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灯油ランプの修理━━特明二三七五歯車

銅合金と鉄との異種金属腐食で、鉄製の軸受けが腐食崩壊している。

$${\large\bf異種金属接触腐食\newlineによる故障}$$

巻き芯バーナーに使われている歯車は、
明治二十七年に製造機の特許が取得されていた。

異種金属接触による腐食問題が産業界で認識されるのが昭和三十年代以降。それまでは異なる金属同士の接触による腐食については、あまり意識されていなかった。

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灯油ランプの修理━━特明二三七五歯車

五十年以上納屋で保管されていた壊れた灯油ランプ。灯芯を上下させる歯車が錆びており完全に固まっている。原因は、灯芯がセットされたまま五十年以上放置されていたこと。おそらく、水が混ざった灯油から水分を吸収した灯芯が電解液のような腐食環境を醸して、鉄と銅合金の異なる金属が接触している歯車部分の鉄製部品の腐食を促進した。鉄製の部品が腐食崩壊したことで、動力伝達の機械要素が失われ灯芯ダイヤルが不可動となっている。

灯油は非導電性の液体なので、歯車部分に異種金属が使われていても、通常の使用環境では問題は起きない。しかし、水分を吸水した灯芯により水湿潤な環境に置かれると異種金属接触腐食が起こる。古い灯油ランプが故障している場合、異種金属接触腐食が原因となっているケースが大半を占める。

やまと

灯油ランプの修理━━特明二三七五歯車



診断の記録。


1/4. 診断の記録

GIF動画『歯車の状態』
ハンダ付けは事前に外してます。

2/4. 診断の記録

灯芯を出し入れするダイヤル(つまみ)が不可動となっている。

3/4. 診断の記録

灯芯を動かすための歯車に赤錆が固着している。

4/4. 診断の記録

歯車の鉄製軸受けが錆びて崩壊している。
鉄製の軸受け以外に損傷はみられない。
軸受けの交換で回復が可能である。



作業の記録。


1/9. 作業の記録

慎重にハンダを緩めてカバーを外す。
火屋受けの留め具に鉄線が使われているが錆は少ない。
歯車周辺部は灯芯により腐食環境が醸され鉄製の軸受け金具が腐食崩壊している。

2/9. 作業の記録

鉄の赤錆を慎重に突き崩し取る。
軸受を接着していた半田跡は洗浄後にキレイにする。
真鍮製の部材に不具合は無い。

3/9. 作業の記録

固着した灯芯の残骸を湯煎して取り除く。
重曹を溶かした水溶液が透明になるまで繰り返す。
一時間に一回のペースで水溶液を交換した。
十二回繰り返し作業が完了した。

4/9. 作業の記録

固着した鉄錆を分解する為に、ネジザウルスリキッドの希釈液に浸す。
温度は摂氏六十度程度を保ち、濃度は効果を確認しながら調整した。
二時間ごとに水溶液を新しく三回交換した。
開始から約六時間後に鉄錆の分解除去が完了した。

5/9. 作業の記録

母材やハンダが痩せずに錆だけが取れた。
今回、初めてネジザウルスリキッドを使用したが、時間はかかるが希釈して使うのが吉であった。
ハンダで接着されている鉄片は、焼き鏝とキサゲ刃物を使いキレイに削ぎ取った。

6/9. 作業の記録

駆動軸の銅製支持金具

7/9. 作業の記録

従動軸の銅製支持金具

8/9. 作業の記録

銅製の軸受けを付け直して、動作を確認してから、カバーを付け直す。

9/9. 作業の記録

点消確認。問題なし。

以上。