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覚えていますか?シンドラー社エレベータ死亡事故

この記事は2020年10月21日にブログに公開したものです。

長文(4600文字)ですがお伝えしたいことは「シンドラー社エレベータ事故の真相は、ディズニー・テーマパークの運営部門スーパーバイザーであれば、事故発生後15分で判明した」ということであり、ご遺族や関係者を長い期間苦しめることはなかったということです。

さらに一言、事故当時にはシンドラー社エレベータ同仕様(2重ブレーキでないなど)のエレベータは700万台日本に存在しました。ほとんどが日本メーカーであり、シンドラー社製エレベータだけの問題にしないと皆さんが使用していたエレベータも使用できなくなっていました。このことを「国」は恐れていたと私は今でも考えています。

<開始>
このブログでは福島第一原子力発電所事故や池袋暴走事故、JR福知山線脱線事故や森友文書改ざん事件など、事故や事件の真相に迫る記事を書いてきました。元東京ディズニーランドのスーパーバイザーの視点から見た事件や事故の真相に迫る記事は今後も書き続けたいと考えます。

以下の文章は、2006年6月3日に起きたシンドラー社エレベータ事故の犠牲者遺族に送付した文書です。

ピーター・ドラッカーの「官僚という指導層は、一般に考えられているよりもはるかにしぶとい。不祥事や無能が暴露された後も、長く力を持ち続ける(『明日を支配するもの』より)」という言葉と、「ここでは国とは官僚を意味する」という解釈を一度頭にインプットしてから読んで頂くと、事故や事件の被害者やご遺族、関係者の方々の理解をより深めていただけるものと勘案されます。

2018年12月18日
市川様

 年末のお忙しい時期のご連絡で失礼とは思いましたが、市川様ご家族がどのようなお気持ちで新年を迎え、どのように祈念されるのか、良いお年になる一助になればと思い筆を執った次第です。
 冒頭の文書としてどのような言葉を並べれば良いのか、正直、私には分かりません。それだけシンドラー社エレベータ事故から受けた衝撃が私にとって大きかったのです。それでも私には天国の大輔さんや遺族の方々、赤とんぼの会など支援している方々にとって、事故が起きた平成年間が終わる4月末までには、誰もが納得して頂ける事件の真実と、真の犯人を世に示すことができるものと確信しています。私は今現在、無名であり無力ではありますが、PTSDという不治に近い疾病と四肢麻痺という障害を負うまでは、原子力発電所や名高い企業などで安全管理の講演を行っていた者です。
 2006年6月の事故直後から、長引き真犯人を取り逃す可能性が高いと直観し情報を収集してまいりましたが、私が「騙されている」と確信したのは、毎日新聞2008年12月19日(金)朝刊の <エレベーター事故>東京の高2死亡、点検員を書類送検へ の記事です。23日(火)は天皇誕生日であり、この日の発表なら国民の関心が高まることなく年を越すことができると真犯人は考えたに違いありません。事故後に私が関わっていたら極めて短期間で真犯人を特定できたと考えると自らを痛く恥ます。本日まで事故の真相伝達が遅れてしまったことを深くおわび申し上げます。

2009年2月18日 第一回口頭弁論から
「シンドラー社は保守会社などと安全確保のための情報を共有しなかった」
「息子のためにも事故原因を究明し、責任を明らかにして、2度と同じような事故を起こさないようにするのが私たちの使命だ」
<引用終了>

 「情報共有」問題を原因解明の出発点にしてしまうと事故の真因にたどり着けません。このように考えてみてください。
 「この事故が東京ディズニーランドで起きていたら」と。私などのディズニーで安全管理をたたきこまれた人間なら15分もかからずに事故原因を究明できました。
 結論を最初に記します。私が知っている限りの情報から得た結論は、「真犯人は国ではない」という、まさに薬害エイズ事件と同じ図式に私たちは誘導されたということです。弁護士先生(中村雅人弁護士でしょうか)が、シンドラー社との和解にこぎつけられたことは高く評価されます。
 しかし、です。私が抹殺されていなければ、言い換えれば、私が安全管理の専門家として弁護側の立場で証言していれば、薬害エイズ事件同様に、国が責任を認め大臣が謝罪するという結果に至ったと断言でき、時間をおかずにご遺族が納得されるような再発防止対策が構築されました。
 国が責任を認めると断言した理由は、薬害エイズ事件を自ら調査し国の責任を認め謝罪したのは、大輔さんの通った小山台高校先輩の菅直人元首相が薬害エイズ事件当時の厚生大臣であったことからです。菅直人元首相は東京工業大学出身であり、シンドラー社エレベータ事故問題の解決は理系の考察力が必要不可欠でありますが、この事故をメカニカルに考察すると事故がいかに単純なメカニズムで発生したのか菅直人元首相などの理系大学出身者でなくてもはっきりと見えてきます。
 事故を単純化するとこういうことです。自転車の前ブレーキを眼に浮かべてください。人が脳から「ブレーキをかけろ」と体に指令を出すと、人はハンドルについた装置を手で握るという動作を行います。自転車の前輪に設置されている車輪の金属部分をブレーキパッドで挟むことにより、指令を受けたブレーキバッドは摩擦力により前輪の回転を止めるのです。エレベータのブレーキが効くシステムも、ジェットコースターのブレーキシステムも、自転車の前輪のブレーキシステムも同じなのです。
 プレーキパッドの摩擦力でエレベータやジェットコースターや自転車の走行を物理的に止めるシステムをメインシステムとします。一方で、脳やコンピュータから指令を受けてメインシステムのブレーキパッド、つまりブレーキ本体に指令を伝えるシステム、それは自転車のケーブルように物理的なものであったり、ジェットコースターやエレベータのように信号によるものであったりしますが、この指令を伝えたり制御したりするシステムをサブシステムと分けて考えてみてください。
 事故当初、ブレーキ周辺に「黒い粉の堆積」が見つかったと報道されました。これは、メインシステムであるブレーキパッドの摩耗による走行停止システムが機能していなかったことを意味する報道ですが、この報道以降は2007年3月の警視庁による再現実験に至るまで、いや、その実験以降もサブシステムである指令を伝える信号系のバグ(コンピュータトラブル)が主原因と報道されました。
 大輔さんは「扉を閉めろ」という指令を出していません。それでもサブシステム上の問題による事故であると「大本営発表」され続けたのには理由があります。
 「悪の葉っぱに斧を向ける人は千人いても、根っこに斧を向ける人はひとりしかいない H・D・サロー」という警句のように、ジェットコースターの運行システムを熟知していた私も2008年年の瀬の毎日新聞報道まで、サブシステムが主原因であるという報道を信じてしまっていました。上記の通り「悪の根っこ」は国です。以下に記した国の安全に対する考え方をお読みください。国がメインシステムでなくサブシステムが事故の主原因であると誘導する理由がご理解いただけると思います。

