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story 妖術使い

古来よりその家の者だけが
負うてきた術である

負うと申すのはその術が
死を喰らうためである

父から子へ暗澹と
伝えられていくのは

それが唯一の
生きる術だからである…



死を喰らう者
その髑髏を見てはならぬ

死を喰らうもの
その髑髏に心を許してはならぬ

死を喰らうもの
憑代を持て

いかなる時も
その身を離すな

この世でひとりの
憑代を持て

心を許すな
憑代を持て

この世でひとりの
憑代を持て


私ではいけませんか…

闇の中で瞳が揺れる

その意味を
知っているのか?

憑代になるということは…

覚悟はとうにできております

静かな瞳がこちらを見ている

死線はとうに超えている

そなただけを思うてきたのだ…

私と生きるというのなら

死ぬる覚悟でございます


死を喰らう者
憑代を持て

死を喰らう者
憑代を持て


恐ろしいのは
その死ではなく

死に向かわさんとする
虚である


その髑髏を見てはならぬ
決して心を許してはならぬ

いかなる時も
その身を離すな

この世でひとりの
憑代を持て


ことばはこころ。枝先の葉や花は移り変わってゆくけれど、その幹は空へ向かい、その根は大地に深く伸びてゆく。水が巡り風が吹く。陰と光の中で様々ないのちが共に生き始める。移ろいと安らぎのことばの世界。その記録。