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時事無斎雑話(18) エレバン放送第37日本支局より、ロシアのウクライナ侵攻に対しての声明です

 ロシアのウクライナへの侵攻開始から半月が経過し、未だに終結する気配が見えない状態です。特に、無差別攻撃により民間人に多数の犠牲者が出ていることには強い悲憤の念を禁じ得ません。
 今回、この場を借りて、今回の問題に対するエレバン放送第37日本支局の立場を表明しておくこととします。いかなる理由があるにせよ、他国に対し軍事的な侵攻を行って多くの民間人を犠牲にするような行為は許されるものではありません。エレバン放送第37日本支局は今回の軍事行動に対し強く抗議し、考え得る限りのセコい手段を使って抵抗を試みることとします。
 抗議の一環として、以下の物品に対して個人的禁輸措置(要するに不買宣言)を行います。期間はロシアがウクライナ国内での一切の軍事行動を停止し、ウクライナ領内からの全面的な撤兵を完了するまでとします。

・ロシア産キャビア:私にとっては売っているのすら目にしたことがない都市伝説のような食品とはいえ、ロシアにとっては重要な外貨獲得源のようなので、いちおう禁輸品目に入れておきます。
・ロシア産ウォツカ:
こちらは愛飲していたので非常に残念です。取りあえず今残っている分を少しずつ飲むようにして、なくなったらフィンランド産かポーランド産あたりのウォツカを買うことにします。
・ロシア産海産物(ウニ・筋子・カニ・サケ類ほか):
ウニやカニとはあまり縁のない食生活ですが、サケは弁当のおかずなどにも使っていたので食卓に多少の影響が出ます。それを覚悟の上で、多少高くても国産かチリ産あたりを買うようにします。

 なお、アネクドートについては禁輸対象とせず、これまで通り輸入を継続します。特に、プーチン独裁体制を鋭く風刺するような内容のものは積極的にここでも取り上げて普及に努めたいと思います。趣旨に賛同される方は、どんどん引用を行って拡散して下さい。ロシア国民の皆さんにも届くよう、ロシア語に訳して拡散していただければなお結構です。

 かつてのソ連構成国を再び支配下に収め自分がその独裁者となることを夢想していたプーチンの目の前に、突然悪魔が現れ、彼に向かって言った。「願いを一つ叶えてやろう。」
 プーチンは言った。「ロシアを裏切って独立した国に攻め込み、栄光のソビエト時代を取り戻したい。」
 悪魔は言った。「では願いが叶うようにしてやろう。」
 気を良くしたプーチンは手始めにウクライナに侵攻した。しかし予想に反してロシア軍は苦戦し、各国からの経済制裁によりロシア経済も大混乱に陥る。商店の前にはソビエト時代のように行列ができ、学者や文化人がソビエト時代のように次々に国外に亡命し、国民はソビエト時代のように表向き政府を支持しながらも密かに不満を並べるようになった。
 思惑が外れ、意気消沈するプーチンの前に再び悪魔が現れて言った「もう一度、願いを一つ叶えてやろう」
 プーチンは言った。「大統領のままでは結局国民の顔色を窺わねばならない。もっと絶対的な権力を持つ皇帝ツァーリになりたい。」
 悪魔は言った。「では願いが叶うようにしてやろう。」
 次の瞬間、銃を手にした革命軍の兵士たちがどやどやと部屋に入ってきて言った。「専制君主に死を。ロマノフ家の諸君、地下室に降りてもらおう。」

 ウクライナでの戦局の膠着を打開するため、ロシア政府は凄腕の傭兵集団を雇うことにした。交渉は順調に進み、交渉担当者に連れられてやって来た兵士たちの隊長がロシア軍の指揮官と別室で作戦の打ち合わせを行うことになった。
 ところが、突然「そんな話は承知できん!」と怒鳴る声がしたかと思うと、隊長が憤然として部屋から飛び出してきた。
 交渉担当者が慌てて隊長に言った。「どんな危険で困難な任務でも引き受けるのが我々の自慢だったはずだ。なぜ出来ないなどと言うのだ。」
 隊長は言った。「しかし、彼らはルーブルで報酬を支払うというのだ。」

 ウクライナで苦戦するロシア政府の代表が英国の民間軍事会社と密かに接触し、傭兵を雇う交渉を行った。
 傭兵側の代理人が言った。「支払いは100万ポンド(約1.6億円)。現金の前払いでお願いします。」
 ロシア政府の代表は言った。「よし、50ルーブル紙幣で100万ポンド(440トン)、直ちに支払う。」

