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『反転するエンドロール』コアメンインタビュー★今井夢子(前編)

映画館に併設されたカフェバー。けれどその中には、壁を隔てて二つの世界が存在する。

“観客”が主要な登場人物を担うという、非常に挑戦的な形態を実現するムケイチョウコクのイマーシブシアター。大好評だった『反転するエンドロール』の再演が決定しました。

「こんなすごい作品を、一体どうやって作ったの
⁉︎

観た人の多くが、口を揃えてそう言うムケイチョウコク作品。
そのクリエイションに、コアメンバーへのインタビューで迫ります。

まず最初は、ムケイチョウコク作品の構成を担当する今井夢子にインタビュー!
前後編の2回に分けてお届けします。

ムケイチョウコク
イマーシブシアターを独自の目線で探求するクリエイションチーム。
2022年、美木マサオ・今井夢子・内山智絵をコアメンバーとして発足し、『OneRoom⇔dramaS―落下する記憶―』『反転するエンドロール』を制作。
発足したばかりのカンパニーにもかかわらず、
熱狂的なファンを多く獲得し、今後を注目されている。

2022年秋の『反転するエンドロール』初演は瞬く間にチケットが完売。
多くの参加者から殺到した要望に応え、2023年春の再演が決定した。
初演と同じ東中野ポレポレ坐にて上演する。
4/30にはWSも開催!『反転エンド』をよりディープに楽しめるとともに、日常に実践できるコミュニケーションのヒントも見つかるかもしれない。

公式サイト
公式Twitter
公式Instagram
LINEオープンチャット「ムケイチョウコク connect」にて 先行限定情報を配信中。

今井夢子インタビュー(前編)

【作りたいもの。変わらないもの】

そら   夢ちゃんは椿組の劇団員でもあり、レビューを作るManhattan96の主宰もしているでしょ?コロナ前にヨーロッパに留学してるときには、スペインのフィジカルシアターカンパニーに入ってツアー公演もしていたし、コロナ禍に帰国してからもすごく意欲的に作品を作り続けていたよね。こうして今ムケイチョウコクでイマーシブシアターを作っているけど、その経緯って夢ちゃんにとってはどんなふうに繋がっているの?
夢子  もともと「レビューを創りたい」っていうところからManhattan96を立ち上げて、それが外注のお仕事に繋がっていったり、留学に踏み切ったりっていう風に繋がっていくんだけど、イマーシブシアターを作ろうってなった直接の要因はコロナだったな。「帰国したらヨーロッパでの経験を生かしてレビューをバリバリ創るぞ!」ってすごい意気込んでたのに、コロナが始まってそれが叶わなかった。だからその中でもできることをやろうってかなり精力的に活動してたんだけど、不要不急とか外出自粛って中で「劇場に足を運ぶことの意味を考え直さないといけないよね」って話をする機会があって、そこからイマーシブシアターの可能性を考えていって、そんな話を方々でしてくうちにマサオさんに出会って。clubhouseでそんな話、そらちゃんともしてたよね。
そら   うん。マサオさんや智絵さんもいて、ほんと面白かった!でもあの時はさ、私にとっては「イマーシブシアター」と所謂「普通のお芝居」って、《全然違うもの》って意識が強くて、だからその分、ワクワクすることと同じくらい「ハードルが高い」って思ってたの。でも夢ちゃんは、そのあと早速作ってたでしょ。
夢子   ねー!なぜか外注でホテル一棟貸切ってのイマーシブシアター作品の仕事を貰った。
そら   ほんと、引き寄せすごいって思ったもん、あの時(笑)。
夢子   そして予想通りすんごい大変だった(笑)。マサオさんが出てくれたから全力で助けてもらって。それでその後マサオさんと飲んだくれながら、今一度《私たちの考える没入体験》を創りたいよねって話して、智絵さんを巻き込んで軽率にムケチョ発足!(笑)
そら   発足も発足してからも爆速ぶりがすごいね(笑)
夢子   だよね!(笑)ただ、ハードルみたいな話で行くと、椿組の野外劇はさ、ある意味イマーシブじゃんって思うの。
そら   あーーー!うん!花園神社の境内の特設テントって、それだけでもうお祭り感すごいもんね!
夢子   でしょ!テントの中に入った瞬間から、そのお祭りみたいな雰囲気にお客さんがワクワクしていく没入感とか、お客さんは具体的に劇に関わるわけではないんだけど、お客さんの存在からエネルギーを貰って芝居が進んでいく感じが、野外劇ってすごいダイレクトなんだよね。
そら   最前列で観劇したときとか、アクティングスペースに入っちゃってる感じしたもん。砂の上のベンチにあぐら掻いて、前だけじゃなくて真横とか真上見たり、隣のお客さんは缶ビール片手に「うおぉ!」って言ってたり。
夢子   そういう劇団で芝居作りの面白さを教えてもらっていたから、自分でレビュー創るときも、どこか“ほんの少し”参加している感じ”とか“客席と舞台上が分かれすぎないこと”を意識して、例えばマジックのシーンを入れて第4の壁を壊す、みたいなことをやってたんだよね。だからそういうことが今、ムケチョの土台として生きているような気がする。
そら   なるほど。夢ちゃんにとってはイマーシブシアターも今まで作ってきた作品も地続きなのか。すごい納得。あとどうして自分が夢ちゃんの作品にいつも惹かれてたのかも!客席と舞台上が分かれすぎてないことにすごくワクワクしたんだと思う!

