No.001 パーソナルスタイリスト 黒須智広
第一弾となる今回のテーマは「コンプレックス」
我々ディレクションユニット ″無形″ のスタイリストである黒須自身が抱えていた
あるいは今も向き合おうとしている彼のコンプレックスを、今日この場で掘り下げていきたい。
以降、インタビュアー無明長夜を 「長夜」 インタビュイーである黒須智広を「黒須」として対談を記載していきます。
イチニンショウ を初めて読まれる方はこちらをご覧ください。
-開話
長夜「第一回ということで、我々無形のパーソナルスタイリストである黒須の話を聞いていくね」
黒須「はい!よろしくお願いします!」
長夜「今回のテーマは "コンプレックス" についてで」
「黒須のスタイリストとして持っているテーマであるこの言葉について、今回は掘り下げていきたいなと思います」
-きっかけはいじめでした
Q. 服を好きになったきっかけは?
A. 恥ずかしいんですけど、見栄でした。
よくある話みたいで嫌なんですけどね。
小学生時代に女の子からいじめられていて
とにかく、当時は女の子にいじめられてる自分が情けなくて、周りに言える年でもないですし、女性不信になっちゃいましたね。
中学生になって、親友のファッションがすごくかっこよくてシンプルに憧れました。
そこから親友のファッションをとにかく真似するようになって
見た目が変わればいじめられないっていうか、見る目が変わるのかなって思って真似を始めたんですけど
段々洋服って面白いなっていうか、洋服そのものが好きだっていうことに気付いたんです。
そこからはもう、親友のファッションとか、真似とか関係なく趣味になりました。
そしたら、ホントに周りからの自分を見る目も変わってきたんですよ。
「あいつすげえ」みたいな目で見てもらえるようになって、すごく自信になりましたね。
長夜「いじめられてたって話は聞いたことがあったけど、洋服への関心はそこからだったんだね」
黒須「恥ずかしいですけど、そうですね。(笑)」
「ホントに女性不信でしたし。シンプルに怖かったですねー。あの時は」
-コンプレックスと向き合う
長夜「黒須の中にある根本というか、トラウマは"いじめ"と、"女性"からで、それを克服するためのものが洋服、ファッションだったんだね」
黒須「そうですね。言葉にするの下手なんですけど(笑)僕の中では洋服は 自信を纏える ものって感じなんです」
Q. 人のコンプレックスに対するスタイリングはどう向き合う?
A. 僕がスタイリストの仕事していた中で、当然モデルさんも相手にするんですけど。
かっこいい人に服着せても、かわいい人に服を着せても..なんか面白くないなっていうか、(似合って)当たり前なんですよね。
例えばものすごく太った人のコーディネートをするとなると難易度は高くなりますけど。
そういう方のコーディネートがキマった時に、エゴかも知れないですけどめちゃくちゃ嬉しいんです。
体型とか、精神的な理由によって確かに制限はされちゃうと思います。
でもその人にはその人に合うスタイルが絶対あるって考えてます。
僕もショート丈のパンツが好きで履きたいんですけど
自分は胴が少し長いし足も太いから、似合わないんですよね。
でもこれは諦めるとかじゃなくて、戦略的撤退って考えてます。
結果フルレングスのパンツの方が似合うし、
自信を纏うという意味では最良の選択だと思って僕はショート丈は履かないです。
長夜「なるほど、戦略的撤退(笑)」
「確かに似合わないものをどうにか着ようって言うのは、疲れちゃうよね」
黒須「結局、似合うものを見つけて、纏って、自分に自信を付けた方がいいんじゃないかなって思います」
長夜「じゃあ、ちょっと意地悪なことを聞くね」
黒須「はい」
Q. 体型的にショート丈は似合わない。でも、どうしても短いものをおしゃれに履きたいという依頼があったらどうする?
A. むしろ足を大々的に見せます。
短いパンツに派手なソックスとかシューズを履かせて、Aラインとか作りますね。
むしろめちゃくちゃ似合うしかっこいいと思います。
体型は様々ありますが、それに合わせてAラインやVライン、Iラインといったスタイリングができるので、
コンプレックスをカバーできるスタイリングは全然できます。
なので、本人がどうしてもこうしたい。
って言うのを全部無理!ってするわけじゃないんです。
長夜「すごい、今答えが即答で出るのは流石だなって」
黒須「スッと出てきましたね、なんか(笑)」
-これからと、今まで
Q. これから先どんな人のスタイリングをやってみたい?
A. 洋服に興味あるけどわからない。みたいなひと。マイナスイメージがある人ですね。
それをきっかけにモテる要素の一つにしてもらうっていうか、やっぱり自信を纏って欲しいなって。
モテたい人がいたとして。おしゃれしたからモテるわけじゃないじゃないですか。
でもプラスアルファにはなると思いますよ。
ただ、パーソナルスタイリストとっていうのは、相手のコンプレックスに寄り添うものなので
こちらから是非やらせてくれ。というスタイルではないんですよね。
長夜「なるほどね。じゃあここからは、昔話を少し聞いていきたくて」
黒須「スタイリスト時代からですかね」
長夜「そうそう、無形を結成する前のもうすこし前からの話」
Q. 無形になる前の黒須智広という人間は?
専門卒業して、スタイリストに弟子入りして、アシスタントをしてる時に長夜さんと知り合いましたね。
