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オオメジロザメがキャンパスに侵入した!?話など/南山宏・ちょっと不思議な話

「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2022年1月号、第453回目の内容です。

文=南山宏

襲撃失敗

 オーストラリアの「魚フィッシュ・シンカーズ・類探索研究リサーチ所」の学者たちは仰天した。
 追跡用タグをつけた体長約2メートルのオオメジロザメが、モニター画面の中で、地元ニューサウスウェールズ州のウォラゴング大学の構内を悠々と彷徨さまよい泳いで回り、しまいには学生自治寮の中にまで侵入したからだ。
 だが、「魚類探索研」の学者たちが、タグの行方を突き止めようと現場の学生寮に駆けつけて、ようやく真相が判明した。
 せっかく取り付けたタグが、持ち主の鮫と離れ離れになって浜辺に打ち上げられ、たまたまそれを拾った学生が、どう対処したらいいのかわからずに、しばらく学内で持ち歩いていたのだった。

早合点

 ニュージーランドはドゥニーデンのミスC(21歳、匿名)が、夜遅く帰宅すると、戸口の前に怪しい足跡が点々と印されていた。「サン」紙2020年9月28日付によれば、ミスCは恐怖に駆られて警察に通報したが、駆けつけた鑑識課員が家の内外を綿密に調べた結果、怪しい足跡は、ミスC自身の履いていた靴の跡にすぎないことが判明した。

インスタ×インスタ

 イギリスはロンドンのとある街頭に、なぜか32トン分もの大量のニンジンがドカンと捨てられ、小山を築いていた謎が解けた。
 2020年9月30日付UPI電によれば、近くにあるゴールドスミス・カレッジの美術学生が、先進諸国の膨大なフードロス問題を、批判する目的で制作したインスタレーションという。
 通行人が面白がって、スマホで撮りまくり、SNSインスタグラムなどへの投稿を競い合った。
 ただ、使用後のニンジンが廃棄されて、結果的にフードロスになったかどうかまでは定かでない。

私の赤の他人の手

 手の移植手術の報告例は、世界的に見ても200件にも達していない。ましてや移植後に手の形や皮膚の色が変化した、などという不思議な実例は、これまで報告されたこともなかった。
 インドはケララ州コーチ市在住の女子学生、シュレイヤ・シッダナゴウダーさん(18歳)は、2016年に、たまたま乗っていたバスの交通事故で両手首を失った。
 だが、翌2017年8月、同じ州内で事故死した20歳の若い男性ドナーから両手首の提供を受け、「アムリタ医科学研究所」で13時間に及ぶ移植手術を受けた結果、ようやく両手を取り戻せた。
 移植手術後は、新しい両手の使い方に慣れるために、1年半にわたって、手指と手首を動かす訓練と治療の毎日に明け暮れた。
 すると不思議なことに、もともとは浅黒かったドナー男性の手首の皮膚の色が、だんだんと明るみを増して、シュレイヤのもっと明るい色に同化してきた。
 同時に男性的な指と手の形も、女性的なほっそりとした優美な感じに、次第に変化しはじめたのだ。「アムリタ医科研」の医師たちの見解では、シュレイヤの明色化の原因は、彼女の体が産生するメラニン色素が、おそらくドナー男性のそれより少ないため。また男性の手の女性化は、彼女の女性ホルモンのせいという。
 2020年3月13日付「ライヴサイエンス・ドットコム」によれば、おそらくシュレイヤの移植手術の症例は、女性が男性の手首を移植手術された世界初のケースになるだろうとのことだ。

宿主

 タイのノンタブリー在住のチャオ・スーワンさん(79歳、仮名)が、激しい腹痛を訴えて、外科病院に担ぎ込まれ、ただちに腫瘍の摘出手術を受けることになった。
 ところが、内視鏡検査を終えて腸内から戻されるカメラに、なんと寄生虫のサナダムシが付着していて、驚いた医師たちが急いでずるずる引っ張り出すと、全長が2メートルもあることが判明した。
 2021年2月5日付「タイヴィザ・ドットコム」によれば、チャオの腹痛はケロリと治まり、内視鏡検査の結果もほかに異常はなく、当人は元気よく退院した。

許してほしい

 メキシコの首都メキシコシティで、バルコニーに佇む女性に、依頼者の男性に代わって甘い愛のマリアッチ歌曲を捧げようとしたプロ歌手は、当の女性が自分の妻であることに気がついて、依頼男性と猛烈な殴り合いになった。
 歌手が歌い終わった直後、依頼者の男性は、相手の女性にプロポーズするつもりだったという。
 皮肉にも、その歌のタイトルは『許してほしい』だった。
 メキシコのマリアッチは、アルゼンチンのタンゴと並ぶ中南米音楽の2大ジャンルとされている。

クリスマスツリーの奇跡

 米ニューヨーク市のロックフェラーセンター前の広プ ラ ザ場には、毎年クリスマスがやってくるしばらく前から、巨大な〝ロックフェラーツリー〟が飾りつけられるのが、長年の恒例となっている。
 だが、2020年11月19日付「CNNニュース」によれば、去年はそのクリスマスツリーに、ちょっとした奇跡が起こった。
 ツリーの中に、とても小さな梟ふくろうがちゃっかり潜んでいたのだ!
 アメリカキンメフクロウまたの名ヒメキンメフクロウ、学名はエゴリウス・アカディクス。
 本来は渡り鳥だが、順応性が高いので、どんな土地へでもたいてい定住できる。体長が最大でも22センチに満たない、世界最小サイズの梟として知られる。
 このツリーはニューヨーク州オネオンタ産の樅の木だが、産地から移送されてきたときには、枝葉の中にそんなチビ梟が潜んでいたとは、だれも気づかなかったのだ。
 ロックフェラーに因んで〝ロッキー〟と命名されたチビ梟は、同州ソーガティーズ市の「レーヴンスビアド野生生物センター」に引き取られることになった。
 同センターの話では、ロッキーはおおむね健康体でどこにも怪我はなく、いずれは広大なセンター内に広がる大森林のどこかに巣を構えて、住み着くだろうという。


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