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◆◆パパのチキンが食べたい!!◆◆

火事から数日後、頭から丸ごと布団をかぶって、家族とも一切のコミュニケーションを断って沈み込んだカーンくんの様子を見守っていた次の日。

夕方になってから、久しぶりにカーンくんが口を開いた。

「今から、友達がやってるインド料理屋に行こう。もしかしたら、そこで何か出来ることがあるかもしれないから。」

「インド料理屋さんをもう一度やりたいのか分からない」というようなニュアンスの言葉を呟いて以来、そこから先の気持ちや考えがカーンくんの方から出てくるのを見守っていた私にとっては、いまいちどこに照準を合わせてアイデアを組み立てたら良いのかがよく分からない。でも、カーンくんなりに模索しているらしいことだけは伝わってくるので、とにかく付いて行ってみることにした。

少し話が逸れるけれど、そういえばカーンくんとは不思議なご縁で夫婦になることになってもうすぐ12年になる。友達としてインドで出会った時から数えると、もう16年くらいの付き合いになる。

付き合ってきた年月は長くなってきたけれど、いつになってもうちの夫婦は阿吽の呼吸というわけではなく、何か起きた時の思考回路はお互いにとって斜め上の角度を向いていたりする。それが良いとも悪いとも思わないし、ただ「そういうカタチの夫婦」というだけなのだけど。

とにかくカーンくんとズレのない連携を取るのは私にとって簡単なことではない。恐らくそれは、カーンくんにとっても同じこと。

娘たちを連れ、駒込から電車を1回乗り替えて、十条駅にあるインド料理屋「MON CURRY」さんへ。聞くと、そこはカーンくんのインド料理屋オーナー仲間のマタールさんが営んでいるお店なのだけど、マタールさんも今回のムガルカフェの火災被害の事を知って、とても心配していてくれたらしい。

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(大変だったねぇ、おいで。と娘を抱き上げてくれるマタールさん。)

そこで、色んな話をシェアしながら、久しぶりに家族揃ってカレーを食べて、チャイを飲んだ。

マタールさんのお店は、野菜を使ったカレーがどれも美味しい。特に大根や豆が入ったカレーが絶品だな、なんて思いながらもぐもぐやっていたら、娘が呟いた。

「あみま、パパのチキンが食べたいなあ」

あみまは、ムガルカフェの自慢料理の一つ、タンドール窯で焼いた「マライティッカ」というクリーミーな釜焼きチキンが大好きなのだ。

それを聞いたカーンくんの、にっこりの大きさと言ったら。もともと大きい口が更に大きくなって、それはそれは嬉しそうな顔になった。

嬉しいよね。きっと今、一番嬉しい言葉だね。

娘のまっすぐな言葉に乗っかって、私も「うん、やっぱりムガルカフェのご飯が一番美味しいね。また食べたいなぁ。(※マタールさんのMON CURRYももちろんとても美味しい。周りには聞こえないように配慮したけれど、マタールさんのお店でそんなこと言ってごめんなさいね)」と伝えてみた。

するとカーンくんが立ち上がって、何やらシェフさんと話し始め、ついには楽しそうにキッチンへ入って行ってしまったかと思ったら、おもむろにチャイを作り始めた。

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(ムガルカフェでやってたのと同じ、全ての材料へのチェックに余念がない)

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チャイに使う茶葉やスパイスをクンクン、自分の自慢の味はこうやって作るとか、どんな工夫をしているとか、そんなことを各々が話しながら、シェフさんやマタールさんも、なんだか楽しそう。

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(みんなのカップに注いだから、ほんのちょっとずつになったけど、大切に飲んだ)

こうしてカーンさんが久しぶりに作ったチャイを、なんだか何年振りみたいな気持ちで啜りながら、もう一度、伝えた。

「やっぱり、カーンくんのチャイが一番美味しいよ。」

「ムガルカフェ、またやる?」

「うん。やりたいね。」

カーンくん、復活。

実はこの後から、長きに渡る物件さがしや被災後の事務作業にまつわる日々が本格的に始まり、その度にカーンくんは一喜一憂があるのだけど(そして物件探しの日々は今も続いているけれど)、もしかしたら彼と同じくらい、私にとってもこれからを頑張り抜くための「軸」の部分を見つけ直したような、とても大切な瞬間だった。

自分が、何を、やりたいか。

これがなくっちゃね。

自分の一番やりたい事が、大切な存在を最高の笑顔にする事と直結するなんて、本当に幸せなマッチングだわね。

それにしても、ムガルカフェを応援してくださるたくさんの優しくて温かい気持ちや動きと、カーンくん本人の気持ちの両方を、私自身もまた当事者として経験しながら見守ることの難しさを実感できたのも大きな発見だった。自分がいかにせっかちな性格なのかもよく分かった。待つって本当に難しい。

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(お誕生日にお友達のやしまかずこさんが作ってくださった、ムガルカフェ愛が炸裂した素晴らしい作品をしみじみ眺める)

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(お友達のしばたゆきさんが届けてくれた、でっかいでっかい応援クッキー)

カーンくんの口から「またムガルカフェをやりたい」と聞いたつぎの日に、ムガルカフェのカーンファミリーとして真っ先にやったこと。やらなくちゃ、と思ったことは。

続きます。

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【文章:ムガルカフェのカーンファミリー妻。(@arigatooo38)。】

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