西洋占星術で相性をよんでみる


 よくありますね、この人とは相性いいのかな、悪いのかな、みたいな話。
 これを西洋占星術で見るとどうか、という観点で考察してみます。

 たとえば「牡羊座と獅子座って相性いいんだってー」とかいうものですが、あれは基本的にアテになりません。
 一般的にいわれる牡羊座、獅子座というのは、太陽星座のことです。牡羊座うまれ、獅子座うまれ、みたいな。この文言から『うまれ』と削除すると「私は牡羊座だから」みたいな会話や観点になります。
 よくわかります。楽なんです。だって生まれ年なんか考慮しなくとも、その人の西洋占星術上の所属は決まりますからね。それに太陽星座だから、なんとなくのキャラクターも読めてしまう。
 
 もともと太陽星座は人生の目的です。弓を引いた先にある的であり、弓を弾く人はこちら側にいます。つまり自分から人生の目指す方向だけが見えているので、まわりの人からは、そういった人なんだなと思われます。この「思われる」という部分がネックというか本質で、自分では自然にやっていることがレッテルになり、勝手に貼られます。言っている側、つまり周囲にいる人たちとの差異が認められるので、彼らから言われ続けているうちに、ああ私はこうなんだ、という意識になる。
 まったくもって珍しくありません。
 というか、ほとんどそうだと思います。自分と他者の違いを意識すると、自分のキャラクターが浮かび上がってくるので、考えるのも楽なんです。ぶっちゃけると考えなくともいい。他人がそう感じて言ってくれるので。
「明るいよね、人懐こいよね」
「すごく真面目だよね」
などという言葉の数々は、私たちが生きている間、いったいどれくらい他者から聞かされるのでしょう。
 つまり自主性があるかないか、能動的に掴めるものがあるか、という視点が必要になってくるのですが、そこでも問題が発生します。
 自分でやりたいこと、というのは別の話です。あくまでも自分のキャラクターとか、そういうものです。

 やんちゃで元気だと言われる牡羊座でも弱気で不安をたくさん持つ人はいます。
 華やかに自己主張ができると言われる獅子座でも、どこかおとなしく見える人はいます。
 西洋占星術でのサインは12しかないので、無理に12サインに落とし込む必要がある、と言われればそれまでです。

 さてそれで、詳細な相性などわかるのでしょうか?
 なんだか無理っぽくないか?と思いませんか?

 太陽星座の相性で考えれば、言わんとしているところはわかります。人生の目的地というか着地点、理想とするところが同じであれば、いきおい同じようなスタンスで人生を送る、と言ってもいいわけで、方法はともかく、相手の言っていることは基本的にわかります。しかし太陽星座は表向きの顔なので、取り繕うこともできるわけです。たとえば内面はぐちゃぐちゃなのに見栄えがいいとか。いってみれば太陽星座は意識のテンションみたいな感じでしょうか。とくに相手に合わせるのが上手なサインであれば、限りなく誤解を受ける表現になりますが、無難にやってのけます。
 その表向きの顔だけで付き合う間柄なら、相性としては悪くありません。
 しかし付き合いが深まってくると、そうも言っていられなくなります。一緒に仕事をするとか、たまに顔を合わせて話す、くらいの関係なら問題ありませんが、プライベートまで関与してくるとなると、まるっきり話は変わってきます。
 こんなはずじゃなかったとか、この人こんな面もあったのかと、距離が縮まるにつれ気付いていくことになります。

 ここで西洋占星術を使おうと思うなら、ご自身とお相手のネイタルが必要になります。
 ネイタルからは生まれ持った性質が読み取れますが、あえて相性だけにフォーカスするなら、とにかくお互いの月と土星をみましょう。

 月は感情、どう感じてどう思うのか。日常生活において、どのようなスタンスで過ごすのか。
 土星は人生の一番大切なところ、胆。責任。無意識のうちに苦手だと思っていること、転じて継続できる、努力できる分野、ひいては達成感を味わえる場所。

 たとえば誰かの月が双子座で、お相手の月が乙女座なら、スクエアの相性になります。
 双子座の月なら絶え間なく動いています。面白そうなものに目がなくて、気が付いたとたんに手にして「これはなに?どういうものなの?」と知りたがります。落ち着きがないと言えばそれまでですが、双子座の月はそれがいいんです。もし身体が動いていないなら知性が突っ走っています。いつでもなにかを考え、あちこちに興味の対象が移ります。これが月双子座の人にとっての落ち着きなので、まわりから忙しい人と言われても、なぜ忙しいと思われるのかがわかりません。つまり忙しない自覚がありません。とりあえずやってみます、というのは、双子座の得意分野です。
 一方の乙女座の月は、興味のあるものを分析します。冷静に見極める、という言葉を、驚くほどストレートに体現します。すごく時間がかかっていると思われても、頭のなかを整理して結論づけるまで、乙女座の月はデータを処理します。これがああだからこうで、だからそれはこうで……という思考を続けます。乙女座の月にとって、ああもうどうでもいいや、という結論になったのなら、さんざん考えたけど本当にもうどうでもいいわ、となっているに違いありません。

 さてこのふたり、月でみた相性は、いいと思いますか?

