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My Weekend Reading List (02.07.2021)

『The Overtake』のもたらした変化

2016年から運営されてきた、インディペンデントメディア『The Overtake』が、メディアの閉鎖を発表した。

『The Overtake』は、イギリスで暮らす多様なバックグラウンドを持つ若者による、若者のためのメディアだ。「ストレートかつ、白人かつ、中流階級のためのメディアの形作る“バブル”の外から、優れたストーリーと質の高いジャーナリズムを届ける」と掲げ、骨太な調査報道記事を送り出してきた。

ファウンダーのRobyn Vinterによるポストで、彼女は「インディペンデントなニュースサイトを運営し続けるのが不可能だとは思わないでほしい」と強く訴えている。実際に『The Overtake』も「閉鎖する他ないような財政状況ではなかった」と述べている。

2016年と言えば、イギリスにおいて「#MeTooもBlack Lives Matterも、Extinction Rebellionも、メインストリームなムーブメントになる前だった」という。「多様なバックグラウンドを持つプログレッシブな若者が想定読者だ」と言っても、懐疑的な目を向けられることもあったそうだ。また、若者向けメディアと言えば「動画にピボット」だった。

しかし今や、若者向けのロングフォームジャーナリズムメディアは珍しくない。Vinter氏は「メインストリームかつエスタブリッシュされたメディアのやり方が常に正しいわけではないと証明するムーブメントの一部は担えたように思う」と綴る。

Overtakeには「追い越す、追いつく」といった意味があるという。思い出されるのは、レベッカソルニットが語った、社会において価値観や考え方の転換が起きるプロセスの話だ。

彼女は「会話やエッセイ、社説、論説、議論、スローガン、ソーシャルメディアのメッセージ、本、抗議、デモから生まれたアイデア、ビジョン、価値観からなる、目に見えない構造物のなかに住んでいる」と述べている。

それらを変化させるには、個人が声をあげるだけでなく、何人かが後に続き、さらに大勢の人が、世界の見方や行動を変えていくこと。つまり集団的なプロセスが必要になる。

その構造物のなかに住む“we”が増え、かつては破壊的であったものが普通のものとなる。構造物の外にいる人がある日を目を覚ますと、知らぬ間に構造物の中にいて、以前の状態を忘れてしまうのだ。(筆者訳)

彼らが閉鎖したとしても、Overtakeが変化を起こす集団的なプロセスにおいて担った役割は変わらない。

ボディポジティブ on SNSのパラドックス

「ボディ・ポジティブ」についてSNSで議論することの功罪について語られたVOXの記事が興味深かった。

そもそも、ボディポジティブを掲げる運動がもともと目指していたのは、決して「太った人に自信を取り戻してもらう」ことではなく、「太っていることに対する社会的スティグマや差別を無くしていく」ことだったという。一方、現状のボディポジティブをめぐる言論は、体型をめぐるスティグマや差別を経験した人に、「あらゆるボディが美しい」とセルフコンフィデンスを高めるよう呼びかけるものが多い。それは本来の意味を失いつつあるのではないかと筆者は指摘する。

また、あらゆるボディと言いながらも、大抵の場合は「white- to light-skinned able-bodied people size 14 and down(白人か色白で、健常者で、サイズ14以下)」に限られることも述べている。

個人的に気になったのが、ボディポジティブを掲げるインスタグラマーをInstagramやTikTokで頻繁に検索すると、「美容整形」や「ダイエットビフォーアフター」などがサジェストされるという話だ。

せっかく体型に自信を持とうとモデルたちをフォローした先に、整形やダイエットのコンテンツがサジェストされるとすれば、それは悲しいデザインと言わざるを得ない。同じ「体型に興味がある」であっても、観たいコンテンツはむしろ真逆なのだ。記事では人間のそうした違いも判別できる日は来るだろうか。

Home Sweet Tokyo

英語関連のYouTubeを観ていて、BJ Foxさんというコメディアンについて知った。彼はビジネスパーソンとして日本に来日し、現在は英語と日本語の二言語でスタンダップコメディを行なっている。

彼はNHK Worldでシットコム「Home Sweet Tokyo」 の主演と脚本を務めている。外国人の夫と日本人の妻、子供が、妻側の父と同居するお話。夫の日本でのアドベンチャーや家族とのすったもんだが描かれていて、なかなか面白い。

実際に見てみるまでは、日本人の思う都合の良い“外国人像”を表象するものだったら嫌だなぁなんて勝手に心配していたのだが。杞憂だった。もちろんカルチャーギャップあるあるネタもあるが、あくまで“BJ Fox”という個人と、その家族の物語になっているので嬉しい。

ポッドキャストでは番組の経緯についても話していた。NHKのあるプロデューサーから「Modern FamilyやParks and Recreationみたいなシットコムを日本でやりたい」と言われてプロジェクトが始まったという。いずれも個人的に大好きなシットコムだ。Modern Familyは2020年にシーズン11で最終回を迎えた。Home Sweet Tokyoもそれくらい続いたらいいなと思う。


最後まで読んでいただきありがとうござました!