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リハ専門職の増員交渉の基本

 現場に慢性的な人手不足を抱えているにも係わらず、経営層に対して増員交渉ができないと嘆くマネジャーも少なくない。経営層から増員の承認を得るために必要となるのは、データである。

 リハ部門のマネジャーが経営層に示すべきデータは3つある。具体的には様々な因子や要因の影響も考慮すべきであるが、ここでは基本的な視座のみ述べる。

 1つ目は、必要な増員数である。増員数の算出には、まずそれぞれの対象者に提供すべきリハプログラムを明確化し、そのプログラムの提供に必要な単位数を割り出す。次に、全ての対象者に提供すべき単位数を積算することで、部門として1日で提供すべき総単位数を算出する。最後に、この総単位数をリハ専門職一人あたりの提供可能単位数(一般的には16〜20単位)で割り返すと1日に必要な出勤者数が算出される。これに、365日リハ提供体制なのかそうでないのか等の影響を勘案すると、部門に必要な人員数が算出される。この人数と現在の人数との差異が増員数の根拠となる。

 2つ目は、採算性である。リハ専門職による収益は算出しやすく、リハ専門職一人あたりの提供可能単位数に単価を乗算し、見込まれる評価料や加算を加えるだけである。ここから、人件費を減算すればリハ専門職一人あたりがもたらす利益が算出される。実際には、そこからさらに請求業務に従事する事務職員等の人件費も減算すべきであるが、この算出は極めて難しい。しかし、何れにしてもリハ専門職が16〜20単位介入していれば、増員により収支が赤字化することはほぼない。

 3つ目は、教育計画である。リハ部門の管理者を対象とした「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士受給調査」によると、入職応募者の質が低下してきていると回答する管理者が約2割程度存在している。したがって、対象者に安全で効果的なリハを提供するためには、採用後の卒後教育を充実させることが極めて重要となる。

 今後、リハ専門職の採用は年々競争が激化することが予測される。また、増員を続けても、突如需要が減少することも推測される。採用したリハ専門職の雇用を保証するためにも、リハ部門のマネジャーは決して片手間では務まらないというのが私見である。

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