スランプだと思ったときの占星術

スランプは誰にでも訪れるものです。
どうやってもうまくいかないとか、なんとなく気分が乗らないなど、そのスランプの質もさまざま。
では占星術で、そのスランプの本質を読み、対応するのは可能でしょうか。
もちろんトランジット(経過)チャートを出せば可能です。プログレス(進行)チャートも影響はありますが、今回はトランジットをメインとして考えてみましょう。いろんな方法がありますが、代表的なものをいくつか挙げてみますね。
 
まずは、そのスランプがどこからくるのかを考えてみましょう。
そこでスランプというものは、そもそもなにか、というところから始めます。
たとえばスランプと言える状況を考えると、それほど状況が悪くなくとも、なんとなく調子が出ない、思ったように進まない、というところが代表的かなと思いますが、そうなると気の持ちようですよね、という感じでしょうか。
まわりからみれば順調だと思われても、本人が全然ダメだと感じてしまえば、それはスランプと言えるのではないかと思うのです。悪い状況になってしまった、というのは基本的にスランプではない、という考え方です。悪い状況というのは思い通りにならないというものと同義かもしれませんが、スランプとはニュアンスが違います。スランプは状況が良くとも、なんだか調子が出ずに停滞してしまうとか、落ち込んでしまうとか、そんな感じなのではないでしょうか。まわりの様子が思い通りにならないなら、それは運気が巡ってきていないだけの話です。
確認のために国語辞典などでスランプを調べてみると、一時的な落ち込みであるとか、心身状態が不振である、などという記述がみられます。
つまりスランプとは内面的な問題であると考えられるでしょう。
 
気分的なものならネイタルの月が関与している可能性があります。ただしこれがすべてでなく、他の要素が絡んでいることも多いのですが、とりあえずネイタル月の様相をトランジットチャートと合わせて読んでみましょう。
もともとのネイタル月がどのようなものかも考慮します。
 
たとえばネイタル月がネイタル火星と合していた場合、性急で攻撃的な性質を持っています。もちろんサインも考えます。この場合で仮に魚座で考えると、夢見がちな月が火星によって激しく燃えるので、無意識でフワフワとした月がハッキリと目的を持つことになります。いついかなるときでも積極的に夢のような日常や精神状態に振り戻されます。いくら現実的に頑張ったところで、実際の本音はボンヤリしていたいので、きちんとオンとオフをハッキリさせる必要があるわけです。この火星を自分のものにしないと、なかなか日常的に月の要素を自覚できないかもしれません。いつでもボンヤリすることに一生懸命になっていて、楽しいことや好ましいと思えるものに没入します。仕事で頑張ると決めたなら、たとえば会社勤めなどで頑張るには、この魚座火星のロマンチックで非日常的な要素を自覚し、積極的に受け入れる必要があります。もし水星の助けがあるなら芸術家やヒーラーなどで生きる道を見つける可能性が高まりますが、金星の趣味の世界で楽しむのも月を活性化させますので、ネイタル月が魚座で火星と合しているのなら、いつでもロマンを求める衝動がある、と読めるわけです。ちなみに衝動を具体的な形にして昇華させるには水星か、あるいは天王星が必要になるでしょう。
 
さて、このようなネイタル月がスランプに陥ったらどうなるか。
まず、スクエアやコンジャンクションで影響を与えているトランジット天体があるかどうかを調べます。オポジションなら対外的な影響として具体的に出てくるので、スランプという意味では少し弱めです。
合なら直接的に天体がネイタル月に手を入れてくるので、この天体の要素がスランプの要因になるでしょう。基本的には凶星、つまり火星・土星・天王星・海王星・冥王星であると、わかりやすくスランプの原因になり得ます。これが吉星、つまり金星、木星であるならスランプというか楽しいはずなのでスランプの原因にはなりません。ちなみにトランジットの月はスピードが速く、度数をどんどん変えていくので、スランプなどの根本的な不調の原因と考えるのは弱いことと、もともと吉星なので「ちょっと楽だな」みたいな感じになりやすいため、あまり考慮しません。
さらに凶星がスクエアであれば、どの方面からネイタル月にスランプの原因を投げ入れられているのかを探ることができます。
たとえば前述の魚座月にトランジット土星が射手座からスクエアをかけてくる場合で考えてみましょう。もともと夢見がちで気が移ろいやすいネイタル魚座月に関して、射手座は「もっと自由を」と叫びます。射手座は魚座から見れば10番目のサインであり、社会的なものを司ります。もっとしっかりしなきゃ、という要素があるわけですが、射手座の土星ですから、もっと他のなにかがあったんじゃないか、という問いかけをします。10ハウスは形にしたり結果を残したりする必要があるので、同じような感じです。いってみればたとえば、なんとなくもっと良い仕事があるような気がする、という、柔軟宮らしい気分になってくるわけです。土星ですから、現実的な問題がそっくりそのまま揺さぶりをかけてきます。もっとしっかりしたい、じゃあどうすればいいのだろう、という問いかけです。もし、いまの仕事や生活に満足できていても、もっとなにか違うものを見つけたい、という欲張りさが出てきます。土星は長期的な視野で絞る星でもあるので、それが射手座であれば日常に満足できず、なにかが違うんだけど、という気分を駆り立ててしまい、現実的な日常との格差によってスランプの原因になる可能性があるのです。
速度が遅い天体であるほど、それは深遠なスランプをネイタル月に提示します。天王星であればもっとエキセントリックな衝動として、突発的な行動に駆り立てるでしょう。海王星であればさらに自分らしく生きたいと願うだろうし(魚座のルーラーは海王星のため)、冥王星であれば日常や生活を根本から書き直そうとします。そして当然のことながら、その期間も長いのです。トランジット火星であれば早めにその位置から移動しますから、どちらかというと一過性の問題になります。
 
