見出し画像

組織マネジメントに悩む皆さんへ ~私が管理職研修で伝えていること~

リンクアンドモチベーション村上です。久々の投稿をします。

今回は、小生が経営幹部・上級管理職向けに研修をしている『リンカーンプロジェクト』(以降LinPJT)からエッセンスを抽出し、組織マネジメントに悩む皆さんのヒントをお伝えできればと思います。

1.そもそもマネジメントとは?
そもそも「management」という名詞を英語の辞書で引くと、以下の言葉が並びます。(出典:英辞郎 on the WEB)
(1)〔会社などの〕経営、管理、マネジメント
(2)〔集団としての〕経営者(側)、経営管理者
(3)〔巧みな〕取り扱い、操作
(4)経営[運営・操作]能力
ざっと見渡すと、管理や操作をイメージさせるような言葉が並びます。
では、動詞の「manage」を辞書で引くとどうでしょうか? 確かに「管理する」「操る」等の言葉も出てくるのですが、それ以外に「何とか成し遂げる」「何とかやっていく」等の言葉が出てきます。つまり言葉の響きから「マネジャー=管理職=管理する人」と感じてしまいますが、実は「マネジャー=何とかする人」という意味が同時にあります。後者はマネジャー経験のある方は強く同意されるのではないかと思います。

このLinPJTにおいては、企業の外部・内部の状況が変わっており、外部:事業のソフト化・短サイクル化、内部:人材の流動化・多様化によって「人材が企業の競争優位性を決めるにも関わらず、人材の獲得難易度が高まっている。その結果、人材を獲得できないことによって、企業業績を押し下げる原因にもなっている」と冒頭に伝えます。
事実、不人気業界と言われる外食産業では、働く人が確保できなくて営業時間を減らさざるを得ず、そのまま業績ダウンになっている事例も散見されます。組織対策をせず今の状況がこのまま続くとさらにこの傾向が広まっていく可能性があるのは注意すべきことです。

さらにリンクアンドモチベーション独自の人間観、『人間とは、完全合理的な経済人ではなく、限定合理的な感情人である』という立場をとり、「人とは常にロジカルに損得で動いているのではなく、時々合理的だけれどもほとんど好き嫌いで生きている存在」と解説します。さらに言うと、組織内ではマネジャーが部下に「こんな簡単なこともやらないなんて何を考えているんだ」と叱責したとしても、単にやりたくないからやらない・マネジャーが好きではないからやりたくない・昨日飲み過ぎたので気分が乗らないからやらない等が当たり前として起こるものなのです。良い悪いは別として「人はそういうものである」を前提に置かないと見誤ります。

一方の組織観、『組織とは、要素還元できない協働システムである』で、「要素(組織内の個々人)をバラバラにできない、1つの働くためのシステム・塊」と捉えます。なので、個々の能力がたとえ劣っていたりしても、システム全体としてスムーズに動いていれば、個々の能力の足し算よりも組織全体として高いパフォーマンスを発揮できることがあります。その逆も起こり得ます。
システム全体がスムーズに動くためには、組織の血流と言われる『コミュニケーション』が密接に関わっています。弊社商品であるモチベーションクラウドで言う『エンゲージメントスコア』の値を組織の体温と捉えていただくと、血流=コミュニケーションが活発に回っている組織の方が体温が高く、それゆえ高いパフォーマンスを発揮していると弊社では考えます。

コミュニケーションが不足していて組織が傷んでいる場合、末端まで血流が届いていないことが多いです。その場合、コミュニケーションの量を増やすことでほとんどの症状は改善します。ここで言うコミュニケーションの量を増やすというのは特別なことではなく、
① 朝全員に対して目を見て挨拶する
② 週次のミーティングでお互いの進捗や認識を共有する
③ 月末に振り返り飲み会をする
等が施策として考えられます。

さらに組織が維持・発展していくためにはトップと現場を繋ぐマネジャー=『結節点』が非常に重要です。先ほどコミュニケーションを血流と例えましたが、マネジャー=組織における『結節点』は関節に当たります。万が一、関節がダメになった時は単純に関節がダメになるだけではありません。関節から先が全て死んでしまいます。それくらい組織にとって大事なのがマネジャーである『結節点』の存在なのです。
実際、人間の体において血流が滞ると、冷え性や肩凝りが起こります。それが進行するとさらに深刻な病気が発生するのと同じなのです。

--------------
余談になりますが、2018年春にNHKの番組収録の見学に行った際、iPS細胞でノーベル賞を獲られた山中伸弥さんが大変興味深いことを言われていました。
「京大のiPS細胞研究所にはメンバーが600人いて、そのマネジメントに大変苦労していたんです。でもある日ふと気が付いたんです。私の体の中の働きとマネジメントが同じであることを。」
我々LMが組織の専門家として人体を使うのに対して、人体の専門家である山中教授が組織にその共通点を見つけられたことは面白いと感じました。
--------------

ここまで、研修の前半で話している時代背景~人間観・組織観~結節点を触れてきました。こんな中でも「なんとかする」のがマネジャーなのです。研修で話すとほとんどの参加者が「なるほどー!」と前のめりになられます。