 実際のところスクエアなので、意見は合いません。とりあえずやってみる双子座の月と、やってみる前に思考する乙女座の間には、かなりの溝があります。月はプライベートや私的感情なので、一緒に暮らしたり長い時間一緒にいたりすると、ストレスは大きいんです。「やってみなきゃわかんないじゃん」と双子座が言っても、乙女座は「でもそれで損したらどうするの?」と言い返します。この意見の食い違いは平行線で、そのままであればどちらも折れずに座礁します。もし折れるとしたら合わせ上手の双子座かな。でも乙女座も、双子座の理屈に納得すれば、じゃあいいんじゃない、と言ってくれます。でもそこまでがお互いに長い。ぐだぐだと不満を抱える場合もあります。

 たとえば旅行の計画を立てるとします。情報を集めて要望を出す月双子座に対し、「めんどくさい」と思うか優しさなのか、それとも被害を受けない手筈を整えたいのか、とにかく月乙女座はダメ出しをする。ここで月双子座は改善案を出しますが、それも空中分解しかねない感じがして、月乙女座は慎重になるでしょう。
 ここで月双子座が「もう一緒に行かない、ひとりで行く」と言うか、それとも本当に一緒に行きたければ計画を見直しするか。それはふたりの関係性と旅行に対する成熟度によって違います。
 もし月乙女座が乗り気なら、もう誰が見ても完璧な旅行の計画を勝手に立てるので、双子座は受け入れます。というのも、イレギュラーな面白さを感じられれば月双子座は満足なのです。もちろん行きたい場所があるなら主張しますが、月乙女座はそれを叶えるために、数日かけて考え抜き、計画を見直すでしょう。もしかしたら「こっちも面白いと思うんだよね」というプラスアルファの要素を組み込み、さらに月双子座を喜ばせるかもしれません。

 ここで基本に立ち返って考えると、双子座も乙女座も支配星は水星です。
水星は言葉や知性です。どうにかして相手を説得したいと思うなら、それぞれがきちんと考えて言葉にできます。だからケンカをすれば泥沼になりかねない。
 そもそも、ふたりが問題視している本質さえ、もしかしたら周囲からは「なんであのふたりは、あんなに難しいことをこねくり回しているの?もっとざっくりやれば?」と思われているかもしれません。つまり双子座も乙女座も、興味があるから考えているのであって、自分に必要じゃなければ時間なんか割かないんです。誰かからの要望、もしくは他人とのバランスゲームを構築できて、意志を変える可能性があるのは天秤座から魚座までです。牡羊座から乙女座までは、基本的には自分のなかで頑張ります。つまり自分自身が納得しない、あるいは興味がないなら、ほとんど意に介しません。
すなわちこの場合、相手から発せられる、まるっきり違う意見を聞いているのはかなりのストレス。しかし、だからこそ違う視点で再考できる、というのは、このふたりの強みであり共通項です。

 だから『折り合いは難しいけれど、やっていくうちに相手がよく読める相性』と言えます。スクエアだから気に入らないし感触が相容れないかもしれないけれど、でも実際には面白いよ、というところですね。
 問題は、そこまで仲良くなれるか、という一点です。「考えが違いすぎて合わないわ」と、お互いに思い切りよく切り捨てる可能性は高いです。

 ここで太陽星座の出番です。
 たとえば月双子座の人が太陽牡羊座で、月乙女座の人が太陽獅子座なら、いつでも飛び出す月双子座太陽牡羊座を、月乙女座太陽獅子座は冷静に見ています。「あの人のやりたいことは、すごくよくわかる。でも心配だし見ていられない。けれどもできればこっちのフォローを期待しないで欲しい」と思うでしょう。一方の月双子座太陽牡羊座は「なんであんなに慎重なの?あっちがいいに決まっているのがわかっているのに、どうして動かないの?」というところに感情が着地します。
 しかし付き合いが深まるにつれ、月乙女座は「あの人またやってる。尻ぬぐいの方法は前に教えたからいいか、あとは頑張れ」みたいになるし、月双子座は「あの人なんだかんだ言って心配症なんだよね。でも大丈夫だってわかってくれたらいいや」みたいな感じになります。

