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宇宙に海洋プランクトンがいる話など/南山宏・ちょっと不思議な話

「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2015年12月号、第380回目の内容です。

文=南山宏

世界最高齢鳥死す

 世界最高齢とされるオーストラリアはアデレード動物園のフラミンゴが、昨年1月31日、やむなく83歳で安楽死処分に付された。
 世話をしてきた飼育員たちが、「フラミンゴの〝生活の質(クォリティ・オブ・ライフ)〟が、極度の老衰のため甚だしく低下した」と判断したためだった。
〝グレーター〟(より偉大なる者)と名づけられた、長い脚と首が特長のこの大型の優雅な鳥は、1933年にアデレード動物園にやってきたが、当時の手続き書類がいい加減だったので、エジプトのカイロ動物園からきたのか、それともドイツのハンブルク動物園かはっきりせず、オスメスの性別さえ最後まで不明のままだった。


イルカのプレゼント

 英デヴォン州のコームマーティン湾に出没して、地元の人たちに親しまれている名物イルカのデーヴ君は、なかなかのお利口さん。
 祖父母のマイクとニーナに連れられて、カヤック遊びにきたルーシー・ワトキンズさん(14歳)が、周囲を泳ぎ回るデーヴを見物していると、イルカは突然、4.5キロはありそうな大きなタラをくわえてきて、6メートルほど離れた海面に、バシャンと投げ出した。
 ルーシーたちは驚いたものの、獲物をそこに置いたのはただの偶然で、あとで自分が食べるつもりなのだろうと、そのままにした。
 ところが、デーヴは水面のタラを、鼻先でさらに舟から1.5メートルぐらいの距離まで押しやると、身を翻して姿を消した。
 そして数秒とたたないうちに、今度はシーバス(スズキ)を口にくわえてまたもや姿を見せると、3人の目の前でこれ見よがしに、それをぱくぱく食べ出したのだ。
 祖母ニーナはコメントする。
「かれこれ2時間は一緒だったわね。断っては失礼なので、プレゼントはありがたく戴きました。でも、さすがにナマでは食べられないから、持って帰ってタラのフィッシュ&チップスにしましたわ」


過去を記録する沼地

〈ガーディアン〉紙2014年5月28日付によると、英リーズ大地理学部のサイモン・ルイス博士率いる探検隊が、このほどアフリカ中西部のコンゴ盆地に、約1万年前から堆積し続けている面積20万8000平方キロ、深さ7メートルに達するおそろしく広大な泥炭沼沢地(ピート・ボッグ)の存在を突き止めた。
 イギリスの半分ほどもあるこのばかでかい沼沢地は、1万年かかって堆積した分厚い泥炭層が、その期間中に起きた気候の変動をすべて忠実に記録しているはずだ。
 われわれ人類が文明を築いてきた過去数千年間の地球環境の変化を正しく知る手がかりになるだろうと、大いに期待されている。


今月のオバカで賞

 南アフリカ共和国ヨハネスブルグ郊外の高速道路を走っていた運送トラックの運転手(匿名)は、あまりにも不注意すぎた。
 去年の7月31日、動揺させないようにと目隠しさせた1頭のキリンを、トラックの荷台に乗せて走行中、キリンの頭より低い橋の下を通ってしまったのだ。
 かわいそうにキリンは首の骨を折って即死した。


宇宙プランクトン

 ロシアのイタルタス通信社が昨年8月に伝えたところでは、ISS(国際宇宙ステーション)恒例の窓拭き掃除のついでに外部表面から採取されたサンプル中に、同国の科学者たちは予想外にも、海洋プランクトンを発見した。
 無重力や極低温や強烈な宇宙放射線の環境で生きられる逞しい生命力もさることながら、ロシア搭乗員グループ長ウラジミール・ソロヴィエフがとくに驚いたのは、ISSと地球を往復する連絡船ソユーズの打ち上げ基地バイコヌール付近の固有種でなかったこと。
「そこは浮遊生物らしく、海中から大気圏に浮かんで、宇宙空間まで漂い上がったのかもしれない」
 さらに1か月後、今度はドイツ航空宇宙センターが、やはりISS外壁表面の採取サンプルから、なんとバクテリア性DNAが発見されたと、マスコミに発表した。
 ただ、サンプル量が過少すぎ、分析方法にも難があってDNAの生死状態の確認が不可能だったので、さらなる追試が必要という。
 宇宙もけっこう汚れている?


赤子を救った声

 今年3月6日の夜10時半頃、リン・ジェニファー・グレスベックさん(25歳)は、1歳6か月の赤ちゃんリリーを、愛車の赤いダッジセダンに乗せて、米ユタ州スプリングヴィルの自宅へ帰る途中、運転を誤って橋のたもとのセメント防壁に衝突し、スパニッシュフォーク川に転落してしまった。
 近所の住民が物音は耳にしたものの、水面には何も見えず、水中に沈んだ赤い車が漁師に発見されたのは、14時間もしてからだ。
 ただちに警察と救急隊が駆けつけると、生存者がまだいるかもしれないと、凍りつくほど冷たい水も厭わず、急流に飛び込んだ。
 スパニッシュフォーク署のタイラー・ベッデス巡査は証言する。
「転覆した車の運転席に人影が見えたとたん、声が聞こえた。〝助けて、ここにいるわ!〟ってね」
 この助けを呼ぶ女性の声は、その場の同僚警官2人と消防士2人の耳にも、はっきり聞こえた。
 生存者がたしかにいるとわかったので、救助隊は勇気百倍、総がかりで水で一杯の重い車体を、なんとか水中から引っ張り上げた。
 すでに母親リンは事切れていたが、赤ちゃんは奇跡的に生きていた。チャイルドシートに逆さまの状態で支えられ、頭が車内の水面より上にあったため、意識は失っていたが、呼吸はしていたのだ。
 ところが、母親の遺体が検死解剖された結果、意外な事実が判明した。転落時に負った外傷のひどさからみて、即死したとしか考えられないことがわかったのだ。
 とすると、水中に飛び込んだ5人が聞いたと口をそろえて主張する成人女性の声は、死後もなお、わが子を救おうとする母親の魂の必死の叫びだったのだろうか?
 上司のマット・ジョンソン警部補は、苦しい説明をつけている。
「5人とも低体温症にかかっていましたから、多少の幻聴や意識障害はあったかもしれませんね」


(月刊ムー2015年12月号掲載)

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