運輸技術審議会諮問第23 号「今後の鉄道技術行政のあり方について」平成10 年11 月13 日
https://www.rail-e.or.jp/library_archive/19981113

●すべての人や物に及ぼし得る危険を、技術的実現性や経済性を踏まえ、可能な限り小さくすることを目標とする。
● 鉄道事業者が安全を確保すべき対象は、利用者等の通常予見される行動形態を前提とする。

 つまり、国は安全性と経済性が軽重なしの同列で考えているのです。2005年(平成17年)4月には107人の死傷者を出したJR福知山線脱線事故が起きました。出来事も事故も思想から生まれます。昨年起きた新幹線の事故や事件も、シティハイツ竹芝の事故後に起きたエレベータ事故などの多くの事故も、国の競争力の弱い企業を保護する「護送船団方式」の考え方から生み出されたのです。役人や議員が責任を取りたくない、この国が諸問題により停滞している最大の理由が上記した国の安全に対する「技術行政のありかた」であることをご理解頂けたことと思います。
 ここで2009年2月の第一回口頭弁論までの経過を簡単に記しておきます。
2006年6月の事故後、「当局(それは薬害エイズ事件同様に国)」は、事故の主原因がサブシステムである論を展開した。2007年3月に静岡のシンドラー社工場で再現実験を行った。2008年9月、国土交通省は9月まで事故機の調査を要請しなかったが、同年10月に社会資本整備審議会による事故機の調査は可能となった。同年12月1日に、質問主意書が長妻昭議員から提出され、同月9日に答弁書が発行された。19日(金)に毎日報道が「電磁コイルにショート」記事を掲載した。そして翌年の2009年2月に第一回の口頭弁論が行われた。
 質問主意書や答弁書の内容はご存じであると勘案されますが、私が最も注目した答弁書の一部を記させて頂きます。
質問4-7と8
海外の状況は 二重ブレーキで防げたのか なぜ設置しなかったのか
回答
米国では戸開走行保護装置設置規定が、欧州では二重ブレーキ設置規定が設けられている
防げたのかには、現時点では答えられない (なぜ設置しなかったのかという質問には無回答)

 まるで被告が黙秘権を行使したような内容です。その後、事故から8年後の2014年5月30日に週刊朝日が「現在も刑事裁判が続いている」と報道しましたが、この記事にも看過できない内容が含まれます。

シンドラー社の社員談
「海外の製品には設置されている『KBスイッチ』という信頼度の高い安全装置が日本のものにはつけられていなかった」

「日本のものにはつけられていなかった」という言葉に対して二つの解釈ができます。一つ目は「つけたくても(基準外で認可されず)つけられなかった」ということであり、もう一つは「つけることにより(保守点検が複雑化し)競争力を失う」という解釈です。シンドラー社はエレベータ業界で世界第二位のシェアを持つ企業です。この言葉が意味することは「日本では(車検のような)製品検査に通らない安全基準のエレベータ走行システムが100%であり、日本での競争力を高めるためには(運輸審議会の答申通り)安全を保障するフェールセーフシステムでない、つまり、海外では生産されることのない、サブシステムにトラブルが発生してもメインシステムが停止しない製品をつくるしかない」ということを意味するのです。
 長くなりました。市川様ご家族が希望を抱いて新年を迎えられることの一助になればと思いここまで記してきました。今後、事故再発防止基金を基に、薬害エイズ事件同様に国相手に未必の故意による殺人事件として訴訟を起こせば、菅直人元首相や東京工業大学出身者などの協力を得て裁判に勝訴するに至ると私は確信します。
 世界一の安全性を誇る東京ディズニーランドを運営する㈱オリエンタルランドで安全管理を学んだ社員や、私のような元社員の知識を結集することも可能であり、平成が終わる前にシンドラー社エレベータ事故の真相をメディアを通して明らかにしていきたいと決意しております。
 最後になりますが、考えられている今後の事故再発防止活動の概要メモと、担当される弁護士のご連絡先(中村弁護士の連絡先は承知していますが念のために)を、ファクスなどでお知らせ下さいますよう願い申し上げます。
<終了>


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