君はさや香の「からあげ4漫才」を見たか
はじめに
こんにちは、はせ氏と申します。
写真はモルカーに乗車する私です。
皆さんは去る12月19日夜に放送されたM-1グランプリ2021決勝戦をご覧になりましたでしょうか。
今年のエントリー総数は過去最高の6017組、その熾烈な戦いを勝ち進んだ10組が熱戦を繰り広げました。
その中で見事チャンピオンの座を掴んだのは錦鯉。個人的には自分と同じ苗字の長谷川さんが活躍してくれて嬉しい限りです。
今回の記事は決勝戦10組のうちの1枠、敗者復活枠を巡り行われた敗者復活戦で披露された、1つの漫才について書いていきます。
敗者復活戦
M-1グランプリの敗者復活戦は、決勝戦の同日昼14:55より生放送されました。
敗者といえど、過去最多のエントリー数の中で一度は準決勝まで勝ち進んだ16組は強者揃い。
まず過去に決勝戦進出経験のあるのが6組(見取り図、ハライチ、ニューヨーク、東京ホテイソン、からし蓮根、さや香)いる時点で今年の決勝戦進出者の層の厚さが伺えます。
またアインシュタイン、アルコ&ピースらテレビでもおなじみのコンビや、キングオブコント準優勝の男性ブランコ、The Wファイナリストのヨネダ2000など幅広い面々が決勝戦へ進むための最後の1枠を賭けて争いました。
ちなみに今回私はキュウとマユリカの2組を応援していました。
キュウは昨年のM-1敗者復活戦で初めて漫才を見て以来好きになりまして、アマプラには単独ライブの映像もあるのでアマプラ加入されてる方には是非見ていただきたい。オススメは第3回単独公演の「ビートルズ漫才」です。
マユリカは恥ずかしながら今年の3回戦ネタで初めて漫才を見たのですが、顔芸のインパクトとハイトーンツッコミ、そしてググって知った素性のキモさで一気にファンになりました。
大トリ さや香
各組が練り上げたネタを披露していき、そして敗者復活戦大トリの16組目に登場したのがさや香でした。
画像左からボケの新山さん、ツッコミの石井さんです。
私は正直さや香については詳しくなく、”2017年のM-1決勝戦、マヂカルラブリーの漫才で大荒れした会場の空気の犠牲になったコンビ”くらいの印象しかありませんでした。
今年の予選ではボケとツッコミを入れ替えて勝ち進んでいたため、敗者復活戦でも石井さんの”行き過ぎた善人”ボケに新山さんがツッコんでいく漫才かな~と勝手に思っていました。
そして敗者復活戦で実際に披露されたネタがこちらです。
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狂気です。
今まで勝ち上がってきたネタを捨てる狂気、芸人人生のかかった舞台で客を置き去りにしていく狂気、仮にも勝ち上がればすぐ決勝戦が控えているのに完全にこの舞台で燃え尽きようとしている狂気…
今回はこの狂ったネタの魅力について考察していきます。
からあげ4
掴みは新山さんの”石井さんが言った言葉と全く同じセリフをオウム返しで言う”というボケ。
この時点で「アレ、新山さんボケに戻したのか?」と一瞬困惑しますが、まだ「決勝に進出した時のためにネタを温存してるのかな」と自分で自分を納得させることができます。
しかし開始から1分、「からあげ、ひらがなで4やから!」辺りで明らかに会場に異質な空気が流れ始めます。
そしてそこからはひたすら「からあげ、4!」の連呼合戦。掴みのオウム返しとからあげ連呼との対比や、3分10秒あたりの「3減ったね」といった技巧的な部分もありますが、ネタの根幹にあるのはあくまで「からあげ4」という力技一本。狂っている。
会場にはネタ終わりまで笑いと困惑が入り混じった空気が漂い続け、ネタ終了後MCの陣内さんも「さや香は本当にこのネタで勝ち進む気はあるのか?」といったコメントを出していました。
私も最初に生放送でこれを見た際には困惑が強く、「さや香、勝負捨ててるのか?」と思いました。
しかし当日の放送が終わり、YouTubeに敗者復活戦と決勝戦の全ネタがupされてから自分が一番再生してしまうのは何故かさや香のからあげ4。
放送から1週間、敗者復活戦の記憶としてふと思い出してしまうほど強く印象に残り、私の心を掴んで離さないのはハライチのタイムオーバーでも、マユリカのへんてこしっこでも、キュウ清水さんの矯正器具を付けて濃くなりすぎてる人相でもなく「からあげ4」なのです。
濃くなりすぎている
なぜからあげ4漫才が心を掴むのか、理由はいくつか挙げられます。
○ルックスとスタイルが良く、普通の(いわゆる優等生的な)漫才のできるコンビが力技一本でいくギャップ
○歌ネタ王優勝者ならではの「か、ら、あ、げ、4!」のリズム感の良さ
○石井さんの身体能力を活かしたアクロバティックな面白さ
しかし最大の理由は、「2人が真剣であること」にあると考えます。
真剣であることの面白さ
お笑いのパターンの一つに、「特殊な状況の中で、登場人物が真剣に頑張るほど面白くなる」というパターンがあるかと思います。
今年のキングオブコント決勝戦で歴代最高得点を叩き出した空気階段の「火事」が良い例でしょうか。
「SMクラブで火事が起き、裸の男2人が取り残される」という特殊な状況下で、「真剣に避難・救助活動を行う消防士と警察官」という設定です。
さや香のネタにおいて特殊な状況は「芸人人生のかかった、スベることのできない舞台」であることです。
真剣なのは「石井さんのからあげを4文字にさせようとする新山さん」と「自分のからあげを4文字と認めさせたい石井さん」、そして「この狂ったネタで決勝戦に行く気でいるさや香」です。
2人のからあげ4にかける真剣さはネタ中の「4出たら勝ちや俺らの!」というセリフや、出番後のコメントで自信満々の顔をしている新山さん、全力を出しきり疲労困憊でまともに喋ることもできない石井さんからも伺えます。
この、ネタに対するスタンスさえもネタに組み込んでしまったところが「からあげ4漫才」の魅力ではないかと考えます。
おわりに
今回はさや香の「からあげ4漫才」について考察しました。
さや香のお二人にはこれからも狂ったネタを作り続けてもらいたい限りです。
ちなみに私が予選含めて今年のM-1で1番好きなネタはフースーヤの「お料理番組」です。
いや、さや香ちゃうんかい
最後までお読みいただきありがとうございました。
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