2021年、霧の中で僕に振り向いた牛
■ ピンク・フロイドを好きになったきっかけ?
「おう、Tシャツ屋か」
最近よくお邪魔するロック・BARのマスターにそう呼ばれるのが嫌いじゃない。
ロックバーって言ってもこの時勢のおかげでお酒を出してもらったことはないし、僕はと言えば、まだ一枚もTシャツを売ってはいないのだけれど...
さて、そのロックバーのマスターと最初にお話しした時、「何が好きなの?」と聞かれたので、「ピンク・フロイドとクイーン」と答えた。
「ピンクフロイドか、きっかけは?」
きっかけ?きっかけか....確かにきっかけと言われると他に好きなバンド、クイーンやローゼズのようなハッキリとした出会いの思い出がなく、いつ頃から聴いたのか、最初に何を聴いたのかすらハッキリしない。思い出そうとしてもまるで頭の中に霧がかかったようだ。
定期的に読んでいた音楽雑誌のビルボードチャートにずーっとチャートインしている”Dark Side Of The Moon"とピンク・フロイド、もちろんそれはロックを聴くものが必ず通らないといけない通過儀礼のようなものだ(だった)のだ。
”Dark Side Of The Moon"を購入した人のどれくらいが愛聴したのかしているのかはどうなんだろう?と思ったりすることも。
ただ、僕はその先、もっとピンク・フロイドを知りたい、聴きたいと思ったのだ。
さかのぼって掘っていくと、馴染みのある『吹けよ風、呼べよ嵐』にあたってドキドキしたり、そしてあの有名な牛、ルルベル三世のジャケット”Atom Heart Mother"にもあたったのだった。
■牛のジャケット
このアルバムは特に日本での人気が高いと聞いています。
アルバムに掛けられた帯の「ピンク・フロイドの道はプログレッシブの道なり」という石坂啓一さんのキャッチコピーやインパクトのあるジャケットもあってのことだったと思います。
その有名なジャケットがこちら。
そして、やはりこのジャケットが有名になったということで、ルルベル三世をプリントしたTシャツも数々あります。僕も90年代の末に購入したピンクのルルベルです。とっても安かったので購入して長く愛用していたのでボロボロですが、捨てられずにいました。
それで、自分でも手刷りで二枚だけ作ってみましたってのがこちらです。こっちのピンクのどぎつい配色でなく、元々の牧歌的な中に不気味なジャケットの牧歌的な部分だけを取り出した感じにしたくて、薄い黄色と色が抜けたようなセピア色のプリントにしてみました。バックは”Atom Heart Mother"に収録されたアランのサイケデリック・ブレックファーストという曲をプリントしていますが、この曲は曲というより、お皿やフォークやグラスの音が飛び交う実験的で前衛的なモノで、まさにプログレッシブロックのイメージを拡大したような曲です。
プログレッシブロックの定義というのは難しいですが、一つは超絶なテクニック、一つは難解なコンセプト、一つにはギター、ベース、ドラム、キーボードといったロックのフォーマット外のサウンド・エフェクトがあると思います。
ピンク・フロイドがプログレの道であるのはコンセプトやSEが多くの人に気持ちよく、カッコよく聴こえるように示している所だと思うのです。
その効果音のみの曲。ピンク・フロイドらしいと思ってプリントしました。
さっき言ったように二枚だけ手刷りをして、一枚は友人の誕生日にプレゼントして、こちら残りの一枚というわけです。
■伝説の箱根アフロディーテ
伊藤セーソクさんが日本のロック・フェス、箱根アフロディーテに出演した時のピンク・フロイドについて語っていたことを思い出しました。
前日まで大雨、当日はなんとかコンサートは何とか無事開催の運びになったらしいのですが、箱根の山から霧が降りてきて会場は幻想的な自然の演出に包まれていたということです。そしてピンク・フロイドのあの音楽がその霧の中かから浮かび上がるように鳴り聴こえて来て、やがて霧の中から浮かび上がるピンク・フロイドのメンバーの姿はまさに伝説に相応しかったという話でした。
その話を思い出して、僕の頭中の霧がスーッと流れ、その中かから、あのルルベル三世がヌーッと現れたかと思うと、明らかに不可能な角度からぐーーーっと振り向いたのです。そしてニヤリと笑ったような、それは完全な妄想でした。
■映画とピンク・フロイド
最後に、
ピンク・フロイドと映画は60年代の頃から繋がりがあってというか、やっぱりピンク・フロイドの音楽ってそもそもコンセプトあったり、効果音があったりして映画との相性が良いと思うのですが、そこに目をつけたバルべ・シュローダーというフランス映画の監督が目をつけたというか、コラボレーションの相手として選んだのがピンク・フロイドだったのです。
そこでバルべ・シュローダー監督の作品、『モア』(More 邦題:モア)『ラ・バレ』(Obscured by Clouds 邦題:雲の影)でサウンドトラックを作りました。
そして、2001年宇宙の旅で巨匠の域に入ろうとしていたスタンリー・キューブリックからも声がかかったということですが、ピンク・フロイドはそのオファーを断ります。どんな映画のどんな場面に使われるか、キューブリック側から一切明かされなかったのが理由とか。
その映画は時計仕掛けのオレンジという映画です。映画が始まった冒頭部分のシーン、役者の動きとカットの長さがAtom Heart Mother"の展開にピッタリとシンクロしていて、それを検証している動画がYouTubeにもあります。
実際の映画のシーンで使われた曲もサイケデリックな電子音が映画の雰囲気にあってとても効果的だと思いますが”Atom Heart Mother"バーションは重厚な雰囲気になって時代性を感じさせないシーンになるように感じます。
この時計仕掛けのオレンジという映画も好きだというのは僕のこのスタイルを見てもお分かりいただけたのではないでしょうか。
■おまけの話
2021年の今年は伝説のフェス、箱根アフロディーテから50年といことで、『原子心母』の箱根アフロディーテ50周年記念盤が発売されました。こちらにはピンク・フロイドの初来日の様子やアフロディーテでのライブのリマスター映像が収録されています。
さらに、8月には発売と50周年を記念したイベントが箱根の森美術館で開催されました。こちらのイベント会場では記念のTシャツなんかも販売されるとのことでしたから、是非参加したいと思ったのですが、昨今の事情でイベントは人数が制限され、抽選がありました。
あえなく、落選....
ロジャーも着用した日本の70年代雰囲気満載のTシャツも未入手です。(泣)
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