 これが太陽星座の成せる業です。
 太陽星座は目的なので、方法ではありません。月は方法であり、目的ではありません。たとえばロサンゼルスに行こうとしたとき、じゃあどうやって行くの?という違いです。
 太陽牡羊座と太陽獅子座は火要素で「一緒にロサンゼルスに行くぞ!」「おー!」みたいな感じで、目的地そのものは合致しています。いきなりイタリアにしようとか言わない。やっぱり私はロンドンにするわ、とか言いません。しかしそこまでどうやって行くのか、飛行機か船旅か、みたいな違いがあるわけです。希望の航空会社が違うとかもあります。この差異が月星座です。
 もし太陽星座牡羊座に、太陽星座魚座なら、もう目的地そのものが違います。方向性は似ているんだけれども違うんです。たとえば牡羊座が「私はロサンゼルスに行く」と言っても、魚座は「そっかー。いいよねロサンゼルス。でも私はサンフランシスコにしようかな、あでも待って、どうしようかな、うーんやっぱりサンフランシスコにしようかな、迷うなあ」といった感じで、方向性は似ているのに目的地が違います。それでも月星座が同じなら「じゃあ途中まで一緒に飛行機で行こうか」という話になるかと思うのですが、ここで月星座が違うなら、また変わった話になります。

 これと似たようなことが人生のいたるところで発生します。
 
 さらに土星を加えます。
 繰り返しますが土星は責任、継続であり、達成です。無意識のうちに苦手意識をもつところでもあります。
 先の例で、月双子座と月乙女座の相性を解説しましたが、ここで土星を考えてみましょう。
 同学年ならネイタル土星は同じサインだと思います。ただしギリギリで違う場合があって、蟹座の数え30度と獅子座数え2度、みたいなネイタルである可能性もおおいにあります。数え度数と書いたのはサビアンシンボルを読み解くための私のクセなので、あまり気にしないでください。

 せっかくなので月双子座の人が土星蟹座、月乙女座の人の土星が獅子座にあると仮定しましょう。

 土星蟹座は人見知りであり、あまり自分自身をオープンにしません。しかし仲良くなった人に対してはすごく饒舌で、どこまでも優しく思いやりのある人物です。世間体が大切な場合もあり、一般常識的な視点を持ちますが、かといって他人に合わせる振り幅は少なめです。対人関係が得意かというと、月双子座太陽牡羊座の関係上、すごく活発明快な人だと思われるはずですが、内面はやや弱気で、本当にそれで良かったのかな、と長いこと悩んだりします。でも蟹座の最終度数のため、そんな自分じゃダメなのかなと思っている節があって、さらに獅子座にステップアップするための準備は万端なので、蟹座の良いところ悪いところをひっくるめ、すべて持っています。ちょっと獅子座の世界を覗けます、というスタンス。太陽牡羊座でもあるので、対人関係での蟹座的ストレスがすべて身につき、きちんと活かせるタイプです。
 一方の月乙女座の土星は獅子座なので、しかも初期度数グループなので、とにかく獅子座がストレートに出ます。月が乙女座なので気質は細かいのですが、獅子座の華やかさとか勢いの良さは、誰が見ても納得でしょう。この人の場合は太陽も獅子座なので、月乙女座の内面の儚さは、プライベートで交流のある人にしか見えないかもしれません。仕事では端的に細かな気配りもできるので、かなり有能です。それなのに生きるのは下手だなという自意識があり、なかなか本音は出せないか、あるいはある時期に吹っ切れて大胆になり、いきなり無敵感が出る感じです。
 つまりこの場合、月双子座の人にとって、月乙女座はちょっと苦手にもかかわらず、憧れの存在というか、どこか尊敬できる相手になります。月乙女座にとって月双子座は、ちょっと放っておけない感じで、頼られれば言うことを聞く相手です。とくにピンチになったら話が合うふたりです。

 さてこのふたり、相性は良いのでしょうか?

