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【ライブレポ】Skeletal Remains - Live In Japan 2024 - 2日目

早いもので2024年も残すところあと4ヶ月を切ったが、9月2日(月)は台風一過ということもあって、まだ真夏の様相を呈していた。そんな中、週始め月曜日の夜に足を運んだのは、新宿ナインスパイスである。同会場だった6月のSpectral Wound来日公演(東京2日目)もまだ記憶に新しいが、歌舞伎町の外れにあるこの地下のライブハウスは、デスメタルの熱気に満たされていた。

1月のMortiferum来日や3月のGatecreeper来日など、海の向こうで旬の現行デスメタルバンドが最近ようやく来日するようになり、その流れが素直に喜ばしいと感じている、といった旨の内容は以前にも書いたと思う。今回来日したSkeletal Remainsは過去に浅草デスフェストに出演していたが(2016年)、残念ながら私はその時は観に行っていない。ただその時と比べるとバンドのレベルは遥かに上がっており、今や所属は大手のCentury Media Recordsである。後述する新譜もクオリティが高く、今回の来日への期待は大きかった。

Skeletal Remainsの結成は2011年であり、若手というよりも中堅と言った方が良さそうな立ち位置であるが、カルフォルニア出身の彼らが現在志向している音楽性は、スラッシュメタル発展型であった初期Deathをよりテクニカル/ブルータルにした初期GorgutsDisincarnateといったバンドから強く影響を受けたオールドスクール・デスメタルである。最近のバンドなだけあってブラストビートも連発するが、その様からはHate Eternalも彷彿とさせる。

リリース済みのフルアルバムは5枚で、目下最新作である『Fragments Of The Ageless』は今年リリースである。今回の来日はその新譜に伴うアジアツアーとなっていて、8月後半よりインド、タイ、シンガポール、台湾、韓国を回った彼らのツアーの最後の締めくくりが東京であった。私が足を運んだ彼らのアジアツアー最終日はSkeletal Remainsがメインアクトだったが、前日にはUnearthやBleeding Throughと共演していた。私は行かなかったが、メタルコアとデスメタルが同じステージを共にすることは日本では珍しいことだと思うし、面白い試みだったのではないだろうか。


新宿駅で降り、新宿区役所の側にある遊歩道を通ってナインスパイスへと向かうと、まだ開場したばかりだったということもあってすんなりと入場した。今回は電子チケットだったが、電子チケットは発券の手間が無いし、紙のチケットはそれはそれで保管しておきたくなってしまう性質なのだが、入場に際してもスマホを提示するだけで良く、やはり利便性は侮れないなと感じた。結局ライブハウスのシステム上ドリンク代を現金で払わないといけないわけだが、この便利さを考えると今後電子チケットは主流になっていくのだろうか(ただスクリーンショットが不可な場合は周知の必要性を感じる)。

ナインスパイスは入場して奥にいくと物販スペースがあるが、今回の物販は来日バンドとしてはかなり豊富であった。ツアーTのMやLサイズは恐らく前日時点で無くなっていたものの、キャップやサイドポーチまであるその種類の多さには驚かされた。筆者は入場してすぐに、ロンTやバンドロゴのパッチ、更には所持していなかった1stと2ndのCDを購入した(終演後にツアーTのXLと、ピンバッジを追加で購入)。余談だが、今回の物販ではSQUAREが導入されていた。私も自身のバンドで使ったことがあるが、キャッシュレスでスムーズな支払いが可能となっていて、その威力を客側の立場で感じることができた。

スタートまで時間があったので、本記事を執筆したり知人と会話したりしつつ、この日唯一の帯同バンドであったCoffinsが始まるのを待った。Coffinsは私も何度か観たことあるし、国内ではもはや説明不要のバンドだと思う。個人的には大阪のデスメタルバンドParasitarioもぴったりの組み合わせだと思ったが(ParasitarioはSkeletal Remainsのカバー曲を出している)、色々事情があるものと思われる。

Coffinsを観るのは今年3度目となったが、彼らはライブバンドだなと毎度感じさせられ、今回も同様だった。Coffinsの繰り出すサウンドは、WinterCianideの系譜に連なるドゥームデスだが、ハードコアが好きな層からも人気があることからも分かるように、極悪そのものである。今回、良い意味でいつも通りのライブが観れると事前に思っていたが、正直なところ、今までで最もカッコ良かったと言い切れる。それは新譜の曲が多かったから、というのは恐らくあると思うし、音のバランスも素晴らしかったが、現在進行形でバンドがベストな状態であることの証左だろう。いずれにせよ、まだ新譜をチェックできていないので、早急に買う必要があると感じた。


