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ほぼ感謝しかない

流行る言い回しというのがある。誰かが言い始めてそれが時代の空気をとらえてみんなが似たようなシーンで言うことが定着していき、しまいには挨拶のように形だけのものになっていく。

当然、時々の人の心は変わって行くわけだから古い言い回しは廃れて、新しい言い回しが生まれるのだけど、どうも流行り物に違和感がでることがある。

最近だと、「感謝しかない」というやつだ。スポーツ選手の引退会見、著名人の離婚、謝罪会見とか何かの節目でインタビューを受けてよく使われる。ネットで調べると、やはり細かいツッコミを入れてる人がたくさんいた。「〜しかない」って、もともと否定的に使う表現なのに云々とか。

個人的には、みんなが同じ表現を使うのがそもそもつまらないじゃないかと思うわけです。日本村の住人ってそういうの好きだからしょうがないけど。

人前で言えるかどうかは別にして、いろいろ感じてることは人によって違うはずなのに、なんで特定のパターンにあっさり自分をはめてしまうのかということ。というわけで、他のバリエーションを考えてみよう。

ほぼ感謝しかない ←リアルすぎるか

割と感謝しかない ←軽いな

おおむね感謝しかない←えらそうだな

感謝以外のものは断じてない←逆に詮索される

しっかりと感謝していく←今はないの?安倍さんっぽい

感謝するほかない←しぶしぶ感

感謝せざるを得ない←意思ではない?

感謝しないわけにはいかない←外圧による?

感謝しないわけじゃない←そんぐらいなら言わんでええ

感謝だけはある←横柄な

・・・むむむ、こうしてみると、「感謝しかない」って、やっぱりみんなが使うだけあって無難だな。いろいろある感情を掻き分けて感謝だけを前面に押し出していき、あたかもそれしか心の中にないかのように思わせる力が半端なくある。言ってる本人にとっても「今は感謝なんだ。それだけに集中しよう。ネガティブなことは全部水に流してときめいてしまおう」というコンマリ的断捨離効果がありそう。

多忙な中、ここまで読んでくれた人には、さしあたり感謝しかない。

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