37.5℃

熱が下がらない。
昨日の夜から異変は感じていた。
しかし騒ぎ立てるほどのことでもない感じ。
朝、目覚ましよりはやく目が覚めて体温をはかるとまさに、騒ぎ立てるほどのことでもない37.5℃。

熱なんか1年に1度でるかでないかの私にとっては、この程度の微熱もかなりの大事件である。

瞬時にいろいろが巡るがひとまず、普段経験することのない体の重さと、まだまだこれから波がくるぞ!の序章感で、おやすみをいただくことにした。木曜には大阪、金曜には名古屋だ。最悪の展開もよぎる。鼻の奥をツンとつく痛さと、試しに発っしてみる言葉の全てに濁点がついている感じが久しぶりだった。

あ"ー、また調子に乗っちゃった、と思う。

やりたいことは全部やっている。そのうえでちゃんと生活も守っている。つもりでいた。めいっぱい恋もして友達とも遊んで、バンドに弾き語りにダンスにお芝居にラジオに、やりたいことをやりたいだけやっている。

でもぜーんぶ、私が壊れたら終わりだ。

いつぞやかダンスのチームメイトの女の子に『振りつけ覚えるの早すぎです!天才!』と拍手されて、咄嗟に『そのぶん日常生活なにもできなくなってるよ…』と返したことがあった。そこでハッとした。ちゃんと犠牲がうまれている。

嫌すぎる。自分が決めたことを全うできないことも、スケジュールがこなせないことも、そのせいで誰かに迷惑をかけてしまうことも、嫌すぎる。許せない。そうだな、最近ずっと気づいたら床で寝ていたし、化粧は半分しか落とせてなかったし、昨日なんか単純に服装を間違えた。寒かった。この37.5℃は私のそれらの全部の結果だ。情けない。

枕に顔を埋めて『ごめんなさい!!!!』と一言だけ叫んでから寝た。とにかく寝た。

今日は母親の誕生日だった。

たまたま私の住まいの近くの病院に来ていた母親が救援物資をくれた。親不孝。親不孝の極みだ。30歳にもなって母親の誕生日に母親に助けてもらうなんて。

エコバッグにパンパンの、甘いものからしょっぱいものから冷たいものからあったかいものまで私が食べたいものばかり。それからきたLINE。

『62歳の誕生日は
自分のモノよりも 弱っている娘のモノを たくさん買いました。
母が 全面に出た誕生日でしたね。
それも 本当だから 仕方ない。
お互い 思い出のひとコマじゃね』

熱が出ている時の思考回路なんてあてにならないし、明日には熱も下がってこんなこと考えもしないのかもしれないけど、私が信じている求めている美学なんて隣の人から見たらなんでもないんだろうな。こんなに必死で何かを犠牲にしてまで守っている全部、私のエゴだ。それを忘れてはいけない。

忘れてはいけないけど、むやみに疑う必要もない。忘れなければいい。そしてそれはいつか、後悔してやまない未来をもはらんでいるし、孤独も中途半端な37.5℃の苦しみも受け止め続ける覚悟をしなくてはならない。

慣れない体温の中であれこれ思いを巡らせ、不安になっては思い直して、とにかく寝てカロリーを摂取した今日は、私にとってとても意味のある1日だった。

明日からまた、元に戻ろう。まだやれる。
今日巡らせた思いは捨てないで、明日からまた、その先へ行くしかない。それしか、私にはない。
いやに前向きになったな、と思って体温をはかる。36.7℃だ。そういうことなんだろうな。

明日からまた、元に戻ろう。

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