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2年ぶり5回目の再録をキメた若きパイの話

古典的ファンタジーの世界において、ウィザードやシャーマンと聞くとどんなキャラクターを思い浮かべるだろうか。独断と偏見で語るが、「僻地に住む長老的な存在」を想像した方は多いと思う。『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルンや、『ジョジョの奇妙な冒険』でいうエンヤ婆のイメージだ。

では、「若い」という冠詞がついた魔法使いはどうだろう?これは少しイメージが掴みにくいかもしれない。ファンタジーの世界におけるウィザードやシャーマンというのは、魔法や呪術を操るために知識や経験を備えている必要がある。老いたキャラクターなら、知識や経験を持った人物として説得力を持たせやすい。だが「若い」場合はそれが困難なため、ある程度はストーリーで補強しなければならない。なので、「若いウィザード(シャーマン)」を想像した時に、作品によってばらつきのある性格的なイメージが湧きづらいのは当然のことだ。

一方で、若さというものは性的な魅力として表現しやすいため、ヴィジュアルを強調した作品は多い。「魔法使い」で検索すると、前述の古典的な老獪ウィザードの他に、露出度の高い女の子の魔法使いの姿を多く見ることができる。

シャーマンは戦車かMTGのカードしか出てこなかった。

つまるところ、ファンタジー作品における「若くて魔法を操る人物」のステレオタイプは、性格的な一致は難しいが「露出の大きい(=若い)ローブを着た女子」に見ることができる。

これは極端な例。

MTGのウィザード、シャーマンたち

そんなウィザード(シャーマン)であるが、本題のMTGでも同じようなイメージで描かれている。特に女性として描かれているものは一様に露出度が高い。

エモすぎ。

では、≪若き紅蓮術士≫とは。紅蓮術士とはパイロマンサー、炎の魔法使いである。それが「若い」と言い切っているのだ。これはもう若くて妖艶でグラマラスでエッチでスケベな魔法使いが描かれて然るべきなのだ。

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それではご覧いただこう。古典的ファンタジーカードゲームの元祖マジック・ザ・ギャザリングにおいて、5回も再録された超人気カード≪若き紅蓮術士≫の美麗なるアートを。

え?

なんで?

なんで?

同じアートで再録の功罪

MTGで再録というのはよくあることだ。最多の再録回数を誇る≪巨大化≫や代名詞たる≪対抗呪文≫等、何度も再録されるカードというのは定番カードである。

30回を超える再録回数。

そしてほとんどの場合、再録回数に伴ってアートの種類も増える。TCGとはアートも重要な要素だからだ。執筆時点で最多の再録回数の≪巨大化≫でさえ、37回の再録に対して8種類のアートが描かれている。5回の再録毎に1枚のアートが描き下ろされるペースだ。

≪若き紅蓮術士≫もまた、再録回数で言えば5回。明らかに定番カードの領域に足を踏み入れている。その証左に、モダンやレガシーのUR系デッキではほぼ常連である。にも関わらず、アートが一度も更新されていない。これが前述の若くて露出度の高い女の子であれば、何も言うまい。下手したら再録毎に集めるコレクター需要だって期待できたはずだ。

だが、蓋を開けてみれば描かれているのは青白い肌にふんどしのナード野郎である。しかも絵にすごい違和感がある。M14のアートディレクターはクスリでもキメてたのか?

違和感のオンパレード

何度でも言うが、別にこのアートじゃなければ何度再録しようが文句は無い。だが、例えばリミテッドでしか使われないようなニッチなスペルを新規アートで再録するくらいなら、1枚くらいそれに使うお金をこういうカードに回して、もっと需要に応えたアートで描き下ろしてもらったって罰は当たらないだろう。

正直言って、丹精込めてリストを考え、カードを集めて組んだレガシーのデッキに、赤髪ハリー・ポッターもどきガチオタ風味を入れる気は一切起きない。頼むから俺に使わせてくれ。レガシーで1/1を並べさせてくれ。若くて妖艶でグラマラスでエッチでスケベを走らさせてくれ。

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