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密着マルチ(24.3.13更新)

他文献で補完できる内容・単語については説明を省略した。{4.実践編}の更新後に説明用のページも公開する

0.このページの目的

ネットや書籍の情報は誤解を招くものが多く、筆者本人も理解が伴っていない場合がある。この現状を改善するため当ページでは密着マルチの定義を明らかにし、根本から密着マルチを理解してもらうことを目的とする

1.定義

撮影台の画板を用いて、動画とは別に独立した複数の静止画素材を異なる速度でスライドさせる技法のこと

2.定理(定義によって定まる特徴)

・画板上の素材は上からガラスで押さえ込まれるため素材同士は密着した状態になる

・画板上の素材とカメラの距離が全て等しくなるためピントの影響は画板上にある素材なら全て等しくなる(必ずしも全ての素材にピントが合う必要はない。また、素材によってピントに違いを出す演出はマルチプレーンを用いる必要がある)

・画板上の素材は全て密着した状態であるため特定の素材のみ拡大縮小が発生することはない(画面全体を拡大縮小させることは可能。特定の素材を拡大縮小させるにはオプチカル合成を用いる必要がある)

・画板の可動制限のため4〜6つの素材をスライドさせるのが限界。Lタップに固定された素材を除くと各素材は特定のベクトルにしか動かない(画板の構造から分かるように異なる素材を同時に別のベクトル方向へとスライドさせることも可能ではあるが、撮影が複雑になるため避けられる)

3.具体例と注意

おもひでぽろぽろ
1.5°の傾斜はあるが画面全体は同じベクトル方向にスライド
スライド素材が5つのため大型画板での撮影の可能性が高い

注意1)密着マルチとは撮影処理そのものを指す言葉であり結果として映像の運動視差を再現するとは限らない

注意2)実写のカメラワークと撮影台のカメラワーク・映像処理を混同してはならない

4.混同されやすい技法


1) オプチカル合成(光学合成)

AKIRA
セルと独立して背景がT.B

2) デジタルコンポジット(デジタル合成)

神撃のバハムート
各素材が独立してT.U。ベクトルも定まっていない
素材の複雑さからオプチカル合成でも無理であろう
(Youtubeで確認すると分かりやすい)

いずれも密着マルチでは表現できない

5.曖昧な定義

密着マルチの定義を明確に述べた文献が見つからないことは、アニメーション制作現場の気質に起因するものと考えられる

作品完成が最終の目標であり、その間の意思伝達に問題がなければ明確な定義はいらない。「マルチスライド」「多重引き」で十分であろう

「0.25ミリ→」のように速度ベクトルを決定することの方が重要であり、密着マルチという言葉は「運動視差のあるカット」といった認識で構わなかったのかもしれない

ただ、この曖昧さが素人やデジタル世代に誤解を生んだのも事実である。制作工程が異なるにも関わらず混同されやすい技法との区別を最優先するため1.の定義は下図のように必要条件の形をとった。故に1.の定義を満たしても密着マルチとは言わない場合がある。その基準を{6.実践例}で見ていく

円の大きさは適当

6.実践例

後日更新

7.参考文献

可能な限り正確な情報を提供するよう努めてはいるが、本ページは素人の独自解釈であり正確性は保証できない

以下の文献も参考にしながら読者自身で理解を深めて欲しい


その他の箇所にはリンクを貼り参考文献を提示する

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