95*95=80

この心に残るモヤモヤ感はなんなのか。
思考を止め、最高!激推し!みんな買え!と言いたい。言いたかった。でも理性はそうさせてくれない。本当にそう?と滾った頭に冷や水をぶっかける。
多分、どちらも正解だ。

という訳でゼノブレ3のクリア後感想だ。
待ちに待ったゼノブレ3、シリーズの集大成ということで否が応でも期待をせざるを得ない。無印ゼノブレはプレイしていないものの、ゼノブレDEはクリア済み。ゼノブレクロス、ゼノブレ2も隅々までプレイし切ったとは到底言えないレベルではあるがある程度はやり込み、プレイしてきた。その為今回はどう纏めてくるのか注目しながらプレイをしていた。

シナリオについて。現状維持を是とし命を命で保つメビウスに対する現状維持からの打破を目指す主人公たちという構図は現代社会で本作を遊ぶプレイヤーに対する明確なメッセージだろう。

敵となるメビウス達も敵らしい立ち振る舞いで素直にぶっ倒してやらあ!と思わせてくれる。ただ汚れてしまった大人目線からすると主人公たちから「こういうのはおかしい!間違っている!」と言われているようで、少し耳が痛くなる。

いるもんなあ、こういう大人…。でも現実にウロボロスの力は無いんだよなと現実に帰ってきてしまう虚しさは如何ともし難い。そんな敵役のメビウス達も扱いは様々で、厚遇されたメビウスが有れば死に際があっさりしすぎているメビウスもいる。
勿論全員がNやMみたいな形をとったら内容がもっととんでもない量になっているし、敵側を描きこむなら主人公サイド描き込めよと突っ込まれそうだ。しかし敵なら敵としての倒すべき理由と死に際の断末魔に味があって欲しいと個人的には思う。それが出来ないのならもう少しだけ敵役を集約するような工夫があれば敵役の敵役らしい魅力が出せていたかもしれない。
ただこれらは、本作が敵との対峙による成長というよりかはそこから発露した、「現状を変えた後どうするか、どうなるのか」により多くのリソースつまりは、命の火時計解放後に膨大なクエスト群を用意している点を見るに、大人しく斃される必要があったとも捉えられる。

要は今のゼノブレ3が描きたいのは以前ではなく以後なのだ。その為に敵とのあれやこれやはオミットされたと考えれば納得はいく。更に言えば以前の話のネタは幾らでも転がっているのでそこら辺は追加ストーリー等で回収していくのだろう。
そういったメインストーリーから外れている「以後」を取り扱う各コロニーのクエスト群によりもたらされるコロニーの変化は正直メインストーリーより面白い。というよりか、それらが本筋のようにやればやる程思えてくる。
きっかけはどのコロニーも同じ、旧支配者や今まで強烈に刷り込まれてきた既定概念からの解放だ。しかし、その後の移ろい方はどのコロニーも異なる。トップ自らの手で新しい道へ歩み始めるコロニーもあれば、各々が自覚を持って変化しそれがトップにまで影響を与えながら変化をしていくコロニーもある。
他人から与えられたきっかけで、しかも今までの人生観を大きく覆すような出来事に直面した時、人はどうすれば良いのか。そんな答えの見えない問題に戸惑い、迷い、もがきながらも自分達なりの答えに向かって変化をしていくコロニーの様子はクエストをクリアしていくと段々に見えてくる。これらシナリオの魅力が冗長になりがちなクエストをクリアする動機付けになっているのはとことん遊んでもらう為の良い努力だと思う。