なんだかライブ現場で「再発見」させられたような気分だったが、あっという間に終わったCoffinsの後は、いよいよSkeletal Remainsである。その時点で、ナインスパイスの埋まりはそこそこといった具合で、結局のところ最後まで快適に最前で観ることができたが、その状況に若干の寂しさを感じてしまったというのは私だけだろうか。前日のUnearthとBleeding Throughとのカップリングで観たという向きは多いだろうし、週始めだったことも要因としてあっただろうが、個人的にはこうした来日を機に日本でも現行デスメタルの注目度がもっと高まって欲しいなと思う。Skeletal Remainsは数年前のBlood Incantationのように多方面で話題になったバンドというわけではないが、むしろ、冒頭に影響源として挙げたバンドに加えて、Morbid AngelDeicideVaderといった王道のデスメタルバンドが好きな層に必ず刺さるバンドだと思うし、国内で更に注目されてもおかしくないバンドだろう。

話が少し逸れてしまったが、そうこうしているうちにSkeletal Remainsの面々がステージで準備を始め、いよいよライブがスタート。比較的すぐに気付いたのは、ドラマーが数ヶ月前に出ていたプレイスルー動画の人と違うという点で、実際に終演後に調べてみたところどうやらその時のドラマーPierce Williamsは既に脱退しており、今回CarnationのドラマーVincent Verstrepenがサポートとして帯同していたようだった。セットリストについてはPleasure Slave氏の下記投稿を参照されたい。

1曲目は新譜の曲で、初っ端から凄まじいの一言。何より圧倒されたのは手数足数の多いドラムである。もはやこの手の来日バンドの技量の高さは言うまでもないのだが(記事にはしていないが例えば先月のDefeated Sanityも同様)、それでも観るたびに思わされてしまう。海の向こう(というか欧米)にはこのレベルのメタルミュージシャンがゴロゴロいて、なおかつSkeletal Remainsのように海外ツアーもこなすバンドが数多くいるのだからやはり本場は凄い。そんな当たり前のことを毎度のことながら感じつつ、やはりギタリストの端くれとしてはギターの2人にも着目すべきだろう。まず、唯一のオリジナルメンバーでボーカルも務めるChris Monroyの使用ギターには当然目が惹かれた。彼の使っているギターはInstagramやYouTubeで見たことがあったが、実際に目の前で見ても美しかった(筆者もクラックル塗装のランディVを使っているので、あのような見た目の変形ギターが好みである)。そんなギターを堂々と構えて、音数の多いリフを刻みながら歌をもこなすChrisのストイックな姿には痺れた。また、これはChrisのみならず、もう1人のギタリストMike De La Oについても言えることだが、James Murphyの影響が大きいであろう流麗なギターソロも見所の1つであった。

Skeletal Remains (筆者撮影)

当日誕生日だったというベーシストBrian Rushの音は私のいた位置からか、あるいはバンドのチューニングの低さからか、残念なことに明瞭には聞き分けられなかったものの、屋台骨をしっかり支えていたものと思われる。彼の誕生日をその場にいた全員で祝った場面は和まされた。

チューニングといえば、彼らは6弦ギター使用時はC#スタンダード(全弦1音半下げ)、7弦ギター使用時はG#スタンダード(7弦ギターで全弦1音半下げ)のようである。途中で7弦に持ち替えていたので、チューニングで分けてセットリストを組んでいるのだろう。C#というと、まさに初期GorgutsやDisincarnateのチューニングであると個人的には連想させられるが、G#というのはAよりも半音低く、音源だと聞き取れるものの、ライブで音の輪郭をくっきりさせるのは難しそうだなと感じた。それはさておき、全体的な音響としては、私は最前にいたので後方にいた方達とは若干音のバランスが恐らく異なったであろうことは重ねて明記しつつ、特に問題は無かったと思われる(本人達が満足出来ていたかは分からないが)。


