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掌篇・短篇小説集

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#創作

掌篇小説『紙のドレスを着た女』

 ホテルへ向かう。 「部屋の鍵を開け放して待っている」  と云う、男のところへ。「○○ボ…

武川蔓緒
10日前
20

短篇小説『雅客』

 目醒めて、わかりました。天から地へひとすじのすきまより僅かな陽のさす、蒲団にくるまれて…

武川蔓緒
2週間前
55

掌篇小説『美術館』

『チチキトク  ○○ビョウイン』  逃亡先のホテルへ電報をよこしたのは、夫の唯一の血縁で…

武川蔓緒
1か月前
22

短篇小説『あんたがたどこさ』

 むかし愛したひとが帰ってきました。  何年が過ぎたのかしら。鬼乃助さんが帰らなくなって…

武川蔓緒
2か月前
31

短篇小説『3月85日』

 車のない車道はまっすぐ、傾斜5度ほどのゆるやかなくだり坂で、プラタナスのアーチを飾りな…

武川蔓緒
2か月前
37

みじかい小説群<11>

【No.060】  私たちの方が余程、冷えているわ。  妻の言葉はそれが最後か。気づけば目前に…

武川蔓緒
2か月前
18

掌篇小説『最後の魔法』

 あ、最後か、ときづく。  歯の治療をようやく終えて存分にキスできると云っているのに、御座なりだし。  裸で私を背中から抱いてはいるけど、テレビ点けて極彩色のビスチェに短パン姿の女性アイドルのことを「整形してる」「性格悪い」とか延々毒づいているし。  部屋を出る際、今迄みたく車で家に送ってくれそうもなかったから、 「送って頂戴」  と、私から。もう最後だから、二度と会わないから少しでも一緒にいたいと思ったのか。それとも解散を成る丈延ばしてイケズしたかっただけか。返事はなく露

掌篇小説『ラストノートサンバ』

 赤い傘を、さしてゆく。  私のでない、むろん彼のでもない女物の、ほんの微かにダマスクク…

武川蔓緒
5か月前
28

短篇小説『ゴールドフィッシュ・ブギー』(6/9加筆)

 金魚鉢の街で。  すこし肌寒い水。今日は。  結婚式だろうか葬儀だろうか、忘れてしまっ…

武川蔓緒
5か月前
28

掌篇小説『火曜の女』

 風薫る季節。  その町ではお見合いの制度が古来よりあり、今もなお淡々と続く。  誰の御…

武川蔓緒
5か月前
16

掌篇小説『日曜の女』

 風薫る季節。 「日曜会ってみて頂戴、いいお嬢さんなのよ」  大伯母は家にくると僕に土産…

武川蔓緒
5か月前
24

ちいさな小説群<10>

【No.058】  某刑務所にて服役中。上下白い服を着て、ほかの罪人の男たちとのんびり歩いてい…

武川蔓緒
10か月前
21

【ピリカ文庫】短篇小説『里神楽』

 アールデコ調のエントランスの屋根で羽をひろげる孔雀は、飾りかと思ったら、本物。  親類…

武川蔓緒
9か月前
52

ちいさな小説群<9>

【No.053】  軀じゅうに突起をもつ男と寝る。手を握られただけで、快感か何か知れぬ刺激に喘ぐ。男は手脚にも胸や尻にも、脣や舌に迄突起が。私は幾百と壺を圧され軀も理性も壊れはて。僅かに遺る意識に、父の姿が映った。最後の父。私にパスタを与えようと、何メートルも腕をパスタを伸ばすが、私の脣には届かない。 ◆◇◆ 【No.054】  深更。帰れず彷徨っていると、灯も朧な、現役か廃墟か判らぬ住宅団地にはいる。Cの39棟4階に、フロアをぶち抜いたカラオケバーが、明明と。老人客