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全てのエディを手に入れろ!

■新天地でのエディ


1988年の春に田舎の町を出て、奈良市街のほぼど真ん中にあたるような所で一人暮らしを始めました。
名古屋に比較すれば全然でしたが、本当に真の田舎者にとっては十分便利な環境になりました。
大阪や京都の繁華街に出るのに1時間かかりませんでしたし、ロックの音源や雑誌を物色するのには十分なお店がありました。
今でもよく覚えているのが、その奈良の本屋さんで最初に手に取った雑誌がBURRN!誌だったことです。いまでも日本のHR/HM専門誌として毎月定期出版されている歴史ある音楽誌です。いつも最初にチェックしていたのが新しくリリースされるアルバムのレビューでした。

そこにアイアンメイデンの7枚目のアルバム「Seventh son of a seventh son(邦題:第7の予言)」でした。
点数こそ100点満点中、80点台後半から90点台の前半くらいの点数で悪い点数ではなかったのですが、レビュー文が「まんねりのフレーズ」「シンセサイザーがいまいち効果的でない」「コンセプトアルバムとしてもつまらない」といったようなニュアンスが感じられるあまり好意的な評価ではなかった記憶があります。「点数はいいのに何でこんな辛辣なコメントなんだろう?」と疑問に思いました。

そして、その本屋の2階にあったレコード・CDショップで「Seventh son of a seventh son(邦題:第7の予言)」のCDを手に取ってみたんです。

CDのジャケット、そこにはやっぱりエディが描かれていたのですが....
そこには、あのヤバい殺し屋ゾンビも壮大な古代の王も近未来のヒーローもおらず、
精神世界のような風景の中、上半身のみのエディがフワーッとした感じでフワーッと浮かんでいるという、ビミョーな様子が描かれていたのでした。初めて手にしたCDサイズのエディはヤバさも美しさも緻密なカッコよさもなかったのが正直な感想でした。
そのCDサイズのアートワークのビミョーさと雑誌のレビュー評の辛辣さと、何より、CD再生機器を持ってなかったことと、始めたばかりの一人暮らしに必要なお金の心細さで「Seventh son of a seventh son(邦題:第7の予言)」を買いませんでした。

前年の名古屋市公会堂であんなに熱い思いをしたのにもかかわらずです。
そして、その翌年1989年にはこのシーズンの第2回目#72でお話ししたハタケナカ事件が起きるので、ますます私のこころはエディ・ザ・ヘッドとアイアンメイデンから離れていったのです。勝手にエディのキャラクター性、アイアンメイデンの音楽、そしてヘヴィ・メタルというジャンル自体がしぼんでしまったかのような感覚がありました。

その頃、カフェバーみたいなところでバイトをしてたことがあるのですが、そのお店はBGMに有線放送を入れていました。現在は有線放送といってもピンと来ない人の方がおおいでしょうね。そのBGMの洋楽チャンネル、ハードロック、ヘヴィメタル系でかかるのはガンズ・アンド・ローゼズ、一択のような感じでした。あとボンジョビとかエアロスミスくらいだったかな。
表現が難しいですが、何となくエディのようなものが古いもののようになってしまった雰囲気もありました。

■最初の10年


そして、過去のものとして総括するようなもの、過去にリリースされたシングル盤を全てCDにしてBOXセットでリリースするという、『The First Ten Years』というBOXセットがリリースされたのです。その名のごとく、1980年から1989年までの10年間の間にリリースされたシングルを網羅したものでした。
私も大学3年生になっていましたし、教育実習やら、その先の就職やらがあって、学生時代というか、未成年時代というか、そういうものとも一区切りする時期に重なったからかもしれませんが、過去の想い出みたいな感情が沸きました。1987年のライブからたった3年しか経ってないのにもかかわらずです。

まぁ、そんなちょっとノスタルジックな感じになっていたところ、当時、お付き合いしていた彼女が、HR/HMに理解があって、良く一緒に聴いたりしたものでしたから、もちろんエディのこともアイアン・メイデンのことも知っていたので、誕生日だったか、クリスマスだったか忘れたのですが、このBOXセットをプレゼントしてくれたんです。
嬉しかったですねーそしてたった3年しかたってないのに懐かしいという感覚がありました。
でも、懐かしいと思いながら、そのシングル盤のCDのジャケットのエディ、このころのシングルのジャケットもデレッグ・リッグスのアートワークのエディなんですが、これ雑誌の中では見たことはあるものの、こう手にとってまじまじとみるのは初めてのものばかりで、シングルのA面にあたる曲はアルバムからカットされているものなので大概は聴いたことがあるのいですが、B面にあたるカップリング曲は別のバンドのカバー曲だったりライブ音源だったりしたので、それを聴いてシングル用のエディのアートワークを観るのが楽しかったですね。

先ほど、大概は聴いたことがあったと言いましたが、そこには「Seventh son of a seventh son(邦題:第7の予言)」からカットされたものもあって、この曲とジャケットは聴いたことも見たこともこともなかったわけです。
このジャケットのエディはまたちょっと異様で、かなり気になりました。
上半身どころか、頭部だけになり、その頭を拳で突き抜かれるまではなんとかエディの形をとどめていたのですが、その次には幽霊のようになり、しまいには顔が4つ、舌も4つの4面の化け物ともつかない何かになってもうヤバくも荘厳な美しさもヒーローのようなカッコよさもなく全くの理解不能なものになっていたのです。

■全てのエディ


その時点で唯一聴いていなかったアイアン・メイデンのアルバム「Seventh son of a seventh son(邦題:第7の予言)」をレンタルで聴いてみることにしました。最初に気づいたのはCDの上半身のみのエディというのはほんの一部で、そのエディから魂が抜けて飛んだような『霊体』のエディが描かれたジャケットでした。いわばい1/4の部分だけだったのです。『霊体』部分を含めた半分がジャケットの表面になっていたらまた印象が違ったと思うのですが、残念ながらCDサイズに合わせると1/4にするしかなあったのかもしれません。全体でみるとパワースレイブのような美しいアートワークになっています。
そしてこの第7の予言はアイアンメイデン初のコンセプトアルバムでした。
壮大な雰囲気とキーボードの導入によるそれまでとは全く異なる音の表現はヘヴィ・メタルの枠にとらわれない新しいアイアンメイデンの音でした。どこにもマンネリ感などありませんでしたし、英語の言語がわからなくとも楽曲と全体の構成からドラマが感じられ、何度聴いても飽きない音でした。
アイアンメイデンのファーストアルバムとこの第7の予言は今でも通してよく聴くくらい好きなアルバムです。
あのBURRN!誌のいレビューはなんだったんだ?!と思いました。
音楽誌の評論が信じられなくなるきっかけの出来事となりました。

まぁ、そんなこともありましたが、とにかくこのBOXセットを手に入れたことで、エディのほとんどパターンをみることができたという思い出深いBOXセットです。

そして、そのBOXセットの発売を記念して作られたTシャツです。
これはBOXセットに付いていたものではなく、後になって手に入れたものです。
どうやら、このBOXセットもTシャツもいまでは高額になってしまっているようです。
持ってて良かった(笑)


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