「ルーム」

誘拐された女の子が、
犯人のこどもを身ごもり産んで、
5歳になったときのお話。

小さな部屋しか知らないジャック。
「しか」ではなくて、
ジャックにはそこが「すべて」。

毎週、生活用品を持って、
暗証番号でへやに入るあの人も、
その間に洋服ダンスに籠ることも、
朝起きてシンクや鉢植えにおはようと言うことも、ジャックにとっては毎日のこと。

ある日、それが破られる。

死体として外へ出て、ママの教えに従って、トラックがゆっくりしたときに飛び降りる。

見つかる怖さ、
警察という大人の恐怖。
女性警察官が小さなジャックの声を拾い、とうとうママの居場所がわかる。

とうとう壊れたいびつな日常。

平穏を取り戻すことも難しい、
奪われた当たり前。

あのとき、グランマがそんなこと言わなければ。あのとき、誘拐されなければ。あのとき、両親が別れなければ。あのとき、あのとき、あのとき。

ママとジャックは戸惑い、苦しみ、
一度は死のうとするけれど、
ママとジャックは2人で支え合う。

そうして、またあのへやへ行き、
ジャックはお別れを言う。
さよならシンク、さよなら植木鉢。

5年間いた当たり前の闇に、
新しい世界へ進むために。

苦しみから逃れるのは辛い。
苦しみに向き合わないと、
ほんとうに進むことはできない。
理不尽な現実に、
1人では耐えられないけど、
2人でならがんばれる。

親子のきずなと愛のお話。

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