ところで、日本のメタルファンが大人しいという言説をどこかで目にしたことがあるな、とふと思った。実際、海外と比べて大人しいことには違いないのだろうが、それを来日バンドはどのように感じているのだろうか。他のアジアの国々と比べてもそのような傾向があるのか、来日バンドに尋ねたことはないが、心なしか不満げに見える瞬間を見たことがある人はいると思う(と言っても、彼らも真剣にライブしているし、そもそもの表情が厳ついというのはあると思うので、多くは私の考え過ぎだろう)。私もヘッドバンギングはするものの大声を出して盛り上げるような性格でも無く(勿論歓声は上げるが)、特に曲の演奏中は真剣にライブを観たいタイプなので、他の人の事をどうこう言えないが、日本がそういう風土であることを来日バンドは把握しているのか気になる。とはいえ、MCでは大抵盛り上がってるように思うし(演者と客とで意思疎通が取れていない場面は見たことがあるが…)、余計なお世話かもしれない。

今回については、MCはストイックなスタイルだったし、彼らは日本初ライブでは無かったため、特に不安になる要素も無かったと思うが、合間にメンバー同士で軽く会話して首を傾げているところを見ると一瞬不安になる(大抵音響に関することだと思うが)。あと今回気になったこととしては、後半演奏していたインスト曲「...Evocation (The Rebirth)」において、決めで止まったところで歓声が上がった際に、Mikeが苦笑いしながらまだ終わってないよと首を横に振っていた。ここを決めだと分かっていて歓声を上げた人と、曲の終わりだと勘違いして歓声を上げた人の割合は不明だが、いずれにせよ個人的には肝が冷える場面であった。当人達からすると曲知らないのかと思っただろうし、とはいえ観客全員が全曲把握できていることも超有名アーティストであっても無い事だと思われるので、このような場面は難しいと感じさせられるが、この件について長々と書いていて思ったのは、私が随分と細かい部分が気になってしまうという点であった。


さて、今回の彼らの選曲については新譜のツアーということもあって多くは同作からで、セットリストを確認すると、他のアルバムからは、「Beyond Cremation」が2ndから、「Catastrophic Retribution」「Devouring Mortality」が3rd、そしてアンコールの「Tombs Of Chaos」が4thからであった。今回のアジアツアーのセットリストはほぼ固定だったようだし、個人的には特段不満も無かったが、今回ようやく1stと2ndを手に入れたことだし、前から持っていた3rd〜5thも込みで、これを機にもっと聴こうと思う(あの曲やって欲しかったと思うくらいに)。人によってライブに臨む際どれくらい予習するかに差はあると思うが、近年の私はかつてほどそういった予習に拘らなくなった。音源が重要なのは大前提として、一方でライブにせっかく行くからには、生で感じた音を楽しむべきで、そういった視座を持ち合わせて観るようになってから、なんというか気が楽になったように思う(とはいえ音源は持っておきたいが)。

このまま書いていても話が飛び飛びになってしまいそうなので、この辺りでそろそろ本記事を締めくくりたいと思う。まず、MortiferumやSpectral Wound (SW来日公演については有り難いことに私のバンドを前座として起用いただいた)、先月のDefeated Sanity、そして今回のSkeletal Remainsを招聘したCKS Productionsにはいつもながら感謝の意を表したい。未発表の熱い来日があるかもしれないと考えると胸が躍るが、いずれにせよ、今回初めてSkeletal Remainsを観ることができたのは幸運だったと思う。この手のデスメタルバンドを一度に多く観たければ、アメリカのMaryland DeathfestやデンマークのKill-Town Death Fest等に行くべく欧米に渡るしか無いわけで、そんな中でも選りすぐりの旬なバンドがここ日本で観れるというのは本当に素晴らしいことである(ちなみに筆者は11月にDismemberを観るべくスウェーデンに行く)。

最後に、筆者が終演後に撮ったSkeletal Remainsのメンバー達の写真と、今回物販で買った品、そして筆者のSRコレクションを貼って終えたいと思う。次に行く来日はセトリに不安がありつつ個人的に念願となるIron Maiden来日である。

それではまた次の記事にて。

筆者とSkeletal Remainsメンバー。新譜を持参していたので全員からサインを貰った。
物販が豪華だったので、思わずあれこれ買ってしまった。
下段が今回買えた1stと2nd。他の3枚は元から持っていた。

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