気ない
ただのワンシーンくらいの方が
次に何がくるのか
とちょっとした振りにもなるし、
そもそも聴いてる人が
いきなりあるあるが来るより
入りやすい、想像しやすいかな、
ここで情報量が多すぎない方が
温度差にピークを作れるかなと思って、
そっちでシーンを切り取って考えた。

その工程を経て、
いくつも作ったシーンのブロックたち。
ここからの最大の難関は
「どのシーンを使わないか」
を選ぶことだと思う。
歌詞を削る作業だと言ったが、
作ったワードを使うのは簡単、
せっかく作ったのに使わないという
選択の方が実際難しい。
よく映画のDVDの特典映像で
本編では使用しなかった
カットシーンがあったりするが、
客観的に観てて
「何で金掛かってるのに
これわざわざ無くしたんだろ?」
と思うようなものもあったりする。
こだわり抜いたシーンをボツにしたまでに至る
葛藤や苦悩は想像に容易い。
いざ並べてみて要らなかった、
意外と金がかかってないシーンの方が良かった、
試しに撮ってみたテストの方が良かった。
そんなことも山ほどあるんだろう。
映画であれば
とんでもないお金と労力、時間が掛かるが、
歌詞は自分の頭ひとつで
使うも使わないもできるから素晴らしい。
個人的にどんなシーンでも
いつでもボツにできるようにするために
なるべく曲ができてから、
24時間以内くらいで
歌詞を8.9割書くようにしている。
書いた歌詞を長く眺めていると
少しずつ思い入れが入り、
歌詞の良い悪いよりも先に
その愛着がどのキーワードと
どのシーンを使う使わないかの邪魔をする。

最後に歌詞の並べる順番と構成で
曲の印象はかなり変わると思う。
僕の場合で多いのは、
『泡の日々』のような構成で
大体1番はその情景や光景(起承)
2番にそれについてどう感じてるのか、
どう思ってるのか(転)、
何を伝えたいのか、どうなったのか(結)
という流れになってる。
これが一番分かりやすい。
『泣くな、新栄』ではないが
1番(起承)とラスト(結)が対になるように
カーテンを基準として
家賃と1Kが夕景になるように
ここで近い言葉で歌詞をもじると
最初の言葉に必然性が出るというか、
起承転結の流れも見えやすいと思う。
必然性は必ずしも必要だとは思わないが、
必然性がある方が
そのキーワードとシーンを使った意味が出てくる。
先程出てきた
BOLWING FOR SOUPではないけど、
よく見ると
最初の1.2サビは彼女の話だが、
ほぼ同じ言葉で
ラストのサビは自分目線の話になっている。
こうやって
一文字二文字、てにをはを変えて
同じような違う言葉を使い、
必然性を持たすだけでも
歌詞の意味が全然変わってきて、
歌詞が歌詞よりもストーリーとして
広がっていく気がする。
海外の音楽はそういう多用されていて、
もっと英語が分かると
その遊び方がより分かって
もっと歌詞を見るが楽しいだろうな
といつも思っていた。


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