遊んでもらう為の努力はシナリオだけでは無い。
広大な大地で待ち受ける様々なクエストやフィールドに点在するユニークモンスターとの戦闘。
これらと出会うにはフィールドを歩き回らなければならないのだが、歩き回れば歩き回っただけランドマークや絶景などによるボーナスEXPやコンテナからのボーナスアイテムが貰える為ついつい寄り道したくなる。こういった寄り道をしたくなる工夫や、各コロニーから得られる情報はちょっと前に赴いたコロニーの様子を見るというこれまたメインストーリーから外れた寄り道をする動機になる。そして帰ると2-3個のクエストでプレイヤーをお出迎えしてくれる寸法だ。また前作ゼノブレ2では特定ブレイドをプレイアブルにしておくと発生するクエストがあったが、今作にもそれが踏襲されており、特定ヒーローをパーティに加えた状態で発生するクエストが存在する。
しかしそんなの分からないよ、とならないのがゼノブレ3の妙で、恐らく相当テスターからの意見を反映させているのだろう。大方対象のヒーローが加わっているであろうタイミングでその指定ポイントに移動させ、プレイヤーにヒーロー指定クエストを見つけてもらう一連の流れはお見事という他ない。
これら様々な工夫によってゼノブレ3はきっちり終わりまでプレイしてもらおうという作り手側の執念を感じるシナリオとなっている。

ではゼノブレシリーズのもう一つの大きな特徴であるバトルシステムはどう変化しているのか。
無印ゼノブレ、ゼノブレクロス、ゼノブレ2とシリーズを重ねる内にどんどんと複雑化していったシステムは、ゼノブレ2でもって理解をしなければ全く相手を斃せないのにそのシステムが分かりづらいというPvEゲームにおいて致命的とも言える状態に陥っていた。
その分かりづらさに対してはかなりの対策が施され、実際に敵を倒しながらのチュートリアルやそれを再度行える訓練などバッチリだ。これで分からないというのはもはやプレイヤー側の問題だろう。
通常の戦闘では時間リロの無印ゼノブレ式アーツ3種とオートアタックリロの2式アーツ3種に強力な効果を持つタレントアーツ1種を加えた最大7種類のアーツを使い分けながら戦っていく。無印の要素と2の要素が混ざる戦闘はファンからするとテンションが上がるポイントではないだろうか。

位置取りとヘイト管理が大事で回復が渋い為簡単に勝たしてくれないのは今までと変わらず。但し前作より倍増した最大7人による戦闘である為か、敵側が今まで以上に範囲攻撃をする機会が多かったり、複数の相手と同時に戦う、というシチュエーションが多くなったのは前作までと大きく異なるポイントだ。その為今まで以上にヘイト管理と回復への比重は重くなり、敵を斃すよりこちらが斃されない事を意識しなくてはならない。その為どうしても一戦闘毎に時間が掛かりがちで、ライトなプレイヤーにとっては少し面倒に感じるかもしれない。
ヘビーユーザーにとってはベストな動きをしてくれない味方AIにもヤキモキさせられそうだ。その為戦闘中に操作キャラを変更したいが、変更先のキャラのアーツがリキャストされていないという事がよく起こる。動かしたいのにアーツが使えない場合プレイヤーが操作をする意味は正直薄い。
更にゲームが進行すればする程プレイヤーが操作しないと役割を果たしきれないクラスが増える為更に操作を切り替える余裕が無くなってくる。
そうなるとAIがちゃんと頑張ってくれないといけないのだが、いらないタイミングで回復したり、位置取りが悪かったり、ヘイト稼いでくれなかったりという事が度々起こる。
その尻拭いは全部プレイヤーがしなければならない為、プレイヤーは「プレイヤーが動かさなくてもプレイヤーが求める最低限の働きが出来る」ようにクラス、アーツ、ジェム、アクセサリーそれぞれを調整する必要がある。慣れたユーザーにはそこまで難しい話ではないがライトユーザーにはこれまた煩わしく感じてしまうかもしれない。

