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ホンカクテキコンカツ

題名を「本格的婚活」にしてみた。カタカナで書くと「カクテキ」と「カツ」が入っていて、なんだか美味しそうである。

それはそうと、本格的に結婚に向けて活動を始めた。
あれは5月の連休のいつだったか、Instagramのストーリーを見ていると現れる39歳独身男性にカスタマイズされた広告のひとつに、ワンクリックで複数の結婚相談所のパンフレットをお取り寄せできます的なものがあり、どういうわけかそれをクリックしてしまっていた。まぁ、割とそういう広告には弱いのだが、それにしても、いつもだったら個人情報を入力する辺りで我に返って、「いや自分には推しがいるから大丈夫」と推しのいる人生に復帰するところなのだが、おそらくは連休中に全然予定がなかったせいで、恋人はおろか臆せずに連絡を取れるような友人すら今の自分にいないのだという事実を眼前に突きつけられ、焦り、ついにそのまま申し込んでしまったのだ。
ほどなくして、パンフレットがやってくることはなく、メールが送られてきたり、直接電話が来たりして、あれよあれよという間に3社ほど説明会の予定が決まっていた。

「推し」という謎な言葉が流行り出して、どのくらい経ったのだろうか、まだなんとなく、通じる人と通じない人がいる気がするわけだが、要するに、自分には他人に薦めたくなるぐらい好きな芸能人がいるわけである。しかし、「推しがいるんです」と言うと、どうもアイドル的な印象が強いらしく、少なからず、「地下アイドルか何かが好きなんですか?」みたいなレスポンスを貰う。なるほど、一般的に考えてみればそう思うよな、と思いつつ、「シンガーソングライターの吉澤嘉代子さんという方なんですけど…」と答えたりしていた。誰との会話を思い出しているのか、会社の人だったか、マッチングアプリで出会った人だったか、そんなことはともかく、自分には「推し」がいる。愛おしい人がいる。ずっと応援していたい人がいる。腹の底から湧いてくるこういう感情があることは実に幸運であると思っている。しかし、その愛情は一方的である。加えて、自分の場合、その愛情は特定の人に対する愛情というよりも、その人の持つ才能、もしくは、音楽やエンターテインメント自体に対する愛情のようなもののよう気がしている。まぁ、そういう愛情だから、おそらくはとても健全なのである。だから、恋愛や結婚は自分にとって不要なものとは言えない。ていうか、恋愛結婚したいという願望はやっぱり密やかに存在していた。

「お見合いで出会っても恋愛結婚できますよね」と相談所の人に言われて、そう言われる前からそう思っている自分がいた。それに気付いたら、本当はもっと早く来るべきところだったかもしれないと思うようになっていた。もちろん世の中の多くの人は、自然に出会って惹かれ合って結婚しているし、そういう運命の出会いにサービスを利用したりお金を掛けるのは損だし、不自然な話な気もする。あらゆるエンタメや恋愛ドラマによって、そういう概念を我々は植え付けられてきた気がする。でも、きっと出会いなんてどんな風だって構わないのだ。
それで、そんな話とは全然関係ないが、その相談所の人が営業上手なものだから、なんやかんやでその日のうちに入会してしまった。まぁ、それでよかったんだと思っている。

さて、現時点の7月中旬までに、自分は7名の女性とお見合いをした。まず、このお見合いというものが、相談所で婚活をしたことのない人にとっては、未知のものだろうから、少し説明しよう。テレビドラマで観るようなお見合いとの違いを説明するのが分かりやすいと思うが、まず、会場は料亭だったり、広いお庭があるようなところのイメージだと思うが、自分の場合は、そういうところではない。相談所の手配してくれたホテルのラウンジと呼ばれる喫茶スペースのようなところで行われる。また、ご両家の両親や親類、仲人、相談所の人はお見合いの場には同席しない。多くの場合、ラウンジに予約された席で待ち合わせで、二人だけで会う。そして、1時間ほど自己紹介や世間話など、お喋りをして、その時は返事をせずに別れる。返事は相談所のアプリを使って伝える。では、そもそもお見合い自体がどうやって発生するかというと、これまたアプリを使用し、双方、たくさんのプロフィールの中から、ステキだと思った人にお見合いの申し込みをして、受け入れられたらお見合いをするという流れである。

アプリ、アプリと書くと、まるでマッチングアプリと同じみたいに思われそうだが、そんなことはない。何が違うかと言われると難しいが、一番の違いは登録している人のやる気、、、いや、そのビジネスに関わる人々のやる気かもしれない。特に、プロフィールの写真。会社の先輩に相談所に入ったことを話して、その写真を見せたら「奇跡の1枚」と言われ、そこまで言うかと思ったけど、改めて見て、鏡の中の自分の姿を見ると、たしかに、かなり奇跡的にいい男に写っている。
写真は1枚で1万4千円だったと思う。もちろん高いなぁと思うわけだが、今考えるとすごいプロ技術だし、その価値に見合った値段な気がしている。相談所指定の写真館で撮影したのだが、担当してくれたメークさん(男性)は、やはりプロな感じだった。ものの数秒で昔から友達だったかのような関係性を築き、「結婚っていいよ!」という話を全力でされたり、「カッコいい!」とか「いい顔してる!」とか、めちゃくちゃ褒めてくれたり、最後には「大丈夫!絶対うまくいく!」と励ましてくれたりで、なんだかメークよりもトークの時間が長いような状況に少し困惑していたら、次にそのままメークさんに撮影ルームに案内され、カメラさん(女性)を紹介された。そして、カメラさん+メークさんの2名体制で撮影がスタート。メークさんから自分の情報がその場でカメラさんに伝えられて、再度二人掛かりで褒めちぎられ、テンションアゲアゲで撮影は行われた。自分はカメラさんに言われるままの態勢を必死にキープしながら、試行錯誤して表情をつくるという慣れない作業に最後は精魂尽き果てたものの、たくさん撮影された中に奇跡の1枚があった。これぞプロの成せる技な気がした。

奇跡の1枚のおかげなのかは分からないが、結構な人数の女性からお見合いの申し込みが来た。マッチングアプリではこんなことはなかった。普通の写真しか投稿していなかったからかもしれない。これまでお見合いをした7名は申し込みが来た女性の中で自分がステキだなと思ってOKした女性である。こんなことを書くとまるでモテてるように勘違いしてしまうが、更にお見合いを経て、双方OKとなった人は7名中4名。ここではじめて、相手のフルネームがわかり、所謂、お知り合いの関係になる。お知り合いなのだから、何人いてもいいことになっている。お食事やデートに誘ったりして、お互いの事を知っていく。もちろん現代必須のコミュニケーションツールであるLINEのやりとりもしている。4名のうち1名は、だいぶ忙しそうな女性で全然返事が来なくなったなぁと思ったら、相談所から交際終了の連絡が来た。あと3名は、まだこれからな感じである。次の投稿で「うまくいってるよ!」「結婚するよ!」話が書けるように頑張りたいと思う。

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