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ラストマイル、感想、速記。

ラストマイルを見た。
久しぶりに映画を映画館で見た。
映画館で映画を見たのは『ルックバック』を見に行った以来である。

映画を見て考えたこと、思ったことを残しておこうと思う。

1.爆発シーンの音にびっくり。

この映画の中では、爆発シーンが度々登場する。
映画館は音質がいいものだから、爆発音が若干トラウマだった。
爆発しそう、と前振りがあるたびに少しだけ耳を塞いでいた。
シーンが切り替わるたび、「爆発しないでくれ…」と思いながら見ていた。
爆発後のシーンもリアルで、凄く怖くなった。

2.アンナチュラル、MIU404の面々。

この映画の中で、かなり楽しみにしていたこの絡み。
星野源さんは「あまり期待しないで(思ったより出てない、とかでショックを受けないように多分配慮してくれてた)」と言っていたけど思ったより登場して結構嬉しかった。
MIU404の伊吹や志摩はもちろん、ドラマの中で重要な役割を演じていた人たちが成長してたりして、まるで親のような目線で見れて楽しかった。
アンナチュラルのUDIラボの面々が事件解決の鍵をだいぶ握っていて、そこから謎が解けていくところが良かった。
何よりも、テレビでしか見れなかった人たちを映画館の大きなスクリーンで見ることができただけでも、嬉しかった。

3.普段利用している宅配サービスについて。

爆発物が届く、しかもそれは普段私たちが利用するような方法で。
もう、その設定からして恐ろしいが、有り得なくもない話である。
日常の中にそっと事件性のあるものを滑り込ませるのがめちゃくちゃうまいなと本当に思った。
普段、自分も当たり前のように宅配サービスを利用している身でありながら配送業者や企業、下請けの業者の実態はあまりよく知らなかった。
知っていたこととすれば、マーケティングの講義で習ったAmazonの実態くらいだった。
安い、早い。
でもそれは、様々な犠牲の中で成り立っているということ。
映画の中で出てきたDAILY FASTの状況と同じである。
実際に目にすることはほとんどないけれど、自分の知らないところでこんな世界が広がっているんだと身にしみた。

4. 2.7m /s→0、70kgの意味

まさか、中村倫也さんが出てくるとは。かなり重要な役だったし。
ロッカーに書かれた2.7m /s→0、70kgの意味。
2.7m /sはベルトコンベアーの速度。
70kgは成人男性の平均体重、またはベルトコンベアーの重量制限の値らしい。
山﨑さんが飛び込んだ理由は、それまで何となくしか分からなかったのに、この文字の謎が解けて鳥肌が立った。
山﨑さんは、一人でもこの状況を変えようとした。
自分がベルトコンベアー上に飛び込んで、狂ったこのシステムを止めようとした。
でも、山﨑さんが飛び降りた後無常にもベルトコンベアは稼働し始めた。
一時的に止めることが出来たものの、また再開したために「自分一人では、何も変わらなかった」と思ったのだろうか。
意識が朦朧とする中でベルトコンベアーを見つめる山﨑さんの表情はどうしても忘れられない。
六郎くんが聞いた山﨑さんの「馬鹿なことをした」という言葉にいろんな気持ちが入り混じっていたのだろうかと思うといたたまれなくなった。

5.「何もしなかった。」

一番響いたというか、残っている言葉。
エレナが、五十嵐さんにぽろっと言った言葉である。
山﨑さんが飛び込んだブラックフライデーの前日の話になり、「俺に何が出来たっていうんだよ」と言う五十嵐さんに対して「何も出来なかった、何もしなかった」とエレナが言ったシーンがかなり印象に残った。
山﨑さんが飛び込む前に、何かサインがあったかもしれない。
何か出来たかもしれない。
でも、気づかないふりをして何もしなかった。
出来なかった、といえば何か理由があって「出来なかった」と言う理解になる気がするが「しなかった」という言葉には起きていることに対して無関心だったというニュアンスが含まれているような気がした。

このシーンを経るまで、というかこのシーンよりも前では、この二人が黒幕のような気持ちで見ていたがこのシーンで一気にその印象が変わった。
二人も、この巨大な組織構造の犠牲者であり、
知らないうちに加害者側にまわっていたという理解になった。
何か物事を見るときに、一面だけではなく環境などいろんな背景を見ないと本当のことは分からないものだなと思った。

6.繋がれた人々と、繋がれなかった人々。

繋がれた人々、に関して。
ラストの親子のプレゼントに入っていた爆弾を洗濯機の中に投げ込んで被害を食い止めたシーン。
被害を食い止められたのは、佐野親子(父)がお客さんのことをしっかり覚えていたからである。
普段からコミュニケーションをとっていたり、
お客さんのことをよく見ていなければ気づけなかったはずである。
お客さんとコミュニケーションを通じて「繋がっていた」から、一大事にならずに済んだ。
また、配送業者のDAILY FASTに対する抗議も、エレナを中心として様々な人々と本当の意味で「繋がれた」から大規模なストライキを起こすことができた。
山﨑さんが「変えられなかった」という状況を少しでも変えることができたのである。

一方で、繋がれなかった人々。
山﨑さん、エレナ、山﨑さんの恋人(事件の犯人)。
みんなどこか闇を抱えていて、壊れるまで働いたりどこか虐げられるような立場にいた。
みんな思っていることや、置かれている環境は
異なっていたけれど、「辛い、この状況をなんとか変えたい」という気持ちで共通点はあったように思えた。
山﨑さんも、山﨑さんの配偶者も、エレナも一人で思い悩み、それぞれの思いを一人で抱え込んだ。
山﨑さんは飛び込んで植物状態になり、配偶者は爆発によって自殺した。
思いを抱え込んだことで良くない結果を産んだ。
エレナは、自死こそしていないが、体を壊して休職していたりギリギリの精神状態に追い込まれることになった。
状況によっては、三人は「繋がれた」可能性がある。
繋がることで、全て解決するなんてことはあり得ないがこのような結果になる前になんとかできたのかもしれない、と思ったりもする。
でも、これはきっと可能世界論に過ぎない。
心の中では、どこか三人が繋がっていてくれたらなと思った。

印象に残ったシーンや言葉を踏まえつつ、書いていたらかなり長くなった。
考えさせられることがとても多く、しばらく自分の中で後を引く映画だなと思った。
内容自体はフィクションだけど、実際に起こっている問題はノンフィクションである。
今回はとにかくストーリーを追いかけたり人物を把握したりするのに必死だったからもう一回見たらもう少し感想が深まる気がする。もう一回見たい。

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