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あなた『東京サーモグラフィー』


東京サーモグラフィー

ワンルーム埋めるのは
グラスの音だけだった
気まずさに思わず
飲み干したレモンソーダ

月明かりの君は 昼間とは他人だった
液体に窒息 僕だけに歌うディーバ

それから朝がやってきて
僕等はなんだか遠くなった
会話じゃなく質問
ただ駅まで離れて歩いてる
「冷静になりたい。」
サーモグラフィー使わなくても
君の体温は今日の空よりも青い

ガーゼを取り替えて
あの子と恋をしようか
都合よき計画 留守電に君のフレーバー

何度も朝がやってきて
僕等は前より遠くなった
表現しない表現じゃ
やっぱりうまくいくはずないじゃん
「気持ちを整理したい。」
ちゃんと水銀で測らなくても
君の体温はもう目盛では読めない

もうすぐ朝がやってきて
僕は今日からどこへ行こうか?
街中君が笑ってる
そんな幻覚も嫌になるさ
「色々ありがとう。」
サーモグラフィー使わなくても
僕の目の色は今の空よりも赤い

お別れにキスを さよなら僕のリリー



【解説】
明日、照らすお馴染みの別れの曲。
しかし
20代はこの方にどれだけ心を動かされて、
どれだけ苦しめられたか。
今となっては腹すら立つくらい好意を持っていた。
『夏空に、君とみた夢』という小説があって、
そのあとがきで、
「恋愛に関して一番難しいのはお互いの温度差である」
と書いてあるのを読み、
読んだ時はピンと来てなかったけど、
この時に自分が経験してみて
本当にそうだよなと思った。
どれだけこっちに熱量があっても
向こうにその熱量がなければ成立しないし、
またこっちに熱量がなければ、
相手の熱量を受け止めることができない。

ここからは結構生々しい話にはなるし、
書くのも恥ずかしい話が続くが、
解説と言ってる以上は
ちゃんと書き残そうと思う。
ただタイトルの由来だけは
読んでみたら何となく分かるかもしれないけど割愛する。

特に深い関係ではなく、
たまに美術館や飲みに行くような関係だった僕よりも年上の彼女。
そんなある日の飲みの終わり、
彼女の宿泊先のホテルまで送って行く道中で
なぜかいきなり
帰り際に彼女から抱きつかれ、
僕も突然の出来事に驚き、
「え!どうしたんですか?
酔ったんですか?」
と聞くと
一言、
「つれない人だなあ。」
と行って彼女は1人ホテルへ帰っていた。
その翌日、
彼女が帰った後、
あの光景が頭から消えずに
理由が聞きたくなって、
そこには触れずに
「あの、週末に家行っていいですか?」
と意を決して、
彼女の家に行ったことがあって、
その夜からの話を曲にしたのこの曲。
ただ家まで行ってはみたものの
特に何も言わない僕と何も聞かない彼女。
お互いそんな感じなので会話も続かない。
レモンソーダという歌詞を入れたのは、
語呂と
単純にお酒(大人)にも
ジュース(子供)にも聴こえるかなと思ったからで、
あの日何を飲んでいたのかは忘れたけど、
レモンソーダではなかったと思う。
月明かりの君は〜のBメロは、
電気を消してからの君はということで、
まあ夜の男女と言えば話は早いというか、
ただここは卑猥に聞こえないように
いやらしさのない言葉だけはかなり選んだ。
多分今ここでそういう意図が分かってから聞くと
信じられないくらい卑猥に聴こえると思う。
でも次の日、
なぜか気まずい関係というか、
彼女は何も話さなくて、
こっちから聞くことに対して答えるだけで、
結局今がどういう状況なのか分からなかった。
「俺なんか変なしたのか?」
とずっと考えていたが、
「とりあえず予定があるから。」
と言われて一緒に駅まで行くけど、
ただ駅まで離れて歩いてるだけ。
「また来ていいの?」
と伝えると
「連絡します。」
とだけ言われて
そのまま電車に乗ってどこかに行ってしまった。
その後、
メールが来て
「冷静になりたいから連絡は控えます」
とだけ伝えられる。
「じゃあ昨日は冷静じゃなかったってこと?」
そう思ったけど言えなかった。
この言われた言葉から
冷静になりたい
=温度を下げたい
=体温は見えないけど冷めてるのは分かる
=サーモグラフィー使わなくても
人間の体温を軸にして、
歌詞として組み立てることにした。
ばんには
「いきなりサーモグラフィーが出てきて、
よく分からない。」
と言われたけど、
彼女に分かってもらえたら、
別に他の人に分かってもらえなくてもよかった。

2番以降はあの夜の後、
1人で過ごす時間で考えていたこと。
ガーゼっていうのは傷口に貼るガーゼという意味でもあり、
ハードコアパンクバンドのGAUZEでもある。
彼女もGAUZEが好きだったし、
前の彼女もGAUZEが好きで、
「いっそのこと、
まだ俺に興味ありそうだし、
また元彼女とよりを戻して
(GAUZEを取り替えて)みるか」
という都合のいい計画を1人で立てていた。
留守電に君のフレーバーは
連絡を取ってなかった時に
彼女が残した留守電を1人でたまに聴いていたから。
竹内電気の山下くんともよく話していた頃で、
この話をしていた時に
「相手に連絡を取らない、
何も伝えないことで
相手に感じてもらえることもあるんじゃないの?」
と言われて、
連絡をしないでおいたけど、
結局そのまま何の連絡もなく、
「うまくいかないじゃん!」
と思ったのが、
表現しない表現じゃ〜の部分にきてる。
その後に彼女に言われて印象的だったのが、
「今こうやって時間を空けることで、
気持ちを整理したい」
という言葉で、
これがサーモグラフィーだと
繋がらないので、
整理するイメージから
目盛や物差しで測るようなもの
=水銀の体温計を思いついた。
これだったら
曲の中で軸になってる体温の話がブレない。
もうこのメールが来た以上、
彼女の体温が低すぎて
目盛では読めないだろうなと思った。

最後のサビは
時計の音と簡単な間奏を挟んで、
更に時間の経過を表している。
2週間くらい連絡が取れなくて、
街を歩いていても
彼女の幻を見ていたというか、
いきなり目の前に現れるんじゃないか?
という変な期待もしていたし、
メールが返ってきた夢も見たり、
起きたらもちろん夢だったと気がついたり、
携帯が鳴るたびに「彼女からか?」
と思うけど、
もちろんそんな事は一度もなく、
その度に落ち込む自分にも嫌になってきていた。
色々考えた結果、
もう連絡を取るのをやめようと思い、
「もう俺から連絡をするのも待つのもやめます。
色々ありがとう。」
と僕から最後にメールを送った。
この二週間くらいは
そんな夢のせいで寝不足にもなり、
毎日目が真っ赤に充血していた。
最後はそんな自分の惨めな姿を
朝焼けに例えて歌詞にした。

お別れにキスをさよなら僕のリリー
正直、
語呂が良かったら何でも良かったけど、
ここまでもまた
映画『男はつらいよ』のリリーさんが出てくる。
この頃は本当によく観ていた。
初めて人に話すが、
映画『男はつらいよ』は
彼女が好きだった映画なのを知って、
彼女と少しでも話したくて、
僕も見始めたのが
僕と『男はつらいよ』との最初の出会いだった。

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