【『反転エンド』の構成、どんな風に作ったの?】

そら   『反転エンド』の構成はどんなふうに作っていったの?
夢子   それがさ、書き終わるとどうやって書いたのか自分でもはっきりと思い出せなくて…。毎回新しいものを作るときに、前作の自分に嫉妬してる(笑)。
そら   それ、楽しすぎる(笑)
夢子   えっとね、まずポレポレ坐の《会場》からスタートしたの。あの壁を絶対に使いたくて、そこから表と裏/内と外みたいなイメージを膨らませていった。ポレポレ坐が映画館併設のカフェだから、映画監督のイメージは最初から浮かんできてたかな。
そら   あの会場だからこそできた公演なんだね。
夢子   そう!やっぱり場所の持つエネルギーってすごいよね。絶対ここでやりたい!って思ったの。だからそこからスタートさせて、「こうでありたい自分」と「こうではなかった今の自分」っていう二面を、キャラクターの中に作っていった。恋、夢、親との関係、幸せになること、みたいな。それでそのテーマを活かすための対立や葛藤の関係性から登場人物を考えて、キャラクターを深めていった感じだったと思う。だからキャラクターシートには、生い立ち、家族との関係性や、幼少期、略歴、どういう思い込みをもっているか、とか結構しっかり書いてある。
そら   うんうん。
夢子  キャラクターがくっきりしてくると、どういうシーンが必要かが見えてくるから、まずは色々広げてみてからタイムラインに合わせてピックアップしていったかな。裏と表の行き来でキャラクターの心情に大きな変化がある、という風にしたかったから、構成上でそのポイントだけははっきりしてて、そこに向けてパズルしていった。ただ過程までは構成上で書けなかったところも多くて、それをキャストに稽古で一緒に作ってもらった感じかな。ほんとに、信頼できるキャストとクリエーションできてることが、感謝!

そら    登場人物チケットの人数はどの段階で決まったの?
夢子  うんとね、人数は確か、みんなでポレポレの空間を見た最初に決めた気がする。物理的なパッケージが決まってないと書き出せないから。
そら   なるほどなるほど。
夢子   クライマックスのシーンとかさ、稽古に入る前にマサオさんとめちゃくちゃ長時間ミーティングして紐解いてもらって、机上ではいける!って思ってたんだけどさ、
そら  あー!しんちゃんが対談の時に話してくれてたやつ!
夢子   そうそう!あの日の稽古場の空気、「これ・・・どうすんの・・・・」みたいなの、ほんと怖かった!構成担当として激震えした(笑)
そら   その場にいたら笑っちゃいけないんだろうけど、今聞くとニヤニヤしちゃう
夢子  だからさー、構成上で見えてる着地点なんて蜃気楼だなって思う、ほんとに。現実はみんなで一歩ずつ踏んでいった。ほんと、皆さんになんとかしていただきました(笑)

そら    傍観者の構成も最初からイメージできてたの?
夢子  うん。
そら  あれ、ほんとすごいって思ったの!
夢子  わーい!傍観者含めたラストの演出は、最初の構成の段階からあれがやりたいって書いてた。そうそう、最初智絵さんとマサオさんに構成を投げたときに、「ラストなんなのこれ?できんの?」みたいな感じになった記憶があるのね。だけど、割と稽古が進んできたときに、マサオさんに「構成読んだ時からラスト天才だと思ってたよ」みたいに言われて「え、あんなに最初、これどうすんの?って言ってたじゃん」って思った!
そら   (爆笑)
夢子   マサオさんは、構成の読み取りがすごいんだよ!私は自分が書いてるから分かるけどさ、「こんなラフに描いた構成でどうしてここまで意図が分かるの⁉」って。だからマサオさんが、いつの段階からこのエンディングでいけるって思ったのか聞いてみたい。
そら   わかった!マサオさんインタビューの時に聞いとく。
夢子   わぁ楽しみ(笑)

