評価できません。

今から言う事はただの恐ろしい贅沢だ。自分が酷い美食家になってしまった。そんな感覚さえする。
そんな複雑な感情の中で書くのはゼルダの伝説ティアーズオブザキングダム(以下TOTK)の評価だ。

というか結論から言えば、この作品に対しての評価は「評価不能」だ。
決してつまらないとかそういう意味合いではない。誠に情けないことに現状の自分がこのゲームに対して出力できる回答を持ち合わせていない、ということだ。

このゲームをそういう位置付けにした理由だが、このゲーム、あまりにも完璧すぎるのだ。
普通のゲームなら当たり前だが、良い所があって、悪い所があって、になるのだが、このゲームの悪い所を引っ張り出すとただの一個人の贅沢にしかならないレベルで見当たらない。そのぐらいクオリティの高いゲームなのだ。

序盤の必要最低限のチュートリアルを除けば何をしようともプレイヤーの自由であり、やろうと思えばラスボス直行も余裕で出来てしまうのは懐の深さを感じるし、出てるクエストならどんな順番でクリアしてもいい。オープンワールドとはこういうものであるという模範的解答に、他のメーカーは相当に頭を悩ませることだろう。

ただ贅沢な話かつ自己責任問題だが、自分がプレイした際に自由度が高すぎるが故シナリオの起承転結における結を先に知ってしまった為、その後のプレイが恐ろしく空虚なものになってしまったのだ。
「導線を守らないとこうなるぞ」というあまりにも痛すぎるしっぺ返しを食らってしまった結果、初見プレイの醍醐味を自分自身の手によってダメにしてしまった自分を殴ってやりたい気分である。

当然話の結を知ってしまっているが故にゼルダ姫についてあれやこれやと語る賢者やNPCに対しては「またゼルダ姫について言ってるよ…」と冷めた感情しか持てなくなり「リンクが『あーゼルダならピーーーーしてピーーーだよ』って言えばこの話終わるじゃん」という元も子もない着地地点に辿り着いてしまった。

全てはちゃんと導線を守らなかった自分が悪いのだし、そもそもブレワイから続くTOTKに関して言えばストーリーはあっさりめにしてそれ以外の部分を楽しんでもらおうという意思は伝わってきている。そもそもストーリーを楽しませたいのなら、別方向に行こうとしたらめちゃくちゃ頑張らないと倒せない敵キャラを配置するなどの方向性で導線を守らせようとする筈だ。同Switchにおける広義のオープンワールドゲーのお仲間、ゼノブレイドシリーズはそのようにしてある程度の導線をプレイヤーに守らせている。TOTKはそういったことをしない以上、ストーリーに関して比重を重めにするという意図が無いのは伝わってくるのだが、問題がメインのストーリーにだけ収まっていればここまで突っ込む事はなかったかもしれない。

問題はストーリーの結を知る事がサブストーリーたるエピソードチャレンジにまで影響していることだ。サブストーリーに関しても、大枠で言えばゼルダ捜索を目的として行われる。それがどういうことを招くかは前述した通りだ。
勿論、ゼルダに関係しないエピソードもあるが、それ以外のエピソードに対してやる動機が薄くなってしまったが故、殆どのクエストをクリアしなしないでクリアしてしまったのは忸怩たる思いしか湧いてこない。

大胆な創作による無限の解法を持つゲームシステム、どこまでもプレイさせてやろうという執念すら感じさせる収集要素などいくらでも評価するべき項目があることに違いはないのだが、完璧すぎるが故に「こうだろう」という予想が裏切られることはない。
想像した事が想像した通りに起こる。それはゲームとして一つの正解であるのだが、そこにはいい意味でも悪い意味でも裏切りが存在しないのだ。

あまりにいい子ちゃん過ぎる事がこんなデメリットに繋がるとは思わなかった。ちょっとぐらいお茶目なところがある方が可愛げになる、というのはゲームでも人間味でも同じことなのだろう。

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