『リトル・フォレスト 夏・秋』

ウスターソースは作れるんだ。

主人公のいちこが、自然のなかで食べて生きていく淡々とした映画。
淡々としているけど、ひとつの食べ物のエピソードが集まる短編集のような映画なので、飽きずに見ていられるし、途中からでも見ることができる。
紹介される料理は素朴。食材をとるところから始まり、作っているときも一晩おいたりと時間をかけてつくる。
ファストフードや時短のような考え方は一切ない。

家から徒歩1分でスーパーがあることは当たり前ではないとわかっている。都会だからだと。
スーパーあってラッキーとは思っていた。
でも、スーパーに売っているウスターソースは買うことが当たり前ではないとは思わなかった。
この映画のなかにはウスターソースを手作りするシーンがある。
スーパーに食べ物が集まる以前に、どこかの誰かが屠畜し捕獲し、調理してここに並ぶ。たくさんの人に出会ってできた食べ物であることを忘れていた。

そう感謝すると同時に、ビジネス化した食べ物だけしか知らないことにむなしさを感じた。
販売が前提で育っていく野菜や家畜と、生きていくために育っていく野菜や家畜は、味が違うだろう。
じぶんの命になる食材だが、食材になる前はそれぞれに命がある。
野菜や鳥や魚の命を感じてやさしく調理し、いただくことで、じぶんの命に触ることができるのではないか、そう思った映画だった。

ゆうた「他人に殺させといて、それに文句つけるような人生にはなりたくないと思ったよ」
うろ覚えの言葉ですが、頭に残っています。

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