【台詞の機能と余白の可能性】

そら   夢ちゃんの書く脚本って、言葉をすっごく緻密に精密に繊細に積み重ねていくじゃないですか
夢子   ひー!そう思っていただけたら嬉しい!
そら   いやいや、まごうことなくそうじゃないですか。句読点の位置やてにをはだったり、単語の選び方やひらがな漢字カタカナの表記だったり、話す順序だったり。なぜそう書かれているかってことに全部意味があるでしょ。
夢子   くぅ~!うん!
そら   その夢ちゃんが、ムケチョでは「台詞を書かないこと」に勇気を持って臨んでいるっていうことに、痺れたんだ。「なるほど」って感じもしたんだけどね。でもやっぱりそれは「勇気」なんだな、飛び越えて挑戦してるんだなって。
夢子   うん、そうなの。でもそれはムケチョで作った3公演、毎回ずっと悩み続けてることでもあって。
そら   悩んでる?
夢子   うん。本当にそれでいいのかなって、ずっと考え続けてる。
そら   ほうほう!
夢子   今、現状「書かない」ようにしているのは、お客さんが何を言っても俳優が同じことを言うんだったら、RPGゲームみたいになっちゃうというか、目の前のお客さんからしたら、急に《演劇になった》って感じちゃうんじゃないかって思ったからなんだよね。それだと作り物すぎちゃって我々の思う没入にはならない。それでも、稽古の効率とか考えても、より的確な台詞があった方がいいんじゃないかって思ったこともやっぱりあって。それならところどころ書くとか、キーワードだけ書いたら良いのかなとも思ったの。でもそれはそれで、俳優の話すキーワードとそうでないところがオンオフになっちゃうんじゃないかって思って、結局書かなかった。
そら   ふむふむ。
夢子  今は、出演キャストたちに自分の言葉で喋れる人が多いから、なんというかまぁ、甘える形で任せちゃっているんだけど、でも結果として見てみると、みんな喋る言葉がだいたい決まってきているんだよね。じゃぁ次に進んだ《段階》として、「それなら書いてもいいんじゃないか」って。
そら   お〜!なるほど。
夢子   「書きたい!」って思ってるわけでもないんだけどね。ただ《台詞》ってすごくコスパが良いから(笑)
そら   コ、コスパ⁉︎
夢子   あはは。だって台詞って《効率的にドラマチックに何かを伝えられる機能》があるじゃない?台詞のセンテンスひとつで、三つくらい機能を持たせることができる。「内容という情報を伝える」はもちろん、「その人のキャラクターを伝える」「相手との関係を伝える」とか。
そら   あー、確かに!そうだね
夢子   それが一気にできるから、コスパが良い。
そら   うんうん。
夢子   《いろんなことを効率よく伝えられる台詞》がきっとあるはずで、それを俳優一人一人に求めるのは職務が違うというか、それを狙うためには《台詞を書くセクションの人が書く必要》が、やっぱりあるんじゃないかって。
そら   あぁ〜。なるほど。
夢子   今までのキャストは、自分たちで能動的にいろんなセクションを担ってくれて本当に素晴らしかった!でも初演キャスト対談にも出てきたけど、現時点でキャストたちが上演中に常に時間に追われているのは、キャストそれぞれに「伝えなくちゃいけない」と思っている情報量が多いからなんだよね。だけどそれを《効率的に色んなことを伝えられる台詞》にしていけたら、一つ一つのシーンをもっとタイトにできるんじゃないかって。
そら   ふむふむ。
夢子   そうやってタイトにすることで余白が生まれていったら、その分もっと豊かに、台詞ではない行動とかお客さんと一緒にやる行動、無言の時間の交流を増やせるんじゃないかって思っていて、そういうブラッシュアップをしていきたい。そう考えると、どこまで書いたら、お互いにより良い形で進めていけるだろうって。
そら   智絵さんの言っていた将来的に挑戦したい「ムケイチョウコクのノンバーバル(※非言語表現)なイマーシブシアター」ってそういうことなのかな。ダンスとか身体表現のノンバーバルではなくて、ストレートプレイに近い作品アプローチの“先”のノンバーバル。それってすごく濃密で、なんというかちょっとエロティックでもあるね。わぁゾクゾクする!
夢子   ね!そうでしょ~!だから次回は、もうちょっとだけ《言葉を少なくしていくこと》にトライしたい。
そら   うわぁ!進化する予感が!すごい!言葉を繊細に誠実に扱っている夢ちゃんだからこそ、言葉のないところへの可能性を探っていくっていう過程、めちゃくちゃワクワクする。これからムケチョの歴史を記録していかんとするnote担当としては、ここは長い視点でも追いかけていきたい!
夢子   (笑)
そら   でもそうなるとさ、
夢子   ん?
そら  こないだの新キャスト対談で、「形はもうできたから、再演はいっぱい遊べるね」って話が出てきたけど、
夢子   うん。
そら   形ができたからこそ、そうやって精密度を上げていくんだって考えると…ただ楽しいだけの稽古には、やっぱりならなそうだね(笑)
夢子   あー!それはね!そうなの!めちゃくちゃ思ってて!
二人   (爆笑)