2.マネジメントは“やり方”ではなく“あり方”である
このLinPJTはプログラムが通常の研修の形式をとっているので見誤ってしまうのですが、研修ではありません。組織変革を研修という形で行っていると捉えた方が近いと思います。
実際参加者の声として、最初は「長い研修で大変そう」「仕事が忙しいのに研修なんてやるなんて」等、思っていますが、最後には「自分がこんな変わるとは思わなかった。もっとやりたい!」「このトレーニングがなかったら私は組織に押しつぶされて辞めていた」等、前向きな声を頂戴することが多いです。

これはこのLinPJTを通じて参加者が自ら変化されたゆえ、このように気持ちになるのだと思います。人や組織を取り扱う基本ルールやモチベーションエンジニアリング技術をインストールすると、多くの参加者は初耳ではなく、「何となく思っていたのはこういうことだったのか!」と言語として吸収されます。LinPJTで学んだことを職場で試してみて、日次・週次・月次でそれぞれフィードバックされることで、参加者は徐々にマネジメントの手ごたえを掴み始められます。そうやってマネジメントの力量を上げ、成果を出していかれます。

さらに言うとコンテンツには無いのですが、私が常に参加者にメッセージしているのは、『マネジメントは“やり方”ではなく“あり方”である』ということです。
研修内でお伝えしているのは確かにモチベーションエンジニアリングの技術なのですが、そこに魂(感情)を強く込めています。言い方を換えればどれほど素晴らしいテクニックがあったとしても、マネジャーとしてのスタンスがダメでは宝の持ち腐れです。その点は強くメッセージします。

そのために私は自分の失敗体験を積極的に開示します。
「私は昔、顧客志向が強く、お客様のため・数字のために仕事をしていたのですが、ある日、斜め下の若手から“あなたは部下の命綱を握っていない”と言われたんですよ。その時は大変ショックで、他のマネジャーと何が違うのか分からなかったんですが、よく考えると他のマネジャーは部下に厳しくしていても、最後は部下を救っていたんですね。私は拒絶するだけで終わっていた。そこから部下の接し方を変えたんです…」

マネジャーは『結節点』の存在であり、生ものを常に扱います。ゆえに失敗することの方が多いと思います。失敗した後でちゃんとそのことに向き合って、乗り越えていく姿勢。これがマネジャーとして大事なんだと思います。
たまに研修参加者が自分の部下に対して悪く言われるケースがあります。「うちの部下はスキル不足でスタンスも全然なっていない。なんでこんな奴を採用したんだ」等々。
こういう言葉を聞くと残念な気持ちになります。部下が可哀想もありますが、部下がこういった状態になっているのは手を打てていないマネジャー本人の問題だからです。時間が無い・数字のプレッシャーが強い等、できない理由は沢山あると思いますが、マネジャーは部下よりも強い立場にあるゆえ、何かしら手を打てます。それをサボっているだけなのです。マネジャーが部下を悪く言っているのは換言すると、自分に対して唾を吐きかけている風にしか私には見えません。

また『組織はそのマネジャーを映す鏡である』と言いますが、そのマネジャーの心の中がそのまま組織に映し出されます。マネジャーの不安や疑心暗鬼、怒り等のネガティブな感情は、確実に組織に悪影響を与えます。組織の問題は全てマネジャーに起因しているのは言い過ぎかもしれませんが、それくらいの意識を持って貰った方がマネジャー自身で変えることができます。

マネジャーが大変なのは理解しつつも、『結節点』として部下本人に向き合ったり、上位上司と相談して配置や役割を変更したり等によって、何とか部下のパフォーマンスを発揮できる環境を整えてもらいたいと思います。


3.終わりに
今回はLinPJT第1回からエッセンスを引用しました。
皆さんにお伝えしたかったことは、①モチベーションエンジニアリングで使う言葉の本質を知っていただきたかったこと。
②マネジメントは“やり方”ではなく“あり方”であるということ。

最後に、弊社社長に教えて貰ったリクルート創業者・江副浩正さんの言葉をご紹介します。
『マネジメントの才能は、幸いにも音楽や絵画とは違って、生まれながらのものではない。
経営の才は、後天的に習得するものである。それも99%意欲と努力の産物である。
その証拠に、10代の優れた音楽家はいても、20代の優れた経営者はいない。』(
マネジャーに送る言葉20章より)

マネジャーは切り傷・擦り傷・骨折もしながら、それでも前を見て立ち向かい、そこで得た成功や失敗経験を糧に、部下を鼓舞して何としてでも成果を出していくのだと思います。これだけ聞くと大変ですが、この経験をすることで大いなる人間的成長を遂げるのだと思います。部下から見えない部分で悩んだり苦しんだり、それでも頑張って進んでいるのがマネジャーです。先天的なスキルではなく、経験を通じて体得するものなのです。部下の皆さんもRoleplayを研ぎ澄ませて、マネジャーと同じ気持ちを意識して成果に向かって言って欲しいと思います。

これからも研修内で伝えている組織マネジメントのヒントについて共有していきたいと思いますが、また感想や気づきがあれば教えていただけると幸いです。

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?