もうひとつ、生きる上での方針や方向性としてのスランプであれば、ネイタルのアングルに対するトランジット天体を読みます。
社会的なスランプであればMC、私生活であればIC、自分自身であればアセンダント、対人問題であればディセンダントです。ただしディセンダントが社会的な問題を意味することも往々にしてあるので、これは少しだけでも考慮に入れてください。ディセンダントには『社会的デビュー』という意味合いがあるためです。
ここでは吉星、凶星ともに読みます。というのもネイタルのアングルはそれぞれのスタート地点なので変化が起こりやすく、その変化をありがたいと思えないなら不本意であるため、まわりからは良い状況だと思えることでも、本人にとっては受け入れ難いスランプと認識する場合があるからです。たとえその変化が良きものであっても、本人にとっては面白くないのです。
これはネイタル月との違いです。月は受け入れる天体であり、その人のセンシティブな部分です。この部分に関与するなら、その人はスランプをストレートに受け止め、なんとかしようとするでしょう。しかしアングルは動き出す地点であるので、こちらから捕まえに行く状況になりやすいのです。つまり意図しないものであればあるほど「受け入れるなんかとんでもない」みたいな感じになります。もし吉星であるなら、ゆっくりでも「やっぱりそうしよう」という感じになる場合が多いのですが、問題は凶星です。とくに天王星は寝耳に水のようなハプニングとして現れますし、海王星であるなら原因が不明瞭な不安や不安定な問題として、長らく影響を与え続けます。これはそれぞれのアングルのサインやアスペクトを考慮に入れながら、トランジットの天体の意味を読みましょう。基本的にアングルカスプに対する天体の第一アスペクトは合、第二でスクエアです。ただ私が見てきた結果、当たり前なのかもしれませんが合の方が変化として現れますので、アングルに関しては基本的に合だけでもじゅうぶんだと思います。
 
ではなぜ吉星がスランプの原因になるのでしょうか。
たとえば木星であれば拡大であり期待であり最大の幸運星と言われます。しかしこれが曲者で、ボンヤリしてしまうのです。実は木星の厄介なところは、意識しないでいると流されたり、なにもしないで終わってしまったりという事例がありますが、これは木星の『なんとなく良いことがある』という象意とつながっています。『なんとなく』という意味は、意識しないとか、言語化できないというニュアンスです。木星は期待の星なので、アングルという個人の軸に関与すると、なんとなくボンヤリと運の良さを無意識でも過剰なまでに期待してしまう、ということにもなります。頑張らなくともツキを呼び寄せ、幸運を享受しやすくなる。この点が自分あるいは他者や社会に対する大げさな期待値となって現れると、こんなはずではなかった、という意識を浮かび上がらせてしまい、スランプと感じてしまうのです。もちろんアングルに木星が入ると、それは基本的にはそれぞれのハウスでの喜ばしい運気です。しかしそこでいきなり暴走する可能性があり、というのもアングルの手前のキャデントハウスの影響なのですが、さんざん揺り動かされ方向性を模索したあと、アングルの【始める】という動きに入るので、いきなり行動的になったり、見通しがクリアになったりして、一気に流れが変わるのです。そうなると止められるものがなくなり勢いがついてしまう。拡大の星である木星は背中を押し続け、もっともっとと急き立てることになるのです。ここで流れに乗れればしめたものです。しかし一方で、あまりにもキャデントからの振り幅が大きすぎると、感情や感覚がそれについていけません。自分への期待値、さらに周囲への期待値が大きくなりすぎてしまい、常に不満や不足を感じ続け、どうしてもスランプという認識に陥ってしまう場合があるのです。
つまり期待しすぎるために不調になる、ということです。
これは占星術を知らなくとも、なんとなくの期待として表面化することがあるので、「良い時期ですね」と言われても、実際のところ具体的にはあまりわからなかった、という場合もあります。木星ばかりか金星は穏やかに過ごせる、あまり問題のない時期、ちょっと楽しいよ、という感じなので、これに乗りすぎてしまうと自分や周囲への期待が大きくなりすぎてスランプになる、という仕組みです。
 
