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低気圧の日、生まれて初めて涙袋を描いた

昨日は低気圧のせいか「この世の終わりだ」という気持ちで目覚めた。原稿は進まないし、頭はうっすら痛むし、やっぱり低気圧はクソである。

そんな気分のときは、英語のポッドキャストとか、小難しい専門書とか、主張がハッキリしているビジネス書とか、読むのが辛くなる。

逃げ込む先は、海猫沢めろんさんの「頑張って生きるのが嫌な人のための本」と雨宮まみさんの連載「40歳がくる!」だ。

後者のなかで特に好きなのが「綾波レイ」のコスプレの話だ。

世の中をふたつに分けるとすると、綾波レイのような女のコスプレができる女(それは広義では、てらいなくモテる女の服装ができる女と言い換えることができる。むちゃくちゃだけど、私の中ではそうなんである)、と、そうでない女、になる。

自分は綾波レイのコスプレをする女ではない、そう思っていた雨宮さんが、綾波コスプレの衣装をAmazonで購入し、鏡で自撮りをする。すると、たった1万円で「綾波コンプレックス」が溶けて消えてしまった、という。

こんな、たかがコスプレのことでバカみたいかもしれないけど、自分で自分という素材を面白がれる状態というのは、なってみるとめちゃくちゃいいものだった。失敗したコスプレ写真は、軽く笑ってなかったことにできるぐらい神経太くなれるし(スカーレット・オハラは死ぬほど似合わなかった!)、似合ったら似合ったでなんかやっぱり面白いし、とにかく「やりたかったことをやった」という意味で、気が済んでスッキリする。

そういえば、わたしは大学生の頃、どうしても涙袋を描けなかった。ピンク色のアイシャドウを塗って茶色いアイラインで涙袋の輪郭を描く。あの擬似涙袋は、やったらあかんやつだ。世の中には涙袋を描いて良い女と、そうでない女がいる。そんな謎の「涙袋コンプレックス」を発症していた。

そんな私が涙袋用のアイライナーを買ったのは、昨日のように、低気圧でぼんやりしていた社会人1年目の冬。若干頭痛がするので、頭痛薬とポカリスウェットを調達して帰ろう。そう思ってドラッグストアに寄ったら、店先に涙袋用のアイライナーが売っていて、なぜか迷わず手に取った。

家に帰って涙袋を描いた。笑い転げるほど変でもなかったし、「素敵!」となるほど似合ったわけでもなかった。ただ、雨宮さんと同じで、「本当はやりたかったことをやった」自分に、少しだけ嬉しくなった記憶がある。

低気圧の日は、物事を論理的に考えるのがきつくなる。だからこそ、思考によって抑圧している何かを、理由もなくやってみるチャンスなのかもしれない。

なんて、好意的に低気圧を解釈しようとしてみたが、目の前には昨日手をつけられなかった仕事がいっぱいある。やっぱり低気圧はクソである。

最後まで読んでいただきありがとうござました!