『反転エンド』の本番風景

【次の稽古で取り組みたいこと】

夢子   今喋ってて改めて思ったけど、色んなところをシンプル化することによって《見えるものを増やす作業》が、次の稽古に必要なプロセスだなと思った。初演の時はやっぱりどうしても急いでたし、みんなが出してくれるものほんとに全部素晴らしかったし、そういう中でキャストが自分で削っていったこともいっぱいあったと思うんだよね。そうやってキャスト自身が精査して精査して組み立てたものを、更に削るって、かなり勇気のいる作業だと思う。しかも本番開けるまでは、そうやって必死になって作ったものも実際にはどんな風に成立するかわからないっていう状態だったし。私自身も勇気が必要で、初演の時はやりきれなかった部分もあると思うんだ。だから一緒に、勇気を持って削ろうって。
そら   すごく良いと思う。それにそれができるチームになっているんじゃないかな。遊佐さんがこないだのTwitterスペースで盛んに「怖いよ!」って言ってたのとか。
夢子   ね(笑)。怖いって言えるって、いいことだよね。
そら   うん。対等性というか、信頼しているから言える関係性というか。
夢子   だよね!
そら   そうやって、余白を増やしていった先の交流を豊かにできたら、初めて参加するお客さんも、すごく良い地続きの中で“安心して”没入できると思う!初演に続けて再演にも参加するお客さんも「《没入感》をこう深めてくるか!」ってなるんじゃないかな
夢子   うん、うん、そうだと思う。あと、今はそういう風に考えてるけど、懸念していたオンオフとか《演劇になった》って感じにならないでいられたのは《台本を貰って覚えた台詞》じゃないからかもしれないから、
そら   そういう検証や対策とかも同時進行していかなくちゃいけないわけか。
夢子   そう…うーわー!結局、稽古やることいっぱいじゃん!
そら   稽古場レポートしにいくのも楽しみ!
夢子   ちょっと!どうやっていこう⁉どうやって稽古すんの?
二人   (爆笑)

ムケイチョウコク メンバー写真

大好きな夢ちゃんの頭の中の話は、いつもワクワクしてしまいます。
この楽しさ、このnoteで伝わるといいのですけど(*´>ω<`)

後編公開は明日3/26(日)!

新しいジャンルとも言うべきムケイチョウコクのイマーシブシアター。
その魅力をどう伝えていくか。そんなお話を取り上げます。
なんと!『反転エンド』後の新作情報もちょこっと♪

どうぞお楽しみに!

【再演『反転するエンドロール2023』公演情報】


『反転するエンドロール』2023
構成:今井夢子
ムーブメント:美木マサオ
演出:ムケイチョウコク(美木マサオ.今井夢子.内山智絵)&all cast

【会場】
Space&Cafe ポレポレ坐(東中野駅より徒歩1分)
東京都中野区東中野4-4-1 ポレポレ坐ビル1F

【チケット発売】
一般(先着):3/11(土)正午より:チケット購入はこちら

【チケット】
当公演にはチケットが2種類ございます。

★登場人物チケット:7,500円
あなたは物語の登場人物です。
ひとりひとりに名前が与えられ、出演者はあなたに直接話しかけてきます。
登場人物として物語の中を生きることで、あなただけのドラマを体験することができます。

★傍観者チケット:5,500円
あなたは物語の傍観者です。
目に見えない存在として空間の中を移動しながら、
登場人物たちが繰り広げる物語を、自由な視点で楽しむことができます。

※それぞれのチケットに別途ドリンク代500円がかかります。

【Cast】
AGATA(Project UZU)
生田麻里菜(キャラメルボックス)
池田レゴ(ClownCrown)
市川真也(マサオプション)
大塚由祈子(アマヤドリ)
窪田道聡(劇団5454)
小島啓寿
小林未往(合同会社flipper)
佐野功
塚越光
手島沙樹
藤田祥
村上ヨウ(豪勢堂GLove)
望月 光(疾駆猿)
山本美佳
遊佐邦博(大統領師匠)
※ 各回8名が出演

【公演日程】
4/21(金)
4/22(土)
4/26(水)
4/28(金)
4/29(土)
5/2(火)
5/6(土)
5/11(木)
5/13(土)

各回
19:00〜19:10 登場人物チケット 受付開始
19:10〜19:20 傍観者チケット 受付開始
登場人物と傍観者それぞれの物語の楽しみ方をご案内したのち、開演となります。

終演は21:15を予定。
終演後30分程度、会場内にてドリンクを飲みながらおくつろぎいただけます。

【ステージ別出演者】
下記画像をご参照ください。

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