恥を知る。98.『ひとり』

ハナちゃんがPEROを脱退することになった。

ハナちゃんとは私の大学時代のサークルの先輩でPEROのベースだったお姉さんだ。PEROとは、私がボーカルをつとめているバンドだ。PEROは現在活動休止中である。

どうしても今じゃなきゃダメなのかな。

が正直な気持ちだった。でも考えれば考えるほど、辞めたいと言われてから時間が経てば経つほど、今しかないんだろうな、と思うようになっていった。

活動休止を発表してから今日までの時間は私にとって闘いの日々だった。何かしなくちゃ!何かをし続けていなくちゃ!と、ずっと焦っていた。実際にライブは1人でも続けたし、ラジオのパーソナリティも、そう考えるとこの場所だって、なにかその、焦燥感に突き動かされるように走り続けた。

私はずっと、人間はどうやったって最後はひとりだ、と思っていた。今も思っている。この『ひとり』の捉え方は人それぞれだろうし、違って当たり前だと思う。我々はその一言の解釈でさえ完全には一致しない。やっぱり最後はひとりだと思う。

だからどんな決断も自分でくだすし、それによって起こるすべてのことを絶対に他人のせいにしない。ずっとそれが私のモットーだし、バンドの活動休止が決まってからその思いは日に日に強くなっていったように思う。

私は、バンドは、PEROはひとりではない、ということをいつのまにか忘れてしまっていたのだと思う。

当たり前にメンバーに会う頻度も減って、今までだったらなんとなく察知できていた変化も何も気付けなくなった。逆に言えば、毎日のように会っていたから分かっていただけで、私は別にメンバーのことを気にかけていたわけではないのかもしれない。ずっと、みんなの強さや優しさに甘えていたのかもしれない。

ハナちゃんが勇気をだして、辞めたいと言ってくれた日から今回の発表まで、すごく時間がかかってしまったのだって私の甘えのせいだ。解散は嫌だ!と言ったのも甘えかもしれない。それでも3人で何度も話して、ちゃんと自分の思いを伝えて、みんなの思いを聞いて、あー!ひとりじゃない!ひとりじゃないじゃん!と思った。こんなふうにならないとそう思えないなんて本当に恥ずかしいし、もう遅い。遅すぎると思う。それでも私は気付けた。3人で話したから。2人がちゃんと話してくれたから。私は気づくことができた。ずっとひとりじゃなかった。

これからも私はひとりじゃない。私はやめない、と言ってくれたファイターがいる。あららぎが、ハナちゃんが一緒につくりあげてくれたPEROがある。その音楽を今でも聞いてくれているみんながいる。

あー、なんでこんなに私は焦っていたんだろう。これからは少しだけ、歩幅を狭くして、速度を落として、あたりを見渡しながら歩いてゆきたいと思う。ハナちゃん、こんなに大切なことに気づかせてくれてありがとう。ファイター、これからも私と一緒に歩くと決めてくれてありがとう。みんな!いつもいつもありがとう!もう少し肩の力を抜いて、ゆっくりゆっくり、歩き続けていこうと思う。

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