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鯔のつまり「女の話はつまらん」

昨年美容室を変えた。男性が苦手なくせに男性しかいない、ちょっとハードル高めなオシャレ美容室である。自身の髪の毛は量が多いくせにボリュームはなく、パーマを受け入れないため何回掛け直しても1日と保たない非常に厄介で難ありの髪質のため、『ショートに特化していること』と口コミと店内の雰囲気写真を頼りに思い切って変えてみた次第であった。

最初こそヘアスタイルのことや髪質の相談をしたりとザ・営業トークだった美容師との会話だが、回を重ねるごとにちょこちょこと仕事の話やプライベートの話などをするようになっていった。あるとき、何がきっかけかはすっかり忘れてしまったが、何かの話の後に「女の人の話ってつまんないんですよ」と発信して思いの外盛り上がってしまった。他にお客さんがいないからこそできた話だったのだが。

そもそもノリツッコミが当たり前とされている関西に住んでいながら、それでも『女の話はつまらん』と思っているのだ。面白おかしく装っていてもやっぱり女の話はオチのない話がほぼほぼで、彼氏ができれば彼氏の話、結婚すれば配偶者の話、子供ができれば子供の話でそれはほぼほぼが面白い話に見せかけた自慢話。そう、女の話はよく噛み砕けばほぼ自慢なのだ。

美容師との会話の中で「女の話って実はほとんどが自慢で、オチがない話だと感じたらそれは大抵自慢なんですよ。」と言ったら笑われた上に感心されてしまった(って、何ならこれも立派に『感心された』という自慢になるよな。怖いなあ、女って!油断するとこれだから困るよ、全く…)。

「誰かに褒められたいとは思わないけど「おもんない!」とだけは言われたないよな!」と昔から友人とよく話していた。「面白くない」とだけは言われたくない、として生きてきた。私の仲の良い友人はみんなこのパターンなので、それが影響してかありがたいことに自身にはママ友という怖いカテゴリーの人間関係が存在しない。

世の中『野球・宗教・政治』の話がタブー視されるが、女の世界にはさほどそれが影響しないので、どちらかというと『お金、子育て持論、無自覚の自慢』を女社会からタブー視すればもしかして女の人間関係の悩みは減るのではないか?と思っている。要は『承認欲求は消して話すべき』が最大限の対人関係のエチケットなのかも知れないとさえ思う。『関西人なのに面白くない』は全然許すから、上記の女のタブーだけは犯さないでほしい、と願う。

「どこそこでこれ買った」というだけのお金の話はつまらないので、どうせ言うならオチをつけてほしいし、オチがなくても誰もが手にできそうなものをテレビショッピング並みにプレゼンしてくれるなら許す。子供の話も「どこそこの外国に留学することになった」みたいな話はガチで要らん(「すごーい!かしこーい!」って言ったところでどうせ「そんなことないんです」ってやりとりは要るのか?あ?)ので、どれだけ子供の部屋が散らかっていて食べ物にどんなカビが繁殖したかを教えて欲しいし、自慢するならどれだけ自分を相手がなかなかしないような失敗談やツッコミを誘導してくれるような自慢話として『然るべき話術』を用いて頂きたい。

美容師と「女の話がつまらない」と言って盛り上がった話を配偶者にしたところ、自身の話すことにオチがうまくつかなかったり面白くない認定を受けた際に漏れなく「え?もしかして今の『女の話』ですか?」としばらくの間何かにつけて言われる羽目になり、トークを強化されることで自分の首を絞めることになってしまったのは辛かったが(今でもたまに言われて臍を噬む)。

かつて女優・宮沢りえさんが「下ネタは罪がないからいいですね」と言ったことに対して感心したことがあった。あくまで『下ネタ』であり猥談ではないのもいい。理由としては『下ネタは誰も傷つけない』と言う理由で、それはかなり深いし、話術は要されるので難しいとは思うのだが、確かに「下ネタが嫌い」と言ってしまえばそれだけで人間関係に壁ができると言う事実は否めない。要は『相手を受け入れる器』と言うことなのだろうと思う。

対人関係が難しい世の中だからこそ、多様性だとかコンプライアンスだとか新しい一見便利な言葉にカムフラージュされがちなお金や子供や無自覚の自慢などによる承認欲求は本当は誰も面白いと思っていないし記憶にも残らない(残らなくてもいい、と言われてしまえば「もう何も言えねえ」ってなっちゃうんだが)。

せっかく同じくして時を共有するのなら「また会いたい」と思ってもらえる人間関係が素敵に決まっている。だから深い間柄でもないが、美容師にも「このお客さんは楽しいから来て欲しい」と思ってもらいたいとさえ思ってしまう、自身がただただ無意味に欲深い人間なだけかも知れないが。

女の話はつまらん!とハードルの高いことを自ら言っちゃう様な無謀な人間ではあるが、どんな時も良い意味で面白い話ができる女でありたいと日々思うし、そう努めたい。



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