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その35

 ボブ・ディランの2016年度ノーベル文学賞受賞の知らせは我が心の中に閃光を走らせた
 え??え??なぜボブ・ディラン?なぜノーベル賞?
 でも、落ち着いて考えてみるとボブ・ディランが吟遊詩人という名の詩人であることはまちがいなく、その楽曲のメロディ以上にその歌詞に私たちが魅せられてきたのも事実だし じわじわとスウェーデン・アカデミーの決定を喜びをもって受け入れることができるようになった
 (日本円にして1億超の賞金を手にしたボブ・ディランは授賞式には出席しなかった…)

 ボブ・ディランは1978年に初来日し、その時の日本武道館でのコンサートにS48年式の箱スカで弟と二人で行った、それはまさにビンビンのフォーク・ロックばかりで、風に吹かれては演奏されなかった
 美空ひばり、吉田拓郎や泉谷しげるとかもきていたとか…

 下駄履きで革マルを待つ隊列に
 イヤホンからは風に吹かれて

         ☆

 1972年、早稲田大学文学部の学生だった川口大三郎君が当時学生運動も内ゲバに突入していた頃中核派シンパと誤認され、革マル派によって虐殺された 所謂「川口大三郎事件」
 全国から続々と早稲田大学に集結してくる革マル派を迎え撃つため、いつもはノンポリ学生たちがどうしようもない怒りと正義感にかられて蜂起し、早稲田大学のキャンパスを埋め尽くし隊列を組んでいた
 ちょうど下駄履きで来てしまっていた私もとりあえず後ろから3番目、かわいい女学生の隣に、しゃがんだ
 大学の周りを何台もの機動隊の車輌が取り囲む物々しい中、しばらくしてリーダーらしき学生がマイクで叫んだ、
 「起立〜ッ!」
    「後ろ向けェ〜、後ろ〜ォ!」
 なぜかしら私は前から3番目になってしまった
 足が震えた 死のうと思った
 
 またしばらく経って、何かしら機動隊から連絡が入ったような様子があって、再びリーダーらしき学生がマイクを握った
 「革マルは〜、高田馬場駅方面に引っ返した〜、お疲れさんでした〜ッ!」
  ピタリと震えが止まった 
 生きようと思った

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