そのあと、色んな事情があったんですけどアシスタントをやめて独立しました。
3年くらいですかね、アシスタントしてたのは。
それから1年くらい、独立してやったものの挫折してしまって。
Q. 何故挫折してしまった?
A. 単純に営業力がありませんでしたね。アシスタント時代にコネクションを作るべきだったんですが。
まず若すぎました。
当時の仕事をしていた時、自分は23,4歳とかで。
スタイリングをする媒体が年上過ぎるというか大物というか、自分に完全に任せてもらえる仕事がない環境でした。
そういう環境もありましたし、何のコネも持たないまま飛び出してしまって。
無知でした。自分のいた界隈の特殊さにも気付かなかったし
社会というものを知らなかったので、とにかくうまくいかなくて。とにかく悔しかったです。
Q. スタイリストをやめた時、どう過ごしていた?
A. まず、服をとにかく捨てました。
レンタルのコンテナとか借りるくらいには持ってたんですけど。
自分が着るもの以外においてはほとんどですね、処分しちゃいました。
当時使用していたSNSも消して全部リセットしました。
そこからはとにかく仕事に打ち込んで酒に明け暮れる日々をまた1年くらい続けてから、そんな生活もやめました。
Q. 1年でやめられたのは?
A. 何も残らないんです。
お金はもちろんですけど。記憶も残らないですし。
長夜「(笑)」
黒須「(笑)」
黒須「ほんとうにこの1年、何も残らなかったんですよね。ドブにお金捨ててました」
Q. 酒におぼれた生活から復帰できたのはなぜか
A. 長夜さんと知り合った時はまだ普通のサラリーマン(長夜が)で、自分はスタイリストのアシスタントだったじゃないですか。
それで自分が独立したころには長夜さんはアーティスト活動を始めてて、
当時長夜さんがやってた革職人の方も、活動がどんどん大きくなっているのを近くで見てて。
そんな中で自分は挫折しちゃってたので、その時は見ててしんどさもありました。
そこから作品のお手伝いをさせてもらった時があって。
その時の刺激が大きかった気がします。
何かを作るのが好きだし、やりたいって思いました。
自分はやっぱりこっち(ファッション)の世界にいたいんなんだなって。
その辺から、とりあえず何かしてみようと思って色々やりました。
絵を描こうとしてみたり。習字とか。(笑)
あとは買うところまでいかないけど、版画をやってみようかなんて考えてみたり..
とにかくなんか見つけようって必死でしたね。
色んなこと試してみましたけど、やっぱコーディネートがしたいって思いました。好きなんですね。服もスタイリングも。
でも服はほとんど捨てちゃってたんで。0スタートでした。
Q. 再スタートを切った今、新たなコンプレックスはある?
A. 機械音痴ですね。(笑)
自分で活動を広げないといけないと思って、これまで電話と口と。メモとペンでやってきました。
でもSNSももっと使わなきゃとか、パソコン使いたいなー..とか。でも全然わかんないんですよね。
苦労するなーって。課題です。(笑)
-コンプレックス
長夜「黒須にとってトラウマは"いじめ"と、"女性"だったけど、結果生まれたコンプレックスって何なんだろう」
黒須「んー、言いにくいんですけど** "自信" **です」
Q. 自身のなさは容姿なのか、内面なのか?
A. 一番は内面ですね。
当時は本当に、全部の自信なくしちゃいました。
なにしてもダメな気がして、本当にネガティブでしたね。
Q. 昔の内面の弱さは克服できているのか?
A. 正直、全部ではないです。
今も女性の目はなかなか見れないですね。
話はできるんですけど、全部って言うのは難しいんじゃないですかね。
そういう僕だから、人のコンプレックスにあったスタイリングが出来るかなって風にも思います。
自分の中で100点が出せないんじゃなくて、僕の100点は人から何点かなって気にすることは時々あります。
昔の僕なら自分に100点を出せなかったと思うんで、克服じゃないですけど洋服は自分を変えてくれたって感じます。
Q. 黒須が無形で、個人でやりたいことは
A. めちゃくちゃ綺麗事ですけど、人に勇気を与えたいなっていうのはほんとに思います。
自分にはこういう過去があるので、洋服を通じてですけどここから新しい自分を見つけるきっかけになってくれたらいいなって。
これは無形を通じても、個人のパーソナルスタイリストを通じても同じですね。
-終話
長夜「全部じゃない。っていうのはすごくリアルだね」
黒須「そうですね、こんなこと言っていいのかって思いますけど...だからってダサいスタイリングはしないし、妥協もしませんからね。そこは自信あります!」
イチニンショウ No.001
パーソナルスタイリスト 黒須智広
**-あとがき
**
最後までお読みいただきありがとうございます。
イチニンショウ 第一話は我々ディレクションユニット 無形 の1人 黒須智広でした。
最初ということもあり、身内からのスタートとなりましたが、ここから先どんな方とお話ができるのか楽しみです。
文章から伝えられていればと思いますが、黒須という人間は非常に口下手です。近くで彼を見ている私ならいくらでも彼の意図を汲んで書くことはできますが。
せっかくインタビューという生ものですから、なるべく調理せずにリアルさを伝えたいと考えて、なるべく彼自身の言葉をそのまま綴りました。
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