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怪電波ペリュトンを受信した天文台の話など/南山宏・ちょっと不思議な話

「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2015年11月号、第379回目の内容です。

文=南山宏

ゴムボート人間

「造船所の近くで、人が死にかけてます!」
 フランスはブルターニュ地方の有名観光地ヴァンヌで、今年3月29日の早朝、22歳のフランス人青年(匿名)から通報を受け、現場に急行した救急救命隊は、想定外のトンデモ光景に出会った。
 繋留されたモーターボートのすぐそばで、両膝をついた若い酔っぱらい男が、救命用ゴムボートをてっきり瀕死の人間と思い込んでいるらしく、口から口への人工呼吸と心臓マッサージを、必死になって繰り返していたのだ。
 青年は酔いがすっかり醒めるまで、留置場に入れられた。


麻薬密売インコ

 イタリアはナポリの警察が、昨年12月下旬、マフィア幹部の邸宅から押収したペットのヨウム(アフリカ原産の大型インコ)は、鳥籠から取り出そうとしたとたん、金切り声で叫んだ。
「てめえ、ぶっ殺すぞ!」
 また、電話が鳴ると、
「毎度どうも。今回はどれくらいご入り用で?」
 どうやら飼い主の麻薬密売人が日常使う会話の口真似らしい。
 ヨウムはインコやオウム類の中でも、とりわけ口真似・声真似上手で知られ、パトカーや救急車のサイレン、電話の呼び出し音、ケータイの着信音、パソコンの電子音など、何でもそっくり真似できるので、飼い主や周囲の人間をしょっちゅう戸惑わせるという。
 余談だが、このインコの口真似は、犯罪の証拠として採用できるのか、専門家の意見を知りたい。


怪電波ペリュトン

 昨年5月14日、オーストラリア・ニューサウスウェールズの著名なパークス電波天文台は、17年前から悩まされてきた謎の高速電波バースト〝ペリュトン〟を、初めてリアルタイムでキャッチした。
 当初は落雷によるノイズと思われた5ミリ秒(1000分の5秒)という極端に短いこの怪電波は、1998年以来少なくとも10回は受信していたが、これまでは過去の観測データをチェックして、受信記録が確認されるだけだった。
 可視光やX線などほかの波長域では対応する天体が見当たらず、発信源は数10億光年の彼方か、地球上かの両極端の想定が可能に見え、そのほかブラックホール蒸発、中性子星合体、マグネター(超強力磁場中性子星)フレア現象など、さまざまな原因が考えられた。
 さらに波長の分散度(高周波と低周波の到達時差)が187.5の倍数になる不可解な規則性があることも判明、お膝元オーストラリアはじめ、米・独・日など各国の天文学者や物理学者が競って分析論文を発表する騒ぎとなり、地球外知的生物のメッセージ電波の可能性を論じる学者さえ現れた。
 いつしかこの怪電波は、奇想作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスが、『幻獣辞典』でアトランティスの怪物と空想した幻獣ペリュトンの名で呼ばれるようになった。
 当初この怪電波を受信した天文台は、世界でパークス天文台だけだったが、2012年にプエルトリコのアレシボ電波望遠鏡もペリュトンの初検出に成功し、この怪電波の存在は世界標準となった。
 大ドンデン返しの幕切れは、突如として本年初頭にやってきた。
 連邦科学産業研究機構の天体物理学部長サイモン・ジョンストンによれば、パークス天文台に新設された最新受信装置が、周波数2.4ギガヘルツの強いシグナルを拾い、それが電子レンジの周波数とまったく同じと判明したのだ。
 ただちに検証実験をした結果、タイマーが切れる前にレンジを開けた時だけ、問題のノイズが外へ漏れ出ることが突き止められた。
 つまり、たまたまパラボラアンテナがキッチンや外来センターの方角に向いている条件下で、加熱時間が終わる前に食事者がレンジを開けてしまうと、飛び出したペリュトンが検知されるわけだ。
 実際にも怪電波の受信は、昼飯時が多かったし、アレシボの場合もおそらく同様と推測される。
 ペリュトンはやはり幻だった?


地震の効能

 イギリス海峡の英王室属領ジャージー島は、去年の7月中、たてつづけに9回も海底地震に襲われたが、その直後からいきなり、オマールロブスターや大ガニの季節はずれの大漁が始まった。
 同島が属するチャンネル諸島の住人たちは、「地震に驚いて隠れ場所から這い出し、仕掛けたロブスターポット(捕獲用網籠)に逃げ込むからだ」と信じている。
 ジャージー漁業組合のドン・トンプソン組合長の話では、10年か12年前にも、同じように地震の直後、大漁騒ぎがあったそうだ。


甲虫を食った甲虫

 〈リヴァプールエコー〉紙昨年7月24日付によると、ビートルズの元メンバーで解散後もギタリストとして活躍したジョージ・ハリスンの追悼記念樹が、キクイムシにやられて枯死してしまった。
 2001年に米ロサンゼルスのビバリーヒルズで肺ガンのため死去したハリスンを悼んで、市内のグリフィス公園に植樹された高さ約3メートルのマツの木だった。
 ちなみに、キクイムシは甲虫目キクイムシ科の昆虫で、英語ではもっぱら〝バークビートル〟と呼ばれ、「樹皮下甲虫」と訳される。
 なお、その後同じ場所にふたたび、新らしいハリスン追悼記念のマツの木が植えられたという。


タフガイおばさん

 インド北部はウッタラカンド州在住の稲作農家で、孫もいるカマラ・ネギーさん(56歳)は、まさに男勝りのタフガイおばさんだ。
 去年の8月24日夕方、刈り入れ作業を終えて自宅まで歩いて帰る途中、突然ヒョウに襲われた。
 ヒョウはカマラの喉元に食らいつこうとしたが、彼女もヒョウの耳に噛みついたり、持っていたカマを揮ってメッタ切りにした。
 死闘約30分、ヒョウはとうとうたまらずに逃げ出したが、後日、歯を何本も折られ、四肢すべてに深傷を負った死骸で発見された。体長は頭から尾の先まで入れて、1.9メートルもあったという。
 カマラ自身も病院に収容され、骨折と噛み傷の治療を受けたものの、命には別状がなかった。


(月刊ムー2015年11月号掲載)

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