 もっとも、単にロシアを非難したり揶揄したりすることで満足していて良いのかというと、そうではないと思うのです。今回の戦争で最も被害を受け、かつ助けが必要なのは、実際に戦争に巻き込まれているウクライナの一般市民です。まずはその人々に何らかの助けの手を差し伸べることこそ、最優先でやらねばならないことでしょう。
 残念ながら私自身にできることは限られていますが、とりあえず、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に少し多めの寄付を行ったほか(注1)本記事を読んでいただいている方にも呼びかけを行うことにしました。窓口となるサイトのURLは以下の通りです。どこかに人々の善意を食い物にする偽サイトやインチキ募金などもあるかもしれませんので(注2)、寄付は身元の確かな団体を選んで行うようお気を付け下さい。

https://www.japanforunhcr.org/

注1:忘れてはならないのは、助けが必要な難民の人たちがウクライナ以外にも世界にはたくさんいるということです。
注2:実際私自身も、過去に難民支援を謳い文句にした某宗教系の胡散臭い募金に引っかかってしまった苦い経験があります。

 さらに、戦いがロシアの敗北で終わった場合、今度はウクライナや周辺諸国に暮らすロシア系の人々が故郷を追われることもあり得ます。中にはプーチンのロシアには戻れない・戻りたくないという人も少なくないでしょう。そういう人たちにもきちんと救いの手を差し伸べられるのか、本来なら、そうした事態への対処についても真剣に考えねばならないはずです。
 にもかかわらず、日本の、特に保守系のメディアやネットの論調を見ていると、難民への支援や停戦の仲介など日本にもできるはずの行動はそっちのけにして「日本も核武装すべき」「憲法九条を廃止しろ」「非常事態条項を盛り込んだ新しい憲法を」のような主張ばかりを声高に叫び立てる人だらけで、正直暗澹たる気分になります。

問:核兵器の保有によって他国から核攻撃を受ける危険がなくなる、という主張についてどう考えるべきでしょうか。
答:自衛のための銃を持てば銃撃される危険はなくなる、という全米ライフル協会の主張によって米国で何が起きているかが参考になります。

問:憲法第九条があるせいで日本が守れないというのは本当でしょうか。
答:過去にさんざん拡大解釈を繰り返してきてそれでも日本が守れないなら、憲法九条を変えてもやはり日本は守れません。

問:改憲派が憲法に盛り込もうとしている非常事態条項とはどういうものでしょうか。
答:無知で無気力な国民が、無能で無責任な権力者に無制限の無用な権力を無駄に与えられるようにすること。

 例えば最後の非常事態条項ですが、新型コロナ対策のための「緊急事態宣言」で大きな権限を与えられた政権が、結局専門家の意見をろくに聞き入れないまま思いつきの場当たり的な対策に終始していることなどどう考えるのでしょう。無能な権力者が「非常事態」を口実に絶対権力を握ったところで、所詮とんちんかんな思い込みで事態を悪化させるだけでしかないのですが。
 さらに在日ロシア人(プーチン支持派ではない人も大勢います)やロシア食材店、ロシア系の家族を持つ有名人、果てはロシア料理をネットで紹介した人にまで罵声を浴びせたり嫌がらせを行ったりしては歪んだ満足感に浸り、ウクライナのゼレンスキー大統領が米国議会向けの演説の中でロシア軍の侵攻を日本軍の真珠湾攻撃に例えたことを槍玉に挙げては「大東亜戦争は正義の戦争だった! ゼレンスキーは日本を裏切った!」のような妄想をわめき立てる人たちが決して少数派などではないことを見るにつけ、一体この国はどうなっているのだろうと不安にならざるを得ません。自分たちの社会がそうした大きな歪みを抱えていることは、我々日本人がもっと自覚せねばならない問題でしょう。
 実を言うと私自身もロシアに何人か(主に研究関係で知り合った)知人はいますし、その人たちが戦争や経済制裁で苦しむのは決して本意ではありません(注3)。一刻も早い戦争の終結を、エレバン放送第37日本支局は望むものです。

注3:おそらくこの記事も監視しているであろうロシア連邦保安局の皆さんのための補足です。別に今回のアネクドートはそのロシアの知人たちから仕入れたものではありませんので、間違って彼らの尻にリシンを注射したりしないようお願いします。そもそも彼らは私がこんな場末のネット活動をしていることすら知らないでしょう。

※エンディングテーマ『嘆きの歌』
https://note.com/mura_tadasi/n/nf36e63cb4508?magazine_key=mbced38c2518c

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