 私が考える限り、月双子座の人が月乙女座のサポートに回れば、うまくいきます。
 ただしお互いに自分が自分がと我を張り続けると、なかなか難しくなるでしょう。
 もし月乙女座がワガママになりすぎて、月双子座の優しさや思いやりに胡坐をかけば、かなり危うくなります。
 月双子座は一気に興味を失うので、そのあたりにも注意は必要です。

 こうやって考えれば、太陽星座だけで相性を割り出すことの恐ろしさというか難しさが、わかってもらえたかなと思います。だからこそ「牡羊座と獅子座は相性が良い」と言い切るのは、ちょっと待った方がいいのです。あまりにも刹那的で簡単すぎるからです。

 とにかく相性は月を見なければ話にならないと言い切っても間違いではないでしょう。ノリやテンポの同調性は、やはり同じサイン同志であれば実感できますし、セクスタイルあるいはトラインであれば、一緒にいて居心地の良い人だな、と思えます。長いこと一緒にいたいなら太陽星座と土星も加味して考えます。どちらも対人関係ではその性質が前面に出て、付き合うにつれ目立ってくるでしょう。
 また、どちらかの太陽に、もう一方の月がソフトアスペクトあるいはコンジャンクションの場合は、相性としてはかなり親和性が高いです。とくに土星は継続性なので、なんだかんだと長い付き合いになるのは、月と土星のコンディションに関与するところがおおいにあります。
 恋愛であれば金星と火星、それから水星も必要ですし、ビジネスパーソンなら水星と木星も必要です。もちろんトランスサタニアンも無視できませんが、トランスサタニアンに関してはふたりのネイタル二重円を出して、それぞれのパーソナル天体に対するアスペクトを読んでください。ただ同年代であれば、トランスサタニアンは移動に時間がかかるため、それぞれがネイタルに持っています。そのため決定的な結論を下すには、トランスサタニアンを採用するなら、年齢が離れている必要があります。ただしそれもネイタルチャートを出してみて、本当にサインが同じかどうかを確かめましょう。

  なお、とりわけ結婚相性につきましては、相性図において、150度つまりクインカンクスがあるとスパイスになります。必須というわけではありませんが、メジャーアスペクトを考慮してから、チェックしてみましょう。
 異質な噛み合わないものがあるからこそ、飽きずに向き合える相手に成り得ます。長いこと一緒にいるなら土星の働きは無視できませんが、鑑定をしていると、クインカンクスの存在が大きいと実感します。もっとも相手に興味を失えばクインカンクスなど意味を成しませんが、ふたりの役割分担やお互いの理解度の噛み合い具合において、実際のところの相性ではクインカンクスの役割は大きく、なかなか味わい深い相性を醸し出しています。なんというか、思わぬところで妙な折り合いがつく、みたいな感じです。ただし、お互いの天体が、相手のどの天体とクインカンクスをとるかで、またその相性は変わってきますので、細かくみてみましょう。
 
 そもそも相性は、その人のネイタルにおいて『その人がどこを重視しているか』でも変わってきます。楽しく面白おかしい関係性を望むなら月と金星、火星で見ると良いでしょう。ただし利害が発生するようなビジネスや結婚になると、月と太陽と木星と土星、それからできれば水星を考える必要があります。
 そして、さらにもし占星術をよく知るなら、その人にはどういうふうに立ち回ればいいのかがわかってきます。自分はさておき相手が読めるので、あの人は冷たい言い方をするけれど本心は違うとか、優しく見えても実はちょっと、みたいな感触がわかります。そして自分の受け止め方によってのストレスや面白さなども読めるので、一般的に安易に言われてしまいがちな『相性』ですが、それほど一刀両断に吉凶を出せない、と言えるでしょう。

 さて、蛇足になりますが、私が幼少の頃に呼んだ東洋占術の本のなかに、このような一節がありました。

『パートナーと同じ命式であれば、流年法により、好調期と不調気が同時に訪れる。もし命式が同じでなければ、お互いに好調期と不調期のタイミングがズレるため、ふたり揃ってどん底にはならず、どちらかが救う繰り返しになる』

 はっきりとした文言や書籍の題名は失念していますが、ざっくりまとめると、できれば好調不調の波を一緒に受けない方がいい。という話です。
これは幼少の私に大きな感銘をもたらしました。たしかにそうです。好調である方が不調を助ければいいのです。
 西洋占星術ではトランジット天体にネイタル太陽、または月がどうアスペクトをとってくるか、またはトランジット天体が入ってくるネイタルハウスで、その時期の好不調が出てきます。
 もし相性が良いという人がいても思い通りにならないなら、タイミングが合わないのかもしれません。
 とても合うはずなのに、なぜか一緒にいないふたり、というのは、このタイミングの問題が大きく、そもそも接点がなければ付き合いも始まりません。
 人の縁とはよく言ったものだな、と思います。

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