今週の日経ビジネス(6/22)
今週号で気になったのは、オンライン学習教材を手掛ける「すららネット」の記事だ。
「すららネット」は元々、個別指導学習塾の社内提案から生まれたeラーニング教材で、2005年に新事業として立ち上げられたあと、2年に渡る開発期間を経て正式に2007年に中学生向けの教材として発売された。
なぜこの新事業に着目したのかというと、個別指導学習塾では主に大学生が講師を務めるため、指導内容にバラツキがあることが問題だった。
これを解決するためには授業回数を増やす必要があるのだが、それだと集団学習塾に比べてコストがかなり割高になってしまう。
そこでeラーニングの手法を取り入れることができれば、指導内容を統一することができ、さらに何回でも受講できるようにすればコスト面の問題もクリアできるのではないかと考え、立ち上げたという経緯だ。
だが、単純に講師の授業動画を配信しただけでは理解度が思うように上がってこないことはわかっていたので、立ち上げ当初からアニメーションを使った授業を取り入れることで生徒の理解度を高める手法を模索した。
ここに双方向授業の概念を取り入れ、生徒が理解しているかどうかを把握するための質問を投げることで理解度を把握し、次の授業内容をレベルに応じて変更するような仕組みとした。
この思想をシステムに反映させるのに時間がかかってしまって2年間という時間を費やしたわけだ。
いいものはできたものの、利用者の方は思ったように伸びず、開始当初は赤字が続いたそうだ。
そんな中で個別指導学習塾の経営状況が悪化し、社長の湯野川が消滅する前にMBO(経営陣による買収)を行って独立した会社が「すららネット」というわけだ。
独立後は順調に会員数を伸ばし、2013年の12月には会員数が約3万人に到達して黒字化した。
その後は中学生だけでなく、小学生・高校生にも範囲を広げ、今では7万人の会員規模を誇る。
さらに今回のコロナ禍による影響もあり、会員数は右肩上がりの状況だ。
これからの時代は間違いなくeラーニング中心の学習が基本になるだろうし、公立学校も本格的に通信教育を主とした授業形態に切り替わっていくだろう。
そんな中でどの媒体が主導権を握るのか、まさしく通信教育の現場では戦国時代を迎えている。
学校の現場でもそうだし、放課後のプラスαの学習においてもこれまでは塾か家庭教師しか選択肢がなかったところにeラーニングが急速に普及してきた。
「すららネット」は内容の評判が高いので、これからも要注目のeラーニングだとは思うが、小学生の低学年ではランニングコストが高すぎるので、本命は小学生の高学年から中学生あたりになってくると見ている。
eラーニングはノウハウがかなり重要視されるジャンルだけに新規参入が難しいと言われているが、各社の今後の動向に注目していきたいと思う。
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