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メドピアとエムスリーの企業比較と分析

今回の記事では、医師専門サイトを運営し、それを軸に事業展開するメドピアとエムスリーにおける企業の比較を複数の観点から行い、それに基づいて今後の競争における予測する。

(1)業界構造と競争条件、そして将来予測について


メドピアは、2014年にマザーズ上場し、2020年に東証一部に市場変更を行った。エムスリーは、その10年前の2004年にマザーズ上場し、2007年に東証一部への市場変更を行った。下記の株価推移を見ればわかるとおり、高い成長率を誇る企業であり、エムスリーの時価総額はすでに6兆円を超えている。両社とも、マザーズ上場から6年以内に、東証一部への市場変更を行うことができたのは、そうしたマクロの市場環境における追い風を受けていたからだと考えられる。

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分析対象企業の業界構造としては、どちらも似通っており、医師に有益な情報を与えるポータルに会員登録者数を増やしながら、そのポータルへの広告料を製薬企業から徴収するモデルであることである。製薬業界では多くのオフライン営業費用をMRに投じている中で、多くの予算をマーケティング予算として抱えている。そして現状ではほとんどがオフラインのマーケティングにお金が投じられており、その予算をリプレースする形で両社は飛躍的に成長している。


この業界の競争環境についてファイブフォース分析を行う。医療業界というレガシー産業に対してIT企業が参入していくことは容易ではなく、それゆえに競合もあまり多くはない。M3の創業者は、マッキンゼーアンドカンパニーにて医療業界へのコンサルティングを経験していたこと、メドピアの創業者はもともと医師であったことなど、その業界での経験を有していたことが、競争においても優位性を持って事業展開できた理由だと考えられる。プラットフォームに多くの医師を集めることは参入障壁も高く、こういったことからも新規参入の脅威は比較的少ないと考えられる。参入者が少ない故に業界競合他社、代替品の脅威は少なく、売り手側の交渉力も強い。競争条件から考えても市場は魅力的で、マーケティングを展開できるプラットフォームである両社は、特にコロナウイルスの影響で直接フィールドセールスをすることが難しくなったことからも、より多くの予算が製薬会社から投じられると予測され、これからも市場としては大きく拡大していくことが見込まれる。

(2)対象企業の強み弱み、マーケットでのポジショニング


メドピアの強みは、医師目線で医療現場における生の情報を共有するナレッジマネジメントポータルとして運営されていることである。サイト内では、医師同士でバイアスなくサプライヤーの提供する商品が本当に良いものかレビューしている。M3などと比較すると、サプライヤー目線でのバイアスが含まれておらず、医師ファーストでの情報提供が行われているのである。ぐるなびと食べログの関係にやや類似しているといえる。一方、エムスリーに対して後発サービスである故に、小規模であることは弱みだと言える。
エムスリーの強みは、国内の医師の90%以上が登録する「m3.com」というメディアである。国内で初めてこのビジネスモデル を構築したこともあり、業界をリードしている。逆にエムスリーは、サプライヤー目線でのサイトになっており、長期的に医師目線で価値を提供するWEBサイトに対して弱みを持つ可能性がある。また、一般消費者からの認知はまだ十分とはいえない。
ポジショニングとしては下記のShared Reseach社の分析が参考にできる。両社ともにインターネットを活用したソリューションであることに違いはないが、メドピアが学会や研究会をオンライン化したような医師目線でのサービス提供を行なっているのに対して、m3はmrの訪問営業をオンライン化するようなサプライヤー目線でのサービス提供を行なっている。

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(3)損益分岐点分析


①有価証券報告書の原価内訳②売上に対してどれだけコストが伸びているか?③IRへ問い合わせ、この3つを根拠に固定費と変動費に関しては推測して算出する。以下のグラフは両社における売上と売上から税引き前利益を差し引いたコストを算出したものである。

M3のグラフ(単位は百万円)

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メドピアのグラフ(単位は百万円)

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M3の方がコストと売上が美しい直線になっていることがわかり、予算統制が厳しくなされていることが推測される。

(4)比較結果の総合的要約


 今回、M3とメドピアという2つの医療情報ポータルを運営する企業の分析を行った。分析に基けば、やはりM3が先行してサービスを開発したことから売上規模も大きい。M3の売上とコストを見ても、正確に予算統制がなされながらしっかりと売上が増えていっており、今後も安定した成長が見込まれると考えられる。
メドピアについては、M3と同じく魅力的なマーケットに位置し、同様に成長が見込まれるものの、M3によりも若い企業であるため、売上成長率は高いもののまだ財務面はやや不安定であると言える。一方で、まだ投資フェーズにある会社であり、さらなる非連続的な成長を遂げていくことでM3に匹敵するような数兆円企業になるポテンシャルを持っている企業であると言える。
サービスについては、それぞれが別々のポジショニングをとっており、目先のマネタイズではM3が成功しているが、医師ファーストなサービス提供を行うメドピアが今後医者の獲得スピードを拡大していき、それが医薬品メーカーからのマネタイズにつながっていくことで、M3をリプレースする可能性はあるだろう

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