逆転の一手である、インタリンクとチェインアタックについても、はっきりと良い面と悪い面がある。というよりインタリンクに関しては問題点の方が多い。
シナリオの比較的序盤から解禁され今作の戦闘システムでの目玉となるインタリンク。これ、正直………自分はそこまで使わなかったのだ。
何故かというとインタリンクと比較してチェインアタックが余りにも強力であり、インタリンクが入り込む余地が殆どなかったというのと、インタリンクがもたらすメリットに対して1枚メンツが減るデメリットの方が大きいという2つの理由がある。
一つ目については一通りプレイした方ならお気づきだろう。今作のチェインアタックはフルメンバーで発動さえしてしまえばそれだけで一戦闘を終わらせる事は造作もないのだ。
前作ゼノブレ2で戦闘を終わらせるレベルのチェインアタックを通すにはそれなりの時間を要し、かつ的確な必殺技選択が必要だったが、今作ではゼノブレ2と比較して戦闘中の早い段階からチェインアタックを使えるようになる。またそのチェインアタックも状況によりけりではあるが基本的に相手のHPを5-7割は余裕でもっていく。最終盤になれば相手のHP8割程度からオーバーキルに持ち込む事だって出来る。しかも割と簡単に。簡単に大火力を出せるようになったのは良いが、その代償として戦闘自体が「どんな相手と戦っても変わり映えしない、決まったチェインアタックのルートをなぞるだけのルーティン」になってしまっている。
これでは戦闘から得られる感慨も薄くなってしまう。自分自身ラスボスは消化試合感が強くなって、エンディングへのテンションがイマイチ上がりきらなかった。
これが自分個人だけである事を願いたい。

二つ目のメンツが減るデメリットについては各々のクラス構成とも関わってくる。
6+1のロール構成はプレイヤーの趣味と腕の見せ所だ。基本的な構成は初期のアタッカー2、ヒーラー2、ディフェンダー2だがそこから増減させながら個性を出していく。その試行錯誤はやっていて楽しいポイントだった。が、最終的にはこの2-2-2の構成に落ち着いた。試行錯誤の上での結論である為結論に至る過程が無駄、と言う事ではない。しかしこの2-2-2構成は、自操作がヒーラーだった場合別キャラがインタリンクしたタイミングでヒーラーが自分一枚だけになるという状況が発生する。自操作キャラがヒーラーでない場合最悪ヒーラーが誰もいないという事も起きかねない。(ユーニがインタリンクしている場合を除く)
低難易度であれば気にする必要は無いが、高難易度の戦闘を行なっている時にヒーラー1人だけ、若しくは誰もいないというのは死に直結する。
起き上がり中にヒーラーが落とされると目も当てられない状況になる。
しかも他キャラがインタリンクするのを止める手段は即インタリンクして即解除するぐらいしかない。これを毎度行うのははっきり言って面倒だ。
これらの問題に併せて前述した「して欲しいように動いてくれない問題」を解決する為に他ゲームにおいては味方AIの行動方針を細かく決定出来る作品が存在するが、本作に於いての行動方針選択はターゲット選択、コンボルート選択、融合アーツ優先使用、味方の攻撃停止、再開の4つで、前述の問題点からするとそれじゃない感があるのだ。

長くなってしまったが作品としての完成度は間違いなく高い。高いが故に細かい部分の粗さや気になるポイント、ネガティヴな点が目立ってしまう。
前述したもの以外にもクラスやヒーローの性能格差が大きかったりアタッカーやヒーラーと比べてディフェンダーが少なく選択肢が少なかったり、お目当てのアクセサリーを探すのがめんどくさかったりとプレイヤーではどうしようも出来ない問題点も多い。
それを補い、そんな問題点など瑣末に思えるような作品であるかと聞かれれば言葉に詰まってしまう。これらの個人的に問題であると感じた点が作品に水を差しているのもまた事実だ。
シナリオ単体、戦闘単体、それぞれで見れば95点以上はつけるべき作品がその二つが合わさって何故か80点になるという恐ろしいまでに食べ合わせの悪い作品になってしまっているのは勿体無いと言わざるを得ない。

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