次に蛇足ですが、進行の月に関するスランプです。
これはネイタルの6ハウスと12ハウス、または3ハウスに在している場合に起こりやすくなります。
たとえばプログレス月が6ハウスの場合、それは個人としての完璧なまとめの時期です。1ハウスから行ってきた自我の形成を6ハウスで完成させ、来るべき7ハウスに向けて外界との折り合いを予感している期間ですが、ここでスランプに陥る可能性があります。ここでも自分への過度な欲求として現れてしまうのです。もっと私はできるはず、もっときちんと頑張れるはず。この思いひとつでスランプになります。もちろん6ハウスですので、いろんな調整や分析を実施しながらお勤めなり日常生活を送り、まわりとの調和を図る感じになるのですが、批判精神も高まります。納得できないことをそのままにしておけません。そうなると完璧を求めすぎてしまい、実力を発揮できぬまま小さくまとまりすぎることもあります。かなり苦しいと感じる場合も多いので、見逃せないポイントになるでしょう。
プログレス月が12ハウスの場合は、自我と外界とのすべてを飲み込んでひと区切りつける時期です。アセンダント、つまり次の1ハウスに向かっての準備期間です。この時期に前向きに頑張ろうという気分になれる人がいらっしゃるなら、かなりエネルギッシュです。むしろ、もうどうでもいいかな、とか、さんざんやってきたから疲れたな、という感覚に陥りやすいのです。つまり、なんとなくやる気が出ないな、という感じのスランプに陥りやすいでしょう。
また3ハウスのプログレス月であれば、かなり精神的に疲弊しやすいので、これだけでもちょっと調子は出ないかな、という形になりやすいです。
 
最後に、ネイタル天体に関する速度の速いトランジット天体が影響を及ぼす場合です。これは土星以遠のネイタル天体に対し、それより早い天体がハッキリと認識させます。普段はボンヤリと意識せずにある自分の問題に対し、早い天体がそれぞれの象意に添って意識を表層化、つまり釣り上げる、というイメージです。合であればきっちりと認識しやすいので重要です。またスクエアであれば邪魔された、という形で釣り上がってくるでしょう。混沌とした土星以遠のネイタル天体をハッキリと認識させるので、この場合は「苦手なものに向き合わなきゃ」という感じでスランプになったり、「面白くないな」という感じでスランプを自覚したりすることになります。
たとえばネイタル海王星に、それより速度の速い天体が合した場合、その合した天体に関する事例でスランプと感じることがあります。できれば火星から水星までです。太陽も考慮に入れます。太陽はスポットライトであるからです。ネイタル海王星にトランジット火星が合すれば、やる気が空回りしやすい。やりたい気分だけでどんどん話や夢ばかりが膨らんだあまりに、疲れを感じてスランプに陥る可能性があります。やりすぎる、という意味も海王星と火星では出てきます。海王星の混沌とした無意識の世界を火星という釣り針で陸地に上げたなら、それは勢いがつきすぎて疲弊します。トランジット金星であれば、さらに夢の世界を楽しむことになるので、現実的な問題が疎かになりやすく、遊んでしまってかえってやる気が出ません。トランジット水星なら無理にでも言語化しようとして、さらに混沌の世界を意識するため、かなりの労力を必要とするスランプを引き起こすでしょう。
同様にネイタル天王星に対しても同じことが言えます。合するのがトランジット火星であれば、基本的に天王星と火星は突発的な事故あるいはハプニングですので、衝動的な行動が多くなりすぎて疲弊します。トランジット金星なら、好きなように振る舞いたい意識と、本当にそれでいいのかという葛藤が起こりやすく、これでスランプを自覚します。まわりからの反応が芳しくなくて悩む、みたいな感じです。水星であれば衝動的な発言が増え、ひと言が多かったばかりに精神的な負担が大きくなります。天王星は常識をものともせず突っ走るので、どういうわけか周囲から浮いちゃった、という後悔の念をおぼえやすいでしょう。
ただしネイタル天体は、そもそもすべて個人にきちんと備わっているものです。だからこそきちんとネイタルを意識したり身に付いていたりするなら、スランプという形で目の前には現れません。スクエアでさえ悪い意味にはならず、かえって刺激を受けて元気になれた、という場合も多いのです。だからこそ土星以遠の天体に関してのスランプは、その土星以遠の天体の象意をきちんと把握しながら自分のものにしていれば、あまり問題ないでしょう。
 
 
ここでの例は以上になりますが、もっと細かく読むことも可能です。ただしざっくりと読むなら、このあたりで当てはまるものが多いでしょう。
スランプの原因が占星術でもわかってしまえば気が楽になると思います。このスランプは時間が必要かなとか、無理をしないでおこうかなとか、いろいろ対処法は出てくるとも思いますので、どうぞ読み取って対応してくださいね。

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