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すでにエレキの断ち切られた部屋にいるからか、白ペンキの剥げかけた洋窓から灰色の光がそそ…
『平和』とはんぺんに焼印されている。 遥か昔からあるもので、ほんとうの読み方は逆、『和…
【毎度馬鹿馬鹿しいお話で。 ちょっとお下品です(当社比)。 お気をつけてお読み下さいませ…
5月某日 慢 日曜。 今日は事務所の連中で草野球をしているが、私は出場も応援もサボり、電…
<6月某日> ガラスの手をあずかる。 男か女か判然とせぬ、右の手。そう若くはないよう…
父が季節外れの冬眠にはいった。 本人の老いと、昨年が暖冬だったのにくわえ、このところ…
或る合唱団の公演に欠員が出て、その音域パートがどうしても足りないということで急遽、私は呼ばれた。 ながい病院暮しを終え、願ってもない仕事であった。 かつての仲間も聴衆も、私自身ですらも、私の音楽を忘却していた。 それでも。ハ長調のひとつも響かぬ、浮世より隔離された空間で、声だけは衰えぬよう、心がけてきた。 当日朝。 その県でいちばんの都市。 リハーサル。 まだ誰もいない客席が紫の扇となってひろがる、岩のようにごつごつとした白壁の、ホール。歌声をあてる。
午后、八時。 一寸の狂いもなく、舞台中央にちいさなスポットライトが撃たれる。両手に桃色の…