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『鎌倉殿の13人』第11回「許されざる嘘」(2022年3月20日放送 NHK BSP 18:00-18:45 総合20:00-20:45)

いよいよ佐殿から鎌倉殿へ。頼朝が関東に新しい政治体制の枠組みを整えつつあるなか、早くも内部の権力闘争が徐々に芽吹いてくる。そんな予感がする今回の筋立て。とくに平清盛が死に宗盛が後白河法皇に政権を返上したこと、その翌年に政子が男の子(次の鎌倉殿となる頼家)を産んだことは、その安産祈願も含めて周囲の人びとへ与えた影響はきわめて大きかった。

さて、鎌倉政権確立に当たって急ぎ人を用意せねばならないと頼朝に進言する義時。それに応えて頼朝は京都の三善康信(小林隆)に推挙させようと言う。三善は刻々と京都の情勢を鎌倉に伝えるとても大事な役割をこれまでもはたしてきたし、今回も南都焼討清盛死去を報じるという重要な役目をはたしているのだが、その三善が中心となって文官を手配するということである。武家政権といえども、官僚が必要不可欠であることはいうまでもないが、新しい政権ともなれば、それは尚更のこと。これからも京都の三善からは目が離せない。

また軍事政権としての鎌倉幕府にとって御家人たちをまとめる侍所別当の役割も非常に重要。1180(治承4)年12月に完成した鎌倉御所では挙兵からそれまでの軍功が義時によって書き上げられて論功行賞がおこなわれていたが、そこへ呼び出されて初代侍所別当に任命されたのが和田義盛であった。そして梶原景時が侍所の所司、つまり副長官となる。そうした論功行賞からハズされたのが、時政。それにイライラしているのは牧の方。コミカルに描かれてはいるが、こうした頼朝人事への不満も次回「亀の前事件」の伏線となっている。

前回登場した義円(乙若)は弓矢の腕前も確か、孫子の兵法を諳んじ、紀貫之の和歌も達者に詠む英才。それを面白く思わない義経。清盛の死が鎌倉にもたらされると平家討伐の気運が高まり、行家は先走って出陣するのだが、鎌倉殿が義円を評価していないということを義円の耳に入れ、義円が行家に引きずられるように仕向けたのが、義経であった。この「許されざる嘘」はあっさり露見してしまうが、時すでに遅し。義円は墨俣川の戦いで討ち死にしてしまった。

ラスト10分は政子の懐妊、安産祈願からの伊東祐親謀殺へと……。祈祷とか占いが本気で信じられていた中世ならではの話とはいえ、やるせない話である。ちなみに今回のトップ画像は鎌倉の若宮大路。京の朱雀大路を模して作られた鎌倉の目抜き通りもまた政子の安産祈願のために建設されたものである。

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