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◆◆悲しい場所にはしない◆◆

「もう一度、ムガルカフェをやりたい。」

その気持ちをカーンくんから直接聞くことが出来たから、あとは前を向いてどんどん進むのみ。・・・・の前に、まずやらなくてはならない、という想いに駆られてやったことがある。

それは、一つの看板を作ること。

作ったそれを、まだ火事の日のまま、片付けのメドの建っていない壊れてしまったムガルカフェのお店の前に置いてくること。

どんな想いでそんな事をしたかというと、火事の後、火災保険の会社さんによる状況確認作業などもあって、何度かムガルカフェの中に入ったりもしたのだけど、電気のついていないお店の内側から見える、焼け焦げた建物の前を通り過ぎる街の人達の顔が暗くなってしまっていたことがとても悲しかったから。

店内が暗くて静かだから、内側からは悲しそうな顔の表情まで良く見える。

火事のことなど知らずに偶然通りがかって「うわぁ、なにこれどうしたの?」と言いながら立ち止まる人もいれば、「嫌だわ、怖い。誰か、亡くなったのかしら」なんて隣に居合わせた人に話しかける人、「ここだよ、ニュースでやってた火事の場所」とか話している人もいる。積み上げられた、焼け焦げたものの山をマジマジと眺めながら無言でため息をつく人もいれば、敢えて視界に入らないようにしているのか、顔を思いっきり反対側に向けて足早に通り過ぎる人もいた。いずれにせよ、この状態を見て気持ちが晴々、安心する人はいないよなぁ。

ムガルカフェが染井銀座商店街のあの場所に出来て、だいたい2年半。

たったの2年半とはいえ、ムガルカフェには沢山の濃厚な思い出と、街の人たちの温かい笑顔が集まった。カーンさんの「こだわりのスパイスをインドに買いに行く旅」に同行したお客さんたちもいるし、ムガルカフェを通してより一層仲良くなった大切なお友達も少なくない。娘たちもまた、たくさんのお客さん達に可愛がっていただいた。そんなムガルカフェのあった場所が、「悲しさ」を発信する場所になってしまったら、とてもとても悲しい。

火事の前も後も、たくさんの人が行き交って生活をする場所にあるからこそ、この状態はあまりにもそれを目にした人たちの「暗い想像」や「辛い気持ち」を掻き立ててしまうんじゃないかな。

もしそうだとしたらムガルカフェのあった場所を、そんな場所にはしたくない。

恥ずかしながら世間知らずを突っ走って生きてきた能天気な私は、30半ばになっても世の中の道理っていうものを分かっているとは言えないかもしれないけれど、例えば暗い想像から始まる何の根拠もない噂話って、まるでウイルスのようにあっという間に広がったりするものだと思う。

しかもそういう噂話ほど、目の前の状況を乗り越えるのに必死な当事者の心や、疲れて辛くなっている状態の人の心にダイレクトに、無責任にグサッと刺さったりするものだと思う。根拠のない噂話なんて気にしなかったら良いと言ってしまえばそれまでなんだけど、そんなにしなやかで強い人ばかりじゃないだろう。

とにかく、カーンくんがムガルカフェのオーナーとして、これからについて何らかの意思を示したら、それが例えば「ムガルカフェを再建する」という方向を向いていなかったとしても、この街にお世話になったファミリーとして、火事の場所を目にした人の不安な気持ちが明日に向かってほんの少しでも前向きになるような「何か」を作らなくちゃ、という気持ちでいた。

だからカーンくんの口から「また、やりたい」と聞いてすぐ動いた。

カーンくんの「また、やりたい」が嬉しかった。

自宅にあった大きい木製のキャンバスに、アクリル絵の具を使って、ムガルカフェとAnkur(※1)のテーマカラーでもある大好きな青い色を乗せて、どんどん塗る。

そこに、沢山の小さな双葉の葉っぱを描き入れた。

そこに、こんなメッセージを書いた。

「近隣の皆様、仲間たち、友人たちへ。

大変ご心配をおかけしています。2020年1月14日、残念ながら火事に遭ってしまったこの場所が、今も変わらずムガルカフェを応援してくださる沢山の大切な人方々、お世話になった大家さん、ムガルカフェを受け入れてくださった大好きなこの街の「悲しい場所」になってしまわないように 私達にできることは、今ある命に感謝して、また新しい1日を築いてゆくこと、その姿を見守っていただく事だと思っています。

一生懸命生きていたら、こういう事もある。ドンマイです。

亡くなった方のご冥福を心よりお祈りいたします。

ムガルカフェのカーンファミリー」

本当はもう少し長い文章を考えていたのだけど、下書きなしで書き始めた字の大きさだとスペースが足りなくなって、最後の方をギュッと短く編集した。その時に「あっ、スペースが足りないじゃないの」という静かな焦りが発動して、上の、出来上がった瞬間の看板はよく見たら脱字がある。お恥ずかしい。

(カーンくんにも、出来上がった看板に一言書いてもらう)

(看板に書く前に練習してたカーンくん笑)

(出来た看板をお店に設置する)

(設置する前に脱字を修正したよ)

火事の後から始まる膨大な片付けや実務も、新しい場所探しも、まだまだ試練は山積みではありますが、ここからが再スタートまでの道のりのはじまり。実は、この看板を設置した後からすぐに色々な復興への動きが起きた。次は、もうちょっとテンポよくリアルタイムで綴っていけるように頑張ります。

余談だけど、字数が余り過ぎて看板に書ききれなかった文章。↓

「きっとまた笑顔が集まる場所を作ります。挫けそうな時は肩も貸していただきたい。悲しい日も笑顔の日も、まだまだ全てがこれからですが、再建までの日々を温かく見守っていただけますと幸いでございます」

肩を貸してねという想いは書けなかったけど、優しくて温かい仲間たちが同じ方向を向いて、いつでも寄り添ってくれているのを感じています。

続きます。

(※1)Ankur=アンクルは、カーンくんの妻である私が代表取締役として運営をしている株式会社で、ムガルカフェに登場する面白いグッズはほとんどAnkurの片隅で作っている。ムガルカフェにとってはまさにファミリー的な関係の会社)

【ムガルカフェにはlnstagramの(instagram://www.instagram.com/mughalcafe )と、Facebookの(@Mughal cafe)というアカウントがあってハイパーリンクを貼っていたけれど、ここ最近何故かうまくリンクしないので、URLだけ記しておきます。文章:ムガルカフェのカーンファミリーの妻。Instagram(instagram://www.instagram.com/ arigatooo38)。】

あと、復興の為のイベント出店のお知らせなどをする為に、ムガルカフェのLINE@はじめました😊→https://lin.ee/aQ5iExz


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ムガルカフェのカーンファミリー

最高に美味しいビリヤニと温かい笑顔が集まるムガルカフェをもう一度作ります。応援よろしくお願いいたします!

ありがとうございます!「スキ」パワーいただきました!
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東京都豊島区駒込の地域密着型のインド料理屋「ムガルカフェ」のオーナーです。2020年1月14日に発生した火災によりお店の営業ができなくなりました。名物のビリヤニをまた提供していけるまでの復興の過程